短編小説「明るい光」（11）

短編小説「明るい光」（11）

やがて金正恩総書記は運転手を呼んで、ハン・ジュボンを家まで送るようにと言った。

ハン・ジュボンを乗せた車が見えなくなると総書記は随員たちに言った。

「先生は本当に良心的な老医学者です。生まれたばかりで父から見捨てられたが、育ててくれたこの国の恩を忘れず、人民のために生涯の全てを尽くそうと言うのですから、その思いはとても見上げたものです。ところがあなたたちはその熱い思いを受け入れず、年取ったからと、実務的な問題として取り扱おうとしたのですから、先生の心に影が差したのでしょう」

チャン・ジュンソンは自責の念に駆られていた。

「・・・」
「副保健相はハン・ジュボン先生があの娘の研究者の治療で失敗したから、先生が晩年にこれ以上、汚点を残さないようにするため、病院を辞めさせたようですが、それが自分の恩師に対する道義だと思っていますか」

総書記は副保健相だけでなく、そこに居合わせた人みなに厳しく言った。

「あなたたちは幹部です。幹部というその呼び名がどれほど尊いものなのかまだ知っていないようです。人民のその呼び名に報いるためには何よりも他人の心を見抜く明るい目を持つべきです。私たち幹部が人民の心の中を見抜く目が暗くなると、それだけ国の未来が遠くなるということを肝に銘じるべきです！ハン・ジュボン先生もこの国の人民の一人です。人民の中に暗い顔で暮らす人が一人もいないようにしようと言うのが労働党の意図です」

チャン・ジュンソンは熱い思いで身がそのままほてるようだった。

すべての成果の秘訣は幹部たちが大衆の中に深く入って生死を共にし、その人たちの悩み事をそのつど解決してあげる時にのみ、成し遂げられるという真理を改めて胸に刻み付けた。

「今日、私が一連の問題を指摘したのは、あなたたちだっていくらでも考え出せることです。ところがあなたたちの目には、なぜ、それが見えないのでしょう。それは、何事につけ、また、どんな方法を論じるにせよ、まず、人民が何を好み、何を望んでいるかを考えなかったからです。いつどこでも人民に対する観点を正しく持つべきです。いくら立派な建物を多く建てたとしても、人民の意思と要求が反映されない創造物は無用の長物も同じです」

周りの人たちは熱いものがこみ上げてきて、何も言えずに立っていた。

そういう人たちに優しい眼差しを送っていた総書記はこう言い続けた。

「トンイル通りに眼科病院がありますが、より近代的な眼科病院を保健医療施設が密集しているムンス地区に建てようというのが党の決心です。それだけに投資を惜しまず、エキシマ・レーザー治療機器も、ガラス体網膜手術機器と電気生理検査機器も設置しなければなりません。いくら高価な物でも世界的な先端設備は全て持ってきなさい。人民のためのことなのだから、何も惜しんではなりません。あれこれ考えないで必ず実行すべきです」

少し間をおいていた総書記は語調を強めて言った。

「みなが人民への滅私奉仕の精神で、世界に誇るだけある近代的な眼科総合病院をユニークなものに建てましょう」

（コンテンツ―本）