短編小説「明るい光」（4）

短編小説「明るい光」（4）

苦心の末、オペの運びとなったが、思わしくなかった。手術から2週間後、患者の病状はさらに革まった。

その時からチャン・ジュンソンはもとより、病院の医者の間で彼を敬遠する声が上がり出した。

「年には勝てぬ、ですね。その年で執刀するとは驚くばかりです。年功もあり、健康からしても、もう退官させる方が・・・」

その話を聞いたハン・ジュボンの苦悶は一層つのった。陰口を言われるのは別に気にしなかった。充分あり得ることだと理解した。しかし、チョ・スリムの目を治せなかったのは胸が張り裂ける思いだった。

国の山々を青い森に生い茂らせるために婚期を逸してまで研究に没頭し、目のために結婚まで諦めた娘！

彼女に光明を取り戻せなかった私が果たして貫禄ある眼科医なのか。

エキシマレーザー治療機器だけあれば今にも彼女の目を治すことができるのに！・・・

機器がないから、どこに頼むことも、訴えることもできない。

ハン・ジュボンは我知らず背筋が寒くなり、涙がわいてきた。

もう定年もずっと過ぎたから家で休んだ方がいいと皆に言われているが、残念でならなかった。しかもあれほど信じていたチャン・ジュンソンまで病院から手を放すことを望んでいるとは。

これまでのうのうと暮らすのは自分とは程遠いと思っていたのに、もう仕事ができない年になったのか？！恵まれた時代に生きて、時の流れに気付かずにいたのだ。歳月流れる水の如しだが、余りにも早過ぎる。仕事に追われて時の流れを忘れたあの時がこれからどんなに懐かしくなるだろうか！

空しい思いに駆られてテドン川の岸辺に出ると、ふと大学教師の時が思い起こされる。

副保健相のチャン・ジュンソンはハン・ジュボンが大学で教鞭をとっている時、寵愛を受ける教え子の一人だった。彼の論文を指導し、卒業前には学位を授かるようにまでしたのに。あのチャン・ジュンソンまで師の気持ちが分からず、病院の意見に同意したのだ。彼ももう仕方がないだろう・・・

ハン・ジュボンは思わずため息をもらした。

夜空には星が瞬いている。

（コンテンツ―本）