短編小説「黄金の稲穂は揺れる」（2）

短編小説「黄金の稲穂は揺れる」（2）

第2回

キム・ヨンテはその足を郡党委員会に向けた。郡党でも事情を知って被害復旧対策をとるだろう。一日も早く被害復旧について相談すべきだ。

郡党の責任者の部屋をノックしたが何の応答もなかった。部屋に入ると意外に多くの人が集まっていた。皆の顔色は暗く、徹夜をしたのか瞼がむくんでいた。

「あ、管理委員長が来ましたか」

郡党の責任者がヨンテを見て椅子を勧めた。どうして来たのかと聞きもしなかった。ヨンテがピョンヤンから来たのを全然知らないみたいに。それもそのはずだ。

「さあ、また話をつけましょう」

責任者が誰にでもなく言った。でも、立つ人はいなかった。部屋には沈黙が漂った。ヨンテは、この人、あの人の顔を覗いた。皆が頭を下げて憂鬱な顔つきだった。

我慢し切れなかったのか、責任者が沈黙を破ってヨンテに声をかけた。

「今まで被害復旧の相談をしていたんです。初歩的には倒れた公共施設を建て直し、住宅は修繕することにきめました」
「え？」

ヨンテは、我知らず立ち上がった。修繕とは、それはヨンテの考えとはほど遠かった。修繕だけなら、いつかはまた被害を受けるに違いない。

真っ暗な夜道を急いで歩きながらいろいろと考えたのだ。いくら考え、又、考えても結論はただひとつだった。家を建て直すことだ。

ヨンテは管理委員長になったときから村を一新しようと決心していた。自分も家の苦労をしたが、村人が毎年、古びた家を修繕しようとあくせくするのを見ると 胸が痛かった。どうしてでも家を建て直してやりたかった。それで村を回ってみてはこうも考え、ああも考え、自分で見取り図を描いては、機会を借りて木材とセメントを引き入れてきた。

暇ができたら住宅の工事に取り掛かろうと思っていた。郡でもカンミョン里の住宅問題を知っていた。それが修繕とは。修繕をするくらいなら夜道を歩いてまで来なかったはずだ。電話で問い合わせても良いのだ。

ヨンテは、むらむらと煮えたぎる興奮を抑え切れなかった。ヨンテが今でも口を開こうとすると郡党の責任者がそれを遮った。管理委員長の気持ちは承知の上で、どうして修繕をすべきかを一つ一つ説明し始めた。

私たちは自分のことだけを考えるより、国のことから心配すべきだ。今、国の経済の発展は少なからぬ難関にぶつかっている。

こんなときに新しい家を建てるからと国に手を差し延べるわけにはいかない。農民がめちゃくちゃになった一年の農作を作り直す考えはせずに、新居を建てると走り回るのは話にもならないことだ。

ヨンテは首を垂れた。

聞いてみるとそれもそうだった。そのときになってはじめてヨンテは村の被害状況の甚だしさに改めて気付いた。ヨンテは硬くなって座っていた。

（コンテンツ―本）