童話「気立ての優しい三番目」

童話「気立ての優しい三番目」

昔、ある村に物乞いでやっと暮らしを立てている三人の貧しい兄弟がいました。

ある日、三人はさるのこしかけや山人参のような大事な薬種を採ってきた人には家と田畑をあげるとの広告を見ました。
「ぼくたちもさるのこしかけや山人参を採って金持ちになろう」
「本当だ、僕はもう乞食がいやでたまらない」
「聞いただけでもわくわくするや」
みんなで医員のおじいさんのところへ行っては、さるのこしかけや山人参の絵を描いてくれとねだりました。
「こんなに珍しい薬種は深い山奥にしかないんだよ」

一番目は、大きな瓦屋を思い出し、2番目は絹の服を纏って贅沢をする夢を見ましたが、三番目はキビ団子でも腹いっぱい食べたいと思いました。
何日も山人参やさるのこしかけを探してさ迷った三人はある日、大きな木の幹の空洞の中で夜を明かしました。
「ちょっとちょっと、何の音だろう」
三番目は怪しい音に目を覚まして音のする方に行ってみました。

洞穴が現れ、その中を覗き込んだ三番目は歓声を上げました。
「見つけた」
すると、その声に起き上がった一番目と二番目はあたふたとかけてきました。
「やあ、本当だ、でも洞穴があまり細く深くてどう入るんだ」
「葛の蔓で籠を作ってくださいよ、僕がそれに乗って降りてみるから」

穴の底に降りて山人参やさるのこしかけを採った三番目は、それを籠に入れて上げました。
（こんな大事なものが俺の手に入ったんだな、これだけは僕のものだ）
（三番目がいたら俺の分が減るだろう、まあどうでもいいや）
一番目と二番目は争った挙句、薬種を分け合って逃げてしまいました。

「兄さん」 一人残った三番目は春から秋まで薬草をちぎって食べ、冬は蛇のように眠るなどして、穴の中で９年という歳月を過ごしました。
そのある日、三番目の前に大蛇が現れました。
「お前はどうして、人間の世界に出て行かないで、この洞窟の中にいるんだ」
三番目は悔しく涙ぐましいわけを話しました。
大蛇は三番目に、穴の外に出させるから、ひとつ、頼みを聞いてくれと言いました。
「チョンジュ山のふもとに住む娘の髪の毛を持ってきてくれないか、それを天国の王様に捧げればわしは竜になれるんだ」
その頼みを受け入れて娘の髪の毛を持っていってあげたら、大蛇は竜になって天に上り、瓢箪をひとつくれるのでした。
「これは普通の瓢箪ではなく、何でも願いを言うなら出てくる不思議な瓢箪なんだ」
帰る道で瓢箪に願いを言ったら、一軒の家と田畑、米と布、牛、馬まで出てきました。

三番目はチョンジュ山の娘と家庭を築き、幸せに暮らしながら瓢箪で貧しい人たちにも白米と絹、農具をふんだんにあげました。
ある日、ある乞食が三番目の家に飯を乞いにきました。
どこかで見た覚えがあるので、じっと見ると一番目でした。
「僕だよ、兄さんたちが洞穴の中に捨てていった三番目だよ」
すると一番目は涙で謝りました。
数日後には、財物と金をみな使いつぶして乞食になった二番目も連れてきました。
「財物に目が眩んで自分のことだけを考えた、全く面目がない」
「人が良心と義理を捨てたら死んだも同じだよ」

過ぎし日の過ちを悟った一番目と二番目は一生懸命働きました。
村人たちは義理があり、気立ての優しい三番目を村の自慢に思いました。

（コンテンツ―本）