昔話「サムドリと鶴」

昔話「サムドリと鶴」

ある山奥に猫の額ほどの畑もなくて毎日山で柴刈りをして辛うじて命をつなぐサムドリというやさしい子が母と一緒に暮らしていました。

ある日、サムドリが山に登り、太い木を伐っているのに後ろでふと、むせび泣く声が聞こえました。
びっくりして振り向くと大きな鶴が立っていました。
鶴は心配そうな声でサムドリに、私の家族を助けてくれ、この木の天辺にある巣に子たちがいる、くれぐれも木を切らないで、と哀願しました。
サムドリが見上げると、木の上の巣から鶴の子たちが見下ろしていました。
「私が悪かった。注意して木を見なかったよ。本当にすまん」
サムドリが場所を変えようと背負子を負うと鶴は涙を流し、どうお返ししたらよいかと言って、明日、日が昇る前に袋を持って木の下に来てくれと念を押しました。

その夜、寝床に入ったサムドリは鶴の言葉を思い起こし、お母さんに袋を作ってくれと頼み、山であったことを詳しく話しました。
お母さんはサムドリの話を聞いて端切れで袋を作ってやりました。
あくる日の早朝にサムドリが約束の場所に着くと鶴が待っていました。
鶴はサムドリを見ると喜び、早く自分の背中に乗るようにと言いました。

サムドリを背中に乗せて大きな翼を広げてしばらく飛んだ鶴は、ある山にそっと下りました。
「ここは人が近づけない宝の山だが、日が登ると焼け死ぬ所なのよ、早くこの黄金と宝石を思いっきり袋に入れて」
サムドリが袋に宝をいっぱい詰めると鶴は又背中に乗せて飛び立ちました。
森の中に着いたサムドリは鶴と別れ、袋を持って家に帰りました。
サムドリは宝物を市で売りました。
それで瓦屋で絹の服をまとい、美味しいものを食べながら幸せに暮らしました。
この噂を欲張りのキムという金持ちが聞きました。
キムは急いで服を着替えて山に登りました。
宝物を手に入れてもっと大きい金持ちになろうとの欲で、キムは肩で息をしながらサムドリが木を伐っていた場所へ行きました。
見上げると本当に木の上に鶴の巣がありました。
にやっと笑ったキムは斧で木の下を切り始めました。

驚いた鶴が急に下りて来て悲しい声でお願いだから木を切らないでくれと頼みました。
「木を切らなかったら俺を宝のあるところに連れてくれる？」
キムの言葉に鶴はため息をつき、宝のあるところに連れてやるから明日、日が昇る前に袋を持って来いと言いました。
有頂天になって家に帰ったキムは絹で大きな袋をいくつも作りました。
夜にまんじりともしなかったキムは、鶏の鳴き声もする前にあたふたと山に登り、木の下で叫びました。
「早く下りて来い、木を倒すぞ」
驚いて眠りから覚めた鶴が下りて来て無言のままキムを乗せて宝の山へ飛んで行きました。

あちこちできらめく宝を見たキムは宝を袋に入れようともせず、手のひらいっぱいに宝を掴み、あっちにうろうろ、こっちにうろうろしました。
「この山を丸ごと持ち帰ることは出来ないだろうか」
いつしか東の空が白んで来ました。
「早く宝を袋に入れて帰りましょう。遅れると日が登って焼け死にます」
鶴の言葉にはっとしたキムは袋の中に大きな宝を詰め始めました。
「もう日が登る、早く発ちましょう」
「もう少しだけ、少しだけ・・・」
「日が昇りますよ、早く行きましょう」
鶴は何度も催促し、宝に気を奪われた欲張りを残したまま独りで空に飛び立ちました。
鶴は力いっぱい飛びましたが、急に昇る熱い日に足に火傷をしました。あれから鶴の足は今のように赤くなったといいます。

宝に夢中になっていた欲張りのキムはあちこちへ駆け回り、「熱い」「熱い」と叫んで焼け死んでしまいました。
その後、気立ての優しいサムドリは村人たちと一生懸命働きながらお母さんと一緒に幸せに暮らしました。

（コンテンツ―本）