私も共和国公民だ

私も共和国公民だ

チュチェ108年（2019）8月14日、平壌駅は“2019年世界卓球連盟アジア障碍者卓球選手権大会”と“バンコク障害者公開卓球競技”の優勝者を迎える人達で賑わっていました。朝鮮障碍者スポーツ協会のチョン・ジュヒョン選手とキム・ヨンロク選手でした。

協会の人と父母兄弟、骨肉の情で労わってくれた人達に見送られて平壌駅を発った二人は、金メダルを持って帰ってきました。その金メダルは単に優勝の為に尽くした情熱と努力の所産だけではありませんでした。

チョン・ジュヒョンさんは子供の時から卓球が好きでした。有名な卓球選手になるのが夢でした。両親はもとより先生や友達も卓球に素質のあるチョンさんが夢を叶えるよう励ましました。チョンサンの卓球の技は目に見えて発展し羨望と期待の視線を集めました。ところが意外な事に強直性脊椎炎*1という難病がその将来に影を落としました。

チョン・ジュヒョンさん。

「診断を受けた時はとても苦しかったです。結局、卓球を諦め、生活の楽しさがなくなりました」

 

専門病院にチョンさんの名前が登録され検診と治療が定期的に行われました。多くの人がチョンさんが少しの不便も感じないよう骨肉の情で顧みました。しかしチョンさんの心の陰りは晴れませんでした。

チョン・ジュヒョンさん。

「幼い時は気付かなかったのですが、年取って公民になってからも国と社会の関心と保護の中で暮らすのが本当に辛かったです」

 

ところが或る日チョンさんを訪ねて来た人が居ました。障碍者スポーツ協会のユン・チョルというコーチでした。

朝鮮障害者スポーツ協会技術コーチ　ユン・チョルさん。

「チョンさんを訪ねることにしましたが私の提案に応じるかどうか心配でした。チョンさんの健康状態からして、再び卓球を始めるというのは容易ならぬことだったからです」

 

「君は卓球をやらなければならない。夢を諦めるのは一生を諦める事だ。君は夢を叶える事が出来る」、ユンさんの真心こもる提案はチョンさんの心を温めました。チョンさんは再びラケットを手にしました。

キム・ヨンロク選手が卓球と縁を結んだのには訳がありました。人一倍楽天的なキムさんでしたが腕が不自由になった時の精神的苦痛は言いようの無いものでした。テレビのスポーツ番組なら漏れ無く見ていたキムさんでしたが、テレビと縁を切り顔から笑みが消えてしまいました。数年前の或る日、親友の手に引かれて卓球場に行った事があります。キムさんの不幸に胸を痛めるその親友に医者や心理学者等が、「活動的なキムさんに似合うスポーツの趣味を持たせるのが良い」とアドバイスしたのです。

キム・ヨンロクさん。

「そのとき、体は不自由でも一度やってみようと思い卓球をするうちに楽しくなりました。それ以来、卓球場を頻繁に訪れました。友達に助けてもらい、多くのファンも親切に対してくれ技を一つ一つ教えてくれました」

 

卓球に愛着を抱くようになってからキムさんは楽しさを取り戻しました。いつも歌を口ずさみ楽天的な性格も甦りました。キム・ヨンロクさんのコーチのムン・ヒャンミさんです。キムさんとは数年前、地方の或る卓球競技場で知り合いになったといいます。

朝鮮障害者スポーツ協会卓球コーチ　ムン・ヒャンミさん。

「当時、一番印象深かったのは、キム選手の楽天的な姿でした。悲観を知らない人は成功できると思いました」

 

「あなたが生活の喜びを取り戻したのはもちろん良い事だ。しかしより大切なのは自分一人だけでなく皆を喜ばす事だ。これがこの国の公民の誇りだと思う」、コーチの話しはキムさんに衝撃を与えました。卓球で人生の喜びを取り戻し、自分の事で腐心していた両親や医者、友達を喜ばせたと満足していたキムさんでした。「有り難い人達の真心に比べれば私の考えは余りにも狭かった」、キムさんは発奮しました。こうなって地方の一障碍者が朝鮮障碍者スポーツ協会の卓球選手になったのです。

協会の人とコーチはチョンさんとキムさんの二人にとって、厳格な師でありながら優しい父母兄弟でもありました。その私心の無い真心を感じるほど二人は報いる一念に燃えました。「国際競技で金メダルを獲得する事、これが有り難い人達の真心と期待に報いる事ではないか」、こう決心はしたものの、それを実行するのは容易ならぬ事でした。

朝鮮障害者スポーツ協会卓球コーチ　ソン・ソルファさん。

「キム選手には時間が長引くほどラケットを縛り付けた紐が腕を圧迫する苦痛があり、チョン選手には技はあっても足の激痛のためボールの動きを捉えながらも意のままに動けないもどかしさがありました。でも、二人は訓練を止めずその日の目標は必ずやり遂げました」

 

激痛で試合に出場出来なかった時もあれば、タイムオーバーで運動感覚が鈍くなって失点を余儀無くされた時もありました。しかし二人は諦めませんでした。肉体的障碍を克服する方法を研究し自分流の技を磨いて行きました。その努力は遂に報われました。

昨年7月23日から27日まで中国台北*2で“2019年世界卓球連盟アジア障碍者卓球選手権大会”が行われました。団体戦TT6部類、TT7部類に出場したチョン・ジュヒョン選手とキム・ヨンロク選手は準々決勝で南朝鮮チームを、準決勝でタイ・チームを下し決勝進出を果たしました。

朝鮮障害者スポーツ協会卓球コーチ　ムン・ヒャンミさん。

「準決勝と決勝は7月27日に行われました。この日は戦勝デーですね。運命的な試合だと思うと前夜は眠ることもできませんでした」

 

チョン・ジュヒョンさん。

「その日の夜、私たちは故郷で戦勝デーを祝ったことを語り合いました。そして、明日、必ず勝って両親や村人、私たちを熱くいたわってくれたありがたい人たちに朗報を報せようと決意を固めたものです」

 

7月27日、チョン・ジュヒョン選手とキム・ヨンロク選手が競技場に出ました。二人とも自信たっぷりの面持ちでした。心を合わせ巧みな技と戦術で感動的なプレーを見せた二人は金の栄冠に輝きました。

次いで8月に行われた”2019年世界卓球連盟バンコク障碍者公開卓球競技”でも、二人は予選から相手チームを2対0のスコアで下し優勝しました。二人のプレーを見た審判委員会のメンバーも他の国の選手達も、賛辞を惜しみませんでした。

朝鮮の選手たちは高い技と精神力を見せた
新進の選手だが、粘り強さと忍耐力に優れている
このような選手を育てた朝鮮にぜひ行って見たい

キム・ヨンロクさん。

「表彰台に立つと、『私も異国に国歌を響かせ国旗を掲げた、堂々たる共和国公民だ』という思いでこみ上げる涙をどうすることもできませんでした」

 

チョン・ジュヒョンさん。

「暖かく見守り、育ててくれるところがあって優勝の壇上に立つことができました」

 

優勝して帰った二人は国歌叙勲に与りました。

今も二人は共和国の公民という誇りを胸に人生を輝かせています。

（フィーチャー）

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