一家も同じ

一家も同じ

朝鮮では誰もが他人の悲しみを自分のことと思い、慰めあうのが社会の風潮となっています。

ピョンヤンのモランボン区域*1ケソン高級中学校の教師であるチョン・ヒさんはある傷痍軍人の家族のため真心を尽くしています。チョンさんが傷痍軍人のシム・ソングクさんに知り合ったのは11年前のことでした。当時、新しく受け持ったクラスにシム・ナムヘという生徒がいましたが、その父でした。

チョン・ヒさんのお話です。

「シムさんの家を訪ねてみますと、父が目の不自由な傷痍軍人でした。シムさんの父が国のために尽くせなかったこと、果たせなかった夢、これを必ず息子に引き継がせたいと言われた時は、胸にジーンと来るものがありました。一生、教壇に立つ私の任務といいますか、それ自体がシムさんが父のように、危機一髪の瞬間に国のためにためらうことなく身を投じる人に育てることだし、また目の不自由な傷痍軍人が気を落とさず、国の息遣いを肌で感じながら運命を共にするよう手伝ってあげるのが私の本務だと思いました」

チョンさんはシムさんを父が望む通り立派に育てるため人知れぬ努力を傾けました。その甲斐あってシムさんは中学時代、才人、優等生、模範的な生徒として皆の羨望の的となりました。チョンさんは傷痍軍人の目を必ず治してやることを決心して、有能な医師を探し回り、必要な薬も手に入れるため腐心しました。そしてシムさんの父が放棄しないよう勇気付けてやりました。

シム・ソングクさんのお話です。

「革命的な詩集や新刊をもってきて読ませてもらったり、ストーリーも説明してあげたりしました。私が楽天的に生きるべきだといって励ましてくれました」

チョンさんは生徒たちを連れてよくシムさんの家を訪ねては、楽器も奏で、歌も歌ったりしてシムさんの父がいつも喜びの中、生きるよう誠意を尽くしました。休日は家族ぐるみで傷痍軍人一家と共に公園などに赴き、憩いの一時を過ごしたりしました。

シムさんの父がある程度視力を取り戻した時は喜びのあまり、家族の写真も撮ってやりました。シムさんが中学校を卒業し、父の願い通り、人民軍に入隊してから早や5年が経ちました。しかし、元の担任教師の真心に変わりはありません。

熱いその思いを胸に、シムさんは誰よりも軍服務に精を出し、自慢したいことがあれば誰より先に担任教師に知らせたりします。一方、傷痍軍人夫婦はご馳走があれば先ずチョンさんを呼んでいます。

傷痍軍人の家族にとってチョン・ヒさんは一家も同じです。

（今日の朝鮮）