金日成19940706

社会主義経済建設に新たな革命的転換をもたらすために

経済部門の責任幹部協議会での結語
1994年7月6日

金日成

昨年の党中央委員会第6期第21回総会では、新たな情勢と現実発展の要請に即して今後3年間を調整期とし、その期間に農業第一主義、軽工業第一主義、貿易第一主義の方針を貫徹し、人民経済の先行部門である石炭工業と電力工業、鉄道運輸を確固と優先させ、金属工業をひきつづき発展させる新たな革命的経済戦略をうちだしました。党のこの革命的経済戦略は、自立的民族経済の土台をさらに強化し、人民生活を画期的に向上させ、社会主義のより高い目標を達成するための極めて正当な経済建設方針です。

帝国主義者と反動派の反共和国策動と我が国にたいする圧殺・制裁策動を粉砕して、人民大衆中心の朝鮮式社会主義をさらに輝かし、社会主義の旗をひきつづき高くかかげて進むためには、党の革命的経済戦略を貫いて社会主義経済建設で新たな高揚を起こさなければなりません。そのためには経済活動で解決すべき問題が少なくありませんが、きょうは当面のいくつかの問題についてのみ述べることにします。

なによりもまず、電力問題を速やかに解決しなければなりません。

電力は、鉄道運輸とともに人民経済の先行部門です。電力生産を優先させて電力を十分に供給してこそ、人民経済各部門の生産を正常化することができるのです。電力さえ充足できれば、軽工業部門の工場はいうまでもなく、重工業部門の工場もすべてフル稼働させることができます。電力問題さえ解決すれば、現在の経済的土台をもってしても裕福な暮らしができます。

ところが、いまは電力を十分に生産できないため、工場、企業所の生産を正常化できないありさまです。電力不足で肥料の生産もセメントの生産も思うようにいっていません。それゆえ、経済活動で第一義的に解決すべきなのは電力問題です。

電力問題を早く解決するには、原油発電所を建設しなければなりません。

現状では、原子力発電所や水力発電所を建設して電力問題を速やかに解決するのは無理です。これから原子力発電所を建設するとなると期間が長くかかり、だからといって水力発電所をさらに建設するのも不可能なことです。現在進行中の水力発電所の建設も、資材不足で完工できずにいるのです。水力発電所は建設しても、雨が降らなければ円滑に操業できないので制約があります。石炭生産がとどこおっている現状にあって、石炭を燃料とする火力発電所をさらに建設するのも不可能です。こうした状況のもとで電力問題を速やかに解決する道は、原油発電所を建設するほかはありません。原油発電所は、建設するのも運営するのも容易です。問題は原油発電所の稼働に必要な原油を供給できるかということですが、それは輸入するなり、なんとかして供給する対策を講じることです。原油発電所用の原油の輸入に要する外貨は、それほどのものではありません。

20万kW能力の原油発電所を咸興と海州、沙里院に1か所ずつ建設すべきです。

咸興地区に20万kW能力の原油発電所を建設すれば、2.8ビナロン連合企業所と興南（フンナム）肥料連合企業所をはじめ、この地区の工場、企業所をフル稼働させることができるでしょう。今後、咸興地区には、新しい工場、企業所の建設を予定していないので、20万kW能力の原油発電所を建設すれば、電力問題は解決されるでしょう。

黄海南道では、営農用の電力消費量が多く、海州と甕津（オンジン）半島にある工場、企業所やクァイル郡の果物加工工場、それに、今後建設される各種加工工場への電力供給を予見しなければならないので、海州に20万kW能力の原油発電所を建設しなければなりません。

黄海北道にも黄海製鉄連合企業所をはじめ、大きな工場、企業所が多いので、沙里院に20万kW能力の原油発電所を建設しなければ電力不足を解消することができません。

咸鏡（ハムギョン）北道には、今後30万〜50万kW能力の原油発電所を建設する必要があります。羅津（ラジン）－先鋒（ソンボン）地区を自由経済貿易地帯にするのですから、そこにも原油発電所を建設するのが望ましいでしょう。

咸興と海州、沙里院にそれぞれ20万kW能力の原油発電所を建設するとして、まず咸興に建設すべきです。

原油発電所を建設するには、発電設備を国内で製作しなければなりません。

大安（テアン）重機連合企業所が原油発電設備の製作に自信をもって取り組めるように、連合企業所の技師長をはじめ、技術者たちを6月16日火力発電所へ見学に行かせました。大安重機連合企業所では、すでに5万kWの火力発電設備を製作した経験があるので、原油発電設備もつくれるはずです。原油発電所を建設するには、大安重機連合企業所が5万kWの原油発電設備を年に4基は製作しなければなりません。

原油発電設備の製作に必要な資材のうち、国内で生産できるものはすべて国産化し、それが不可能なものだけ輸入することにすべきです。最大限に外貨を節約して原油発電設備をつくるべきです。

12月火力発電所に設置した1号発電機を早く稼働させるべきです。そうすれば、新しくつくった発電設備の長短を正確に把握して、精密な原油発電設備をつくることができます。12月火力発電所に必要な資材を早急に提供して、今年の8月内に発電機を試運転してみるべきです。大安重機連合企業所は12月火力発電所を早く操業できるよう、積極的に援助することです。

電力問題を解決するには、現在の火力発電所をフル稼働させる対策を立てなければなりません。清川江（チョンチョンガン）火力発電所と6月16日火力発電所、清津（チョンジン）火力発電所はかなりの発電能力をもっていますが、石炭と重油を円滑に供給できないため、それほど生産できないありさまです。清川江火力発電所では、安州地区炭鉱連合企業所から選炭の不十分な褐炭をもらって使っており、それすら満足に供給してもらえないので、発電機をフル稼働できずにいます。関係部門の幹部はこういう実情を知っているなら、石炭を輸入してでも供給すべきなのですが、そうしていません。既存のいくつかの火力発電所だけ円滑に稼働させても、数十万kWの電力を増産することができます。これだけの電力を増産するだけでも、現在のような電力不足はきたさなかったでしょう。清川江火力発電所と6月16日火力発電所、清津火力発電所をフル稼働させる問題を政務院で十分に討議して解決すべきです。清川江火力発電所には外国から発熱量の高い優良炭を少し輸入して、発電機をフル稼働させるべきです。清川江火力発電所には、十分に選炭した国内炭と輸入する高カロリー炭を半々にして使わせるのがよいでしょう。6月16日火力発電所も原油を輸入してフル稼働させ、清津火力発電所もフル稼働させなければなりません。

金剛山（クムガンサン）発電所と金野江（クムヤガン）発電所、泰川（テチョン）発電所、寧遠（ニョンウォン）発電所など現在建設中の水力発電所を早く完成させるべきです。

次に、化学工業に力をそそいで化学肥料とビナロンの生産を正常化すべきです。

化学肥料を十分に生産して農村に供給してこそ、党の農業第一主義の方針を貫徹して食糧問題を解決することができます。

いま肥料が不足して、営農に少なからぬ支障を与えています。昨年の秋から、今年の営農に必要な化学肥料を国内で生産する一方、輸入もするよう強調しましたが、満足に実行されていません。これでは、営農実績が上がるはずはありません。今回、地方視察のおりに見ると、今年の作柄は昨年に比べて劣っています。延白（ヨンペク）平野の作柄はよいとのことです。黄海南道の穀物生産をもりたてるため、延安（ヨンアン）郡と白川（ペチョン）郡、青丹（チョンダン）郡に関係部門の幹部を派遣して営農の指導にあたらせ、トラクターや肥料をはじめ、農業機械や営農資材を提供して自力で農作を営めるようにしましたが、いまその地区の作柄は良好だといいます。しかし、他の郡の作柄はそうでありません。少なからぬ協同農場で化学肥料がなくて稲とトウモロコシの穂肥をほどこせない状態だとのことですが、それでは穂がよく出なかったり、よく実らなくなったりします。化学肥料がなければ混合糞尿土をつくってでも穂肥をほどこさなければなりません。我々は、なんとしても営農実績を上げて人民の食糧問題を解決しなければならず、そのためには、化学肥料を大量に生産しなければなりません。

化学肥料を増産するには、興南肥料連合企業所と南興青年化学連合企業所の設備補修に万全を期してフル稼働させなければなりません。

興南肥料連合企業所と南興青年化学連合企業所では毎年、設備補修のため長期間操業を中断していますが、そういうことでは、肥料生産の増大をはかることはできません。化学工業担当の副総理は、これまで肥料工場の設備補修の任務を何回も受けながら満足に実行しませんでしたが、今回は確実に実行しなければなりません。

興南肥料連合企業所の設備補修を今年の下半期内に終え、来年からは無条件、毎年85万トンを生産すべきです。肥料工場の設備は、すべてステンレスで補修し、10年ぐらいはもつようにすべきです。興南肥料連合企業所では、ステンレス管がなくて普通の鉄管で設備を補修するので、毎年補修工事をしていますが、鉄管は一年使うと腐食してすぐ使えなくなります。肥料工場の設備補修に必要なステンレスは、国産化できるものは国産化し、輸入しなければならないものは外貨をかけてでも輸入すべきです。興南肥料連合企業所の設備補修に必要なステンレスは、金属工業部門で合金元素を輸入して生産することにし、それに要する外貨は自力で稼いでまかなうべきです。

ビナロン生産を早急に正常化すべきです。そうすれば、党の軽工業第一主義の方針を貫徹することができます。軽工業第一主義の方針を貫徹することは党の決定です。党の決定は誰もたがえることができず、無条件実行しなければなりません。

いまビナロン生産が円滑にいかないので、織物をはじめ、軽工業製品を多く生産できない状態です。布地が足りないので、今年は昨年の新入生にだけ制服を着せ、在学生には支給できないものと思っていたのですが、軽工業部門で6月末までに全国の園児と学生・生徒に制服の支給ができたというのはたいへん結構なことです。

ビナロン工場を早くフル稼働させて大量に生産すべきです。2.8ビナロン連合企業所の設備をフル稼働させて能力どおり生産すべきです。2.8ビナロン連合企業所に必要な電力を無条件供給しなければなりません。2.8ビナロン連合企業所の設備を、どう整備、補修するかは、その部門の幹部が協議して対策を立てるべきです。順川（スンチョン）ビナロン連合企業所の生産正常化をはかる対策も綿密に立てなければなりません。

次に、セメント生産を正常化すべきです。

セメントの生産を正常化して大量生産すれば、外貨の獲得はもちろん、建設も順調に進めることができます。

現在、我が国のセメント生産能力は非常に拡充されています。各セメント工場の生産を正常化して能力どおり生産するなら、内需を充足させてもなお、年に約600万トンは輸出できます。セメントを要望する国はたくさんあります。600万トンのセメントを輸出すれば、1トン当たり30ドルとしても、1億8000万ドルを獲得することができます。マルカ300以上のセメントは1トン当たり50ドルだというのですから、品質を高めて600万トン輸出すれば3億ドルも獲得できます。

政務院が調整期のあいだに、1トン当たり50ドルで輸出できるように、セメントの品質向上に努めるといっていますが、そうすべきです。セメントの品質を高めるには高カロリー炭が必要だとのことですが、輸入してでも品質の向上をはかるべきです。

セメントを能力どおり生産するとしても、すぐには600万トン全量を輸出するのは無理でしょう。セメントは、水力発電所の建設をはじめ用途が多岐にわたります。祥原（サンウォン）セメント連合企業所で生産されるセメントは重要な建設対象に振り向けなければならないので、輸出できません。各道所轄のセメント工場で生産されるものは品質が劣って輸出できないので、地方の建設対象に利用させるべきです。年間のセメント輸出量は600万トンが無理なら、500万トンくらいでも十分です。マルカ300以上のものを生産すれば、 年に500万トン輸出するとしても約2億5000万ドルは獲得できます。建材工業部はなんとしてもセメントを生産して輸出し、年間2億5000万ドルの外貨を獲得しなければなりません。

今朝、慈江（チャガン）道党の責任書記に電話で8月2日セメント工場の操業状況を聞いたのですが、5月から現在まで順調に操業しているとのことでした。それで、その工場で生産されるセメントは、将子江（チャンジャガン）の水力発電所建設と住宅建設に利用するよう指示しました。セメントの生産が正常化されれば、現在進行中の水力発電所の建設から先にすませるべきです。

セメントは年間100万トンくらい備蓄しておく必要があります。そうすれば、緊急の重要建設が提起されても適時に提供することができます。

政務院は綿密な対策を講じて、来年からセメント工場をフル稼働させ、能力どおり生産できるようにすべきです。セメント生産には、電力と石灰石、石炭さえ円滑に供給すればよいので、これといった難問はありません。今後、電力生産が増大すれば、セメント工場に十分に供給すべきです。セメント工場に石灰石を供給するには、運搬用のトラックと燃料油が必要です。いまは石灰石を採掘しておきながら、トラックと燃料油が不足して輸送できないありさまです。石灰石の運搬には、「自主（チャジュ）64」トラックが向いています。勝利（スンリ）自動車総合工場で石灰石運搬用の「自主64」を生産することにすべきです。

次に、金属工業を発展させ、鋼材生産を伸ばすべきです。そうせずには、人民経済を一歩も前進させることができません。鋼材は人民経済のどの部門でも必要とします。

鉄道運輸の問題も鋼材を十分に供給せずには解決されません。鋼材があってこそレールはもちろん、機関車も貨車も生産されるのです。6月4日車両総合企業所の貨車生産能力は5000両ですが、これはたいへんな数量です。毎年5000両の貨車を生産すれば、鉄道運輸のネックをスムーズに解消できるだけでなく、外貨もかなり獲得することができます。

鋼材生産を伸ばせば建設も手広く進めることができます。いまは鋼材不足で進行中の建設も完工できないありさまです。今後、建設対象は増える一方ですから、多くの鋼材が必要になります。羅津－先鋒自由経済貿易地帯に投資していろいろな対象を建設したいという希望者がかなりいます。こうした状況下で、鋼材を大量に生産すれば少なからぬ外貨を得ることができます。

船舶工業を発展させて船の建造と修理をするためにも、採掘工業を発展させるためにも鋼材が必要です。いま石炭を大量に生産できないのも、炭鉱への鋼材の供給が不十分であることと関連しています。

鋼材の生産を伸ばすには、現在の金属工場をフル稼働させなければなりません。金策（キムチェク）製鉄連合企業所と城津（ソンジン）製鋼連合企業所、チョンリマ製鋼連合企業所、黄海製鉄連合企業所が鋼材を能力どおり生産すれば、人民経済各部門に十分に供給しても、輸出することができます。金属工業部門では今年、他の建設をせず、現在の金属工場をフル稼働させて生産の正常化に力をそそぐべきです。

金属工場をフル稼働させるには、コークス用炭の問題を解決しなければなりません。コークス用炭は特定の国にだけ依存することなく、複数の国から輸入すべきです。鋼材の生産に必要なコークス用炭の輸入は、ロシアからでもオーストラリアからでもかまわないでしょう。これに要する外貨は、金属工業部門で生産される鋼材を輸出すれば充当できるはずです。金属工業部門では、鋼材を輸出して得た外貨でコークス用炭を輸入して金属工場を操業させるべきです。鋼材をどれくらい増産して輸出するかは、さらに検討してみるべきです。

黄海製鉄連合企業所の平炉を酸素転炉に切り替えるというなら、そうすべきです。

10月9日鋼鉄総合工場の建設がはかどっていませんが、この工場の建設も進めるべきです。造船用の鋼板や大型ボイラーの生産に必要な鋼材の問題を解決するためにも、この工場を建設しなければなりません。

黄海製鉄連合企業所の平炉を酸素転炉に切り替える工事と10月9日鋼鉄総合工場の建設工事は年内はさしひかえるのがよいでしょう。今年は現在の金属工場の生産正常化に力を入れなければならないので、新しい建設対象は時機を見ておこなうべきです。

次に船舶工業を発展させ、大型貨物船を多数建造すべきです。

我が国は3面が海に囲まれているので、大型貨物船が多くなくては貿易を発展させることができません。特に、東南アジア諸国をはじめ、アジア諸国との貿易を発展させるには多くの大型貨物船が必要です。東南アジアとその周辺だけでも、ベトナム、ラオス、カンボジア、タイ、シンガポール、ミャンマー、マレーシア、インドネシア、フィリピン、インド、パキスタン、バングラデシュなど、我が国と貿易できる国は10か国以上あります。社会主義市場が消失した状況下で、これからは、これらの国との貿易を積極化すべきです。軽工業製品を大量に生産して東南アジア諸国をはじめ、各国に輸出し、それらの国から我が国に必要な原料、資材を輸入すべきです。東南アジア諸国とその周辺諸国に輸出する製品と輸入する原料、資材は、我が国の船で輸送すべきです。運送費が高いので、外国船をチャーターして軽工業製品を輸送しては利益がいくらにもならず、かえって欠損を出しかねません。大型貨物船がたくさんあれば、外国の貨物を運送しても営利をはかることができます。

大型貨物船を多く建造すれば、それを外国に売って外貨を獲得することもできます。幹部のなかには、労働力を輸出して外貨を獲得しょうと考えている人がいますが、それは好ましいことではありません。それは、立ち後れた国のすることです。我が国は社会主義工業国なのですから、労働力ではなく各種の工業製品を大量に輸出することを考えるべきです。

船舶工業部門で貨物船を多く建造して売れば外貨が獲得できるだけでなく、船舶工業をさらに発展させることができます。経済的発展を遂げている国々も、最初は小さい製品から手がけて資本を蓄え、原料、資材を仕入れて、生産を拡大し、徐々に生産手段を現代的なものにかえました。そういう国は、商取引が上手で経済を発展させたといえます。ところが、我が国の人たちは商取引が不得手です。商取引で外国に出かけることが少ないので、世界の商業界の内情に通じていません。貿易関係者を外国に送って視野を広げさせ、商業界の内情にも通じるようにする必要があります。船舶工業部門で貨物船を建造して売れば、造船に必要なエンジンや艤装品を仕入れてより多くの船をつくって隻数を増やし、外貨を多く獲得することもできます。

船舶工業部の仕事ぶりがかんばしくありません。船舶工業部を発足させて長くなりますが、その間、船舶工業は別段発展していません。私が船舶工業部に大型貨物船を100隻建造する課題を与えて幾年も経ちましたが、いまだに遂行されていません。船舶工業部の幹部には、自力更生して船を建造しようという熱意が欠けています。自分の力と技術、内部の潜在力を動員して船を建造しようとせず、他国の助力をあてにして積極的に取り組んでいません。船舶工業部門では、大型貨物船の建造に積極的に取り組み、数年内に100隻に到達するようにしなければなりません。

大型貨物船を多数建造できる能力はそなわっています。南浦（ナムポ）造船所連合企業所と元山造船所、咸北（ハムプク）造船所連合企業所、金策船舶工場など造船基地はたくさんあります。

大型船舶の建造で肝心なのはエンジンですが、それは外国企業と合作して解決すべきです。必要な艤装品は別段問題にならないでしょう。国産化できるものを除いて、大型貨物船1隻分の艤装品の購入に必要な外貨を算出してみるべきです。政務院は、大型貨物船の建造で提起される問題を具体的に見積もって適切な案を作成すべきです。

今後、我が国との経済合作を望む国があれば、どの国とでも推進する考えです。もちろん、我々は外国との経済合作をせずとも自活していけますが、それをするとしても損することはありません。

最近カーターが訪朝したとき、かれに、アメリカは我が国の「核問題」を国連に持ち込んで我が国に制裁を加えると言っているが、我々は制裁を恐れはしない、我々はこれまで制裁を受けつづけてきたのであって、制裁を受けなかったことは一度もない、アメリカの制裁も受け日本の制裁も受け、他の国の制裁も受けた、いままで制裁を加えられながらも無事だったのに、いまさらまた制裁を受けるからといって生きていけないはずはない、と話しました。するとかれは、北朝鮮にたいするアメリカの制裁措置を取り消すよう自分が建議すると言いました。それで私は、いいようにせよと言いました。カーターは、その夜のうちに本国と電話で連絡をとったようです。翌日の朝、かれは私に会うと、アメリカが加えようとしていた制裁措置を取り消すようにしたと話しました。それで私は、制裁措置を取り消すということには感謝する、しかし我々は、アメリカがそれを取り消しても取り消さなくてもかまわない、我々がアメリカに反対するのはあなたたちのせいであって、我々のせいではない、あなたたちが我々を信頼しないから、我々もあなたたちを信頼しないのだ、あなたたちは我が国をいじめてばかりいるが、いくら圧力をかけても、いびっても、我々は十分自活していける、と話しました。

今回カーターは、アメリカが朝鮮に制裁を加えないようにする、朝鮮に軽水炉を提供するようにする、第3ラウンドの朝米会談を開くようにする、ということを私に約束しました。結局、アメリカは私が提起した問題をすべてのんだことになります。アメリカがこの約束をどう履行するかは今後の成り行きを見なければわかりませんが、第3ラウンドの朝米会談は開かれることになりました。この会談のため、外交部第1副部長を団長とする我が方の代表団をジュネーブに派遣しました。

金泳三が私に会いに今月25日に平壌に来ます。かれは「大統領」の座におさまって「就任演説」をしたとき、私が漢拏山（ハンナサン）で会おうといえば漢拏山へ行くし、白頭山（ペクトゥサン）で会おうといえば白頭山へ行くと言いました。その後、アメリカが「核問題」で圧力の度を強めると、金泳三は、核兵器を持つ相手とは握手できないといって背を向けました。ところが今回カーターは、私に会ったとき、金泳三が金日成主席に会いたいという意向を表明したことを告げ、会ってやれないだろうかと言うのでした。それで私は、金泳三と会わないと言ったことはない、「特別査察」に応じなければかれが私と会わないと言うから、会おうとしないのだ、核兵器を出さなければ握手もしないという人と会う必要はない、だが、かれが前言を取り消して来るというなら会う、と話しました。こうして、平壌での北南最高位級会談の開催が決まったのです。金泳三の平壌訪問と関連していま南朝鮮では、白旗をかかげて行くことになるだの、金泳三が平壌へ行けば、金日成主席に吸収されてしまうだのと騒いでいるそうです。かれが平壌に来るときの随行員は180名で、そのうち記者が80名だといいます。南側の実務メンバーと北南最高位級会談にかんする実務的問題を討議するとき、南側から記者を80名同行させるという問題が提起されたという報告があったので、私は当該幹部に電話で、記者は800名でもよい、平壌に来て自由に取材できるようにせよと指示しました。南朝鮮の大勢の記者が来るというのは、平壌を見ようということです。かれらがいくら大勢で見てまわっても、欠点は見つかりません。南朝鮮の記者に平壌を見せるのはよいことであって、悪いことはなに一つありません。平壌を訪問する外国人は誰もが、ソウルより平壌の方がすばらしいと言っています。カーターも、平壌はソウルよりずっとすばらしい、平壌ほど清潔で美しい都市はないと言っていました。

社会主義経済建設に転換をもたらすには、幹部の責任感と役割を高めなければなりません。

経済部門の幹部が、自己の本分を深く自覚し、経済活動における懸案を解決するため献身し、知恵と精力をそそいで取り組むなら、不可能なことはありません。経済活動がスムーズにいくかどうかは、もっぱら幹部の取り組み方にかかっています。

幹部は、党と領袖への忠実性を口にするだけでなく、自己の職分を責任をもって果たし、自力更生、刻苦奮闘の革命精神で突破口を開き、難問解決の先頭に立たなければなりません。

いま一部の経済部門の幹部は、仕事について深く研究せず、創意を発揮していません。農業部門の責任幹部は、頭を働かさず、人民のなかに入って学ぼうとしないので、すぐれた潅水方法があるのも知らずに、現実性のない気球式潅水方法を導入しようとしました。この前、錦繍山（クムスサン）議事堂の管理員たちがＹ型の棒杭を利用して潅水をすれば気球は必要ないというので、現場へ行ってみたのですが、いとも簡単なものでした。この潅水は、畑の所々にＹ型の棒杭を立て、その上にビニール管を渡して水をやる方法です。これは、我が国のどこにもある木と塩化ビニール管を利用してたやすくできる潅水方法です。ところが、農業部門の責任幹部はそれも知らず、気球式の潅水方法がいちばんであるかのように考えて協同農場に押しつけました。気球式潅水をするとなると、気球と水素発生機をつくらなければならないので、資材と手間がかなりかかります。協同農場ごとに水素発生機を設置して気球式の潅水をするというのは容易なことではありません。反対に、Ｙ型棒杭による潅水は簡単に導入できるので、すぐ一般化することができます。

農業部門の責任幹部は、私がこの潅水の導入現場を視察したあとになって、寺洞（サドン）区域将泉（チャンチョン）協同農場でその方式講習をしました。農業部門の幹部が、農場員のなかに入ってかれらの意見を聞き取り、現実的可能性も具体的に検討していたなら、むずかしい気球式潅水方法の導入を押しつけはしなかったはずです。

私がいつも言っていることですが、幹部は、人民を教師とし、人民大衆から学ばなければなりません。この世に人民大衆より強力で知恵ある存在はありません。人民大衆から学び、人民大衆を正しく導いていくなら、いかなる苦難も克服することができます。革命家は、人民を信頼し、人民に依拠すれば百戦百勝するが、人民を信頼せず人民から見放されれば百戦百敗するということを座右の銘としなければなりません。

幹部は、人民大衆を信頼し、その知恵と力に依拠するのみでなく、人民大衆に献身的に奉仕しなければなりません。人民大衆のためにすべてをつくすのは最も誉れあることであり、革命家にとってこのうえない幸福であり、光栄なのです。

私は、いままで人民を信頼し、人民のためにたたかい、人民のなかで生きてきました。私の一生は、祖国と民族のためにつくしてきた一生であり、人民とともにたたかってきた一生でした。私は、今後も常に人民とともにあるでしょう。

人民のなかに入り、人民に奉仕すること、これがほかならぬチュチェ思想の要求です。チュチェ思想を具現するというのは人民のなかに入るということであり、人民のなかに入るというのは、すなわちチュチェ思想を具現するということです。幹部は、チュチェ思想の要求どおり、常に人民のなかに深く入ってかれらと苦楽をともにし、人民の利益をはかるため積極的に努力しなければなりません。

我々はチュチェ思想の旗を高くかかげ、社会主義の完全な勝利と祖国の統一を達成し、チュチェの革命偉業をあくまで完成しなければなりません。チュチェ思想は、朝鮮人民が代を継いで高くかかげて進むべき革命と建設の指導思想です。

私は、経済部門の幹部が、きょう示した方向にそって仕事の手配りを綿密にし、経済活動での難問を早急に解決し、社会主義経済建設に新たな転換をもたらすよう期待します。

出典：『金日成著作集』44巻

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