我が国における社会主義農村問題に関するテーゼ
朝鮮労働党中央委員会第4期第8回総会で採択
1964年2月25日
金日成
マルクス・レーニン主義の創始者たちは、農民問題、農業問題に大きな意義を与え、この問題の解決に深い関心を払った。特に、レーニンは、農民問題を革命の基本的な戦略問題として提起し、農村問題を社会主義・共産主義建設の最も重要な構成部分とみなした。レーニンは、農民問題の正しい解決と労農同盟の強化が、革命勝利の決定的な裏付けであると教え、社会主義革命の段階における農村問題解決の明確な方途と農村における社会主義建設の道を示した。
農村問題は、かつて帝国主義と植民地主義の支配下にあったか、あるいは、いまなおその支配下にある諸国において、特に、重要な意義を有する。これらの国々において、農民問題、農業問題を成功裏に解決するか否かは、革命の勝敗と社会の進歩を左右する根本的問題となっている。
都市と農村における社会主義革命の勝利は、農民問題、農業問題の解決にとって歴史的な転換点となる。
社会主義革命が勝利した後にも、農村問題は社会主義・共産主義建設で極めて重要な位置をしめる。
農民は労働者階級の信頼すべき同盟者であり、社会主義建設の強力な力量である。労働者階級の指導のもとに、たえず労農同盟を強化してこそ、社会主義・共産主義建設を力強くおし進めることができる。
農業は工業とともに人民経済の２大部門の一つであり、それは住民に食糧を保障し、軽工業に原料を供給する。工業を発達させ、たえずその指導的役割を高めると同時に、農業を工業の発達に追いつかせてこそ、人民経済全般の急速な発展を期待することができ、人民生活の系統的な向上をはかることができる。
農民問題、農業問題は、都市と農村との差、労働者階級と農民との階級的差をなくしてのみ、最終的に解決される。
農村問題を最終的に解決し、農民を共産主義社会にまで導いていくのは、共産主義者と労働者階級の崇高な任務である。
マルクス・レーニン主義党は、社会主義制度が確立したのち、ひきつづき革命をおし進め、最後までそれをなし遂げるために、すべての勤労人民の利益を徹底して擁護するために、農村問題の解決に力を集中すべきである。
１ 社会主義のもとにおける農村問題解決の基本原則
農村問題は革命発展の各段階において、それぞれ異なった形で提起される。
反帝反封建民主主義革命の段階における農民問題と農業問題は、農村における封建的土地所有関係を一掃して農民を地主の搾取と従属から解放し、農業生産力を封建的生産関係の束縛から解放することにあった。我々は、地主の土地を無償で没収し、無償で農民に分与する原則で土地改革を徹底的に遂行することによって、この問題を成功裏に解決した。
社会主義革命の段階における農民問題と農業問題は、農村において資本主義的要素を一掃し、個人農経営を社会主義的集団経営に改造することによって、農民をあらゆる形の搾取と抑圧から永久に解放し、私的所有に基づく古い生産関係の束縛から農業生産力を完全に解放することにあった。我々は、実物教育と自発性の原則に基づいて、また党と国家の強力な指導と援助に依拠して農業の社会主義的協同化を実現し、この問題を立派に解決した。
社会主義農業経営制度は、個人農経営や資本主義農業経営制度に比べて決定的な優位性をもっている。それは、農業生産力発展の大路を開き、農民の物質・文化生活を急速に向上させる可能性を与える。
問題は、社会主義制度のもとで、農村活動をどのように進め、農業をどのように発展させるかにある。
社会主義制度が都市と農村で勝利した後には、農村問題はそれ以前とは根本的に異なった形で提起される。
社会主義のもとにおける農民問題と農業問題は、農村に樹立された社会主義制度をたえず強化し、それに基づいて農業生産力を高度に発展させ、農民の生活を豊かにし、搾取社会が残した農村の後進性を一掃し、都市と農村との差をしだいになくすことにある。
社会主義農業経営制度を強化し発展させながら、しだいに都市と農村との差をなくすのは、社会主義を建設し、共産主義への移行を準備するうえで最も基本的な問題の一つである。これは、長期にわたるたゆみない闘争と努力によってのみ完全に解決される、複雑かつ困難な課題である。
我が国でこの課題は、既に社会主義的改造の完成とともに提起された。我々の農村活動は、当然この課題を解決する方向で進められなければならない。
社会主義のもとにおける農民問題と農業問題を成功裏に解決するためには、必ず農村活動において３つの基本原則を堅持しなければならない。
第１に、農村で技術革命と文化革命、思想革命を徹底して遂行すべきであり、
第２に、農民に対する労働者階級の指導、農業に対する工業の援助、農村に対する都市の支援を全面的に強めるべきであり、
第３に、農業の指導と管理をたえず工業の先進的な企業管理の水準に接近させ、全人民的所有と協同的所有の結びつきを強め、協同的所有をたえず全人民的所有に接近させるべきである。
１ 農村における技術革命、文化革命、思想革命
社会主義を全面的に建設し、共産主義への漸次的移行を準備するためには、革命を継続しなければならない。
搾取階級が一掃され、社会主義的改造が完成した後にも、都市と農村との差が残り、労働者階級と農民の階級的差が残っていること自体が、革命をつづけなければならず、特に、農村で革命をいっそう徹底的に遂行しなければならないことを物語っている。社会主義的協同化が実現したからといって革命を中断するならば、民主主義革命と社会主義革命をつうじて高まった農民の熱意をひきつづき堅持することはできず、それをさらに高めることもできない。農村において革命をつづけなければ、社会主義農業経営制度を強化し発展させることはできず、その優位性を発揮させることも、都市と農村との差をなくすこともできない。
技術革命、文化革命、思想革命──これは、社会主義的協同化が完成した後、農村で遂行すべき中心的な革命課題である。
都市に対する農村の後進性は、まず農業の物質的・技術的土台が工業より弱く、農村住民の文化水準が都市の住民より低く、農民の思想・意識が労働者より立ち後れているところにあらわれている。もちろん、このような立ち後れは旧社会の遺物であり、それが社会主義のもとでひきつづき残るのは、工業および都市の発展水準とも大きな関連がある。まさにこうした後進性のため、全人民的所有が支配する工業とは異なり、農業では協同的所有が支配的な形態として残るようになり、したがってまた、労働者階級と農民との階級的差が残ることになる。
それゆえ、社会主義農業経営制度を強化し発展させ、都市と農村の差をなくし、労働者階級と農民との階級的差をなくすためには、社会主義的工業と都市の急速な発達に基づいて、何よりもまず農村で技術革命、文化革命、思想革命の３つの革命を遂行し、この３つの分野で農村の後進性を克服しなければならない。
農村における技術・文化・思想革命の課題は、互いに密接に結びついており、それらは統一的な過程として遂行されなければならない。
なかでも思想革命は、すベての活動に優先させるべき最も重要かつ困難な革命課題である。技術革命と文化革命のみにかたより、思想革命をおろそかにするのは重大な誤りである。
社会主義のもとでも階級闘争はつづけられる。社会主義農村における階級闘争は、外部から侵入する敵対分子とくつがえされた搾取階級の残存分子の破壊策動に反対する闘争としてあらわれ、また、農民の意識にくすぶっている古い思想の残りかすに反対する思想闘争としてあらわれる。農民の階級的自覚を高め、かれらのあいだで思想闘争を強めることなしには、農村の社会主義制度を強化することも、この制度を敵の侵害から守りとおすこともできない。
社会主義の優位性、社会主義の生命力は、何よりもまずこの制度のもとでは搾取と抑圧から解放された勤労者が、共同の目的と利益のためにかたく団結し、同志的に緊密に協力し、自覚的に熱意を発揮して働くところにある。農民の思想・意識水準を高めることなしには、農村で社会主義のこの本質的な優位性を発揮させることができず、したがって農業生産と技術、農村文化を速やかに発展させることもできない。
社会主義制度が樹立され、生活が向上するからといって、農民の思想・意識がおのずと改造されるものではない。もちろん、社会主義制度の勝利は、古い思想を生む経済的基礎を一掃し、新しい思想で農民を武装させることのできる社会的・物質的条件をつくりだす。しかし、社会主義のもとでも農民の意識には古い思想の残りかす、特に、小所有者的根性が長いあいだ残るものであり、思想活動が弱まると、それが再び頭をもたげたり、さらに助長されるおそれがある。ただ長期間にわたる忍耐強い教育と不断の闘争をつうじてのみ、農民の思想・意識を完全に改造することができる。
思想革命が最も重要だということは、決して技術革命と文化革命をおろそかにしてもよいということを意味するものではない。
社会主義・共産主義は、生産力の高度の発展水準を要求し、勤労者の高い文化水準を要求する。社会主義・共産主義を建設するのは、結局、全人民の幸せな生活を保障し、たえず増大するかれらの物質的・文化的需要をより完全にみたすためである。
農村で技術革命と文化革命を遂行しなければ、農業生産力を発展させることはできず、農民の物質的・文化生活を向上させることも、かれらを骨の折れる労働から解放することもできない。農業の物質的・技術的土台を強化し、農民の文化水準を高めることは、かれらの思想・意識を改造するうえでも重要な条件となる。思想革命の重要性のみを強調し、技術革命と文化革命をおろそかにするのも、やはり誤りである。
我々は、思想革命を確固と優先させつつ、それと並行して技術革命と文化革命を強力におし進めなければならない。こうして、農民の思想を改造し、農業の物質的・技術的土台も強化し、農村住民の文化水準も高めなければならない。
２ 農民に対する労働者階級の指導、農業に対する工業の援助、農村に対する都市の支援
労働者階級の党および国家の指導と援助は、農村における社会主義制度の発生と強化発展にとって欠くことのできない条件である。農民は、ただ労働者階級の指導と援助のもとでのみ、社会主義の道に進み、ひいては共産主義へ移行することができる。
労働者と農民は、同じ目的と理想のために力を合わせてたたかう同盟者であり、いずれも社会主義的勤労者である。全人民的所有と協同的所有は、互いに密接なつながりをもって発展する社会主義的所有の２つの形態であり、ひとしく社会主義国家の経済的基礎をなしている。社会主義国家は労働者、事務員の生活だけでなく農民の生活に対しても責任を負い、全人民的所有の発展ばかりでなく協同的所有の発展に対しても責任を負う。個人農経営のときには、主に個々の農民が、各自の経営と生活に対して責任を負ったが、協同化された後には、党と国家が責任をもって協同農場の発展と農民の生活を援助すべきである。
工業は人民経済の指導的部門であり、都市は政治、経済、文化のあらゆる面で農村より進んでいる。指導的部門である工業が農業を援助してこそ、農業を工業と同じく現代技術で装備することができ、先進的な都市が農村を支援してこそ、立ち後れた農村を都市の水準に引き上げることができる。
それゆえ、社会主義的協同化が完成した後、農村の技術革命、文化革命、思想革命を強くおし進め、都市と農村との差をしだいになくしていくためには、農村に対する党および国家の指導と援助を全面的に強め、都市が農村を積極的に支援しなければならない。
もちろん、我が国のように、かつて立ち後れた農業国であった国では、革命が勝利した後、社会主義的工業化のためにしばらくは農村からある程度の資金を引き出さざるをえない。こうした社会主義国で、近代的工業を創設するために農民が資金を支出するのは、社会全体の利益のためであり、農業の将来の発展と農民の生活向上のためにも欠くことのできないことである。
しかし、いったん社会主義工業の基礎をきずきあげた後は、工業が農業を支援することに方向を変えなければならない。そのときからは、あらゆる分野にわたって、より強力に農村を支援しなければならない。
労働者階級は政治的、思想的に農民を指導するばかりでなく、物質的、技術的、文化的、財政的にも農民に援助を与えなければならない。社会主義国家は、農民の負担を軽減し、収入を増加させるために全面的に努力し、労働者と農民の生活水準を均等に高めなければならない。
もし、農村活動をおろそかにして農村を援助せず、甚だしくは農業を犠牲にして工業のみを発展させ、農村を犠牲にして都市のみを建設するならば、都市と農村との差はなくならないばかりか、ますます大きくなるであろう。これでは農民の積極性を発揮させることはできず、農業を発展させることも、農民の生活を向上させることもできない。結局これは、工業そのものと人民経済全体の発展に支障をきたし、社会主義・共産主義の建設に大きな損失をもたらすことになるであろう。
農村を軽視する思想はブルジョア思想である。資本主義のもとでは、都市が農村を搾取し、農村が都市に比べて立ち後れるのが法則となっている。
共産主義者は、農村を軽視する思想を決定的に排し、権力を握ったその日から、資本主義が残した農村の後進性をなくすためにたたかう。社会主義のもとでは、都市が農村を援助し、おくれた農村があらゆる分野で都市の水準にますます接近していくのが合法則的である。
我々は、労働者階級の力を強化し、工業と都市をいっそう発達させながら、たえず農民に対する労働者階級の指導、農業に対する工業の援助、農村に対する都市の支援を強めて、都市と農村との差を一歩一歩縮めていかなければならない。こうしてのみ、農民の積極性をひきつづき発揮させ、農業を急速に発展させ、農民の生活を向上させることができる。これは結局、工業そのものと人民経済全体の発展をさらに促進し、社会主義・共産主義の建設を早めることになるであろう。
3 農業に対する指導と管理、全人民的所有と協同的所有との連係
社会主義のもとで、農村は都市に比べて技術、文化、思想の分野でおくれているばかりでなく、またそのために、所有関係の面でも経済管理の水準でも立ち後れている。所有関係での工業と農業との差は、労働者階級と農民の階級的差を規定する本質的な差である。経済管理水準における工業と農業との差もまた重要な差である。
したがって、都市と農村との差、労働者階級と農民との階級的差をなくすためには、技術・文化・思想分野における農村の後進性を克服すると同時に、所有関係と経済管理水準における農村の後進性をなくさなければならない。こうしてこそ、都市に対する農村のあらゆる後進性を克服することができ、このような後進性にともなう都市と農村との差をすべてなくし、労働者階級と農民との階級的差もなくすことができる。
経済管理水準と所有関係における工業と農業の差をなくすためには、農村で技術革命、文化革命、思想革命を力強くおし進め、農村に対する都市の支援を全面的に強め、それに基づいて農業の指導と管理を改善すべきであり、協同的所有をしだいに全人民的所有の水準に引き上げなければならない。他方、農業に対する指導と管理を改善し、協同的所有を発展させて全人民的所有と協同的所有の正しい相互関係を保障することは、農村での技術・文化・思想革命を促し、農村に対する都市の支援を効果的に実現し、社会主義農村建設の全般的な問題を成功裏に解決する重要な条件となる。
社会主義農業に対する指導と管理を改善する基本方向は、農業協同経営の管理運営方法をたえず工業の先進的な企業管理方法に接近させることである。
農業協同経営は大規模の社会主義的経営であり、それは現代技術で急速に装備されている。農業の経営規模が大きくなり、その技術装備がしだいに工業の水準に接近していくのであるから、農業に対する指導と管理の方法も、当然、工業の企業管理の方法にいっそう接近させなければならない。このことは、何よりも農業協同経営を、必ず企業的方法で指導し管理しなければならないことを示している。
企業的方法で管理するというのは、生産に対する技術指導を強め、企業所のあらゆる経営活動を計画化、組織化することを意味する。農業は工業に比べて技術装備が貧弱であるだけでなく、技術指導ではさらにおくれている。個人農経営の協同化とともに、農業の管理運営も計画化、組織化されたが、この面でも工業に比べてはるかにおくれている。
技術指導を強化し、あらゆる経営活動をよりいっそう計画化、組織化すること──まさに、これが農業協同経営の管理運営を改善する基本的な方向であり、経済管理のうえでの工業に対する農業の立ち後れを取り除く基本的な方向である。
企業的方法による農業協同経営の指導と管理は、農村の技術革命を促し、農業管理における散漫性と非組織性をなくし、土地、農業機械、その他の生産手段と労働力を合理的に利用できるようにし、農業における生産文化の向上を可能にする。これは、農業生産の増大と協同経営の強化、農民の生活向上に強力な作用を及ぼす。
協同的所有の発展に関する問題、そしてまた、全人民的所有（工業）と協同的所有（農業）の相互関係に関する問題は、社会主義農村建設と社会主義建設全般における基本問題の一つである。これは農民の社会経済的地位、労働者階級と農民の相互関係に直接関連をもつ原則的な問題である。
農業において支配的な協同経営制度は、社会主義のもとにおける生産力の性格と水準に適応し、農民の意識の発展程度に適するものである。農業協同経営制度は、大きな優位性を発揮しながら生産力の発展を力強く促す。社会主義的農業を急速に発展させるためには、協同経営制度の潜在力と可能性を最大限に引き出し利用しなければならない。
しかしこれは、決して社会主義のもとにおいて、農業協同経営制度が固定不変のものとして残るということを意味するものではない。協同的所有も発展し変化する。農業の物質的・技術的土台が強化され、農民の文化水準と思想・意識水準が高まるに従って、協同的所有を発展させ、いっそう完成させなければならない。
これとともに、全人民的所有と協同的所有との相互関係、工業と農業との連係に関する問題を正しく解決しなければならない。ここで最も重要なのは、工業と農業のあいだの直接的な生産的連係を強め、協同的所有に対する全人民的所有の指導的役割をたえず高める方向で、2つの所有を有機的に結びつけることである。
そのためには、農業に直接奉仕する国営企業所、すなわち農業機械作業所、潅漑管理所、採種農場や種子処理場、農事試験場、種畜場と獣医防疫所などを強化し、これらの企業所を協同経営の農業生産に積極的に参加させなければならない。このような国営企業所を物質的、技術的にしっかりときずき模範的に管理すべきであり、農業協同経営の発展におけるその役割をたえず高めなければならない。工業の発展にともなって、こうした国営企業所をひきつづき拡大強化して、全人民的所有に属する近代的な物質的・技術的手段が農業生産でしだいに圧倒的な比重をしめるようにしなければならない。
このように全人民的所有と協同的所有を密接に結びつけていくことによってのみ、農民に対する労働者階級の政治的・思想的影響を強めることができ、工業の機械技術、先進的な企業管理と生産文化をより円滑に農業に普及することができ、農村に対する都市の支援を効果的に実現することができる。このようにしてはじめて、協同的所有を強固にし発展させ、それを全人民的所有へとさらに接近させることができ、協同的所有の全人民的所有への漸次的な転換過程を順調に進め、促進することができる。これは、労働者階級の指導的役割を高め、労農同盟をさらに強化する道であり、社会主義・共産主義の建設を早める道である。
協同的所有に対する全人民的所有の指導的役割を弱め、２つの所有を分離する方向に進むならば、農民に対する労働者階級の政治的・思想的影響が弱まり、工業の機械技術、先進的な企業管理と生産文化を農業に十分普及することができず、農村に対する都市の支援を妨げることになるであろう。このようにしては、社会主義農業経営制度の強化発展をはかることができず、協同的所有の全人民的所有への漸次的転換も順調に実現することはできない。これは結局、労働者階級の指導的役割を弱め、労農同盟を弱めることになり、社会主義・共産主義の建設に困難をつくりだすことになる。
これと反対に、現実的な条件と可能性を考慮に入れずに、協同的所有を性急に全人民的所有に転換させてもならない。農業の物質的・技術的土台が弱く、工業労働と農業労働とのあいだに大きな差が残っており、農民の思想・意識水準と文化水準が労働者階級よりおくれている条件のもとで、協同的所有を全人民的所有に変えるならば、それはかえって、社会主義農村の発展と全般的な社会主義建設をおくらせる結果をまねくことになるであろう。
我々は、必ず協同的所有に対する全人民的所有の指導的役割をたえず高めながら、２つの所有を有機的に結びつけて社会主義農業経営制度を強化発展させ、協同的所有をますます全人民的所有に接近させるようにしなければならない。こうして、現実的条件と可能性をつくりだしながら、しだいに協同的所有を全人民的所有に転換させるべきである。
２ 社会主義農村建設の基本的課題
我が党は農村問題の解決において、常にマルクス・レーニン主義の原則をかたく守り、それを我が国の現実に創造的に適用してきた。我々は農業の協同化が実現するにつれて技術革命、文化革命、思想革命を強力におし進め、農村に対する支援を強め、農業に対する指導と管理を改善することによって、社会主義農村の建設で既に大きな成果をおさめた。
我が国の農業生産は、ひきつづき速いテンポで成長した。我が国の協同農場は政治的、経済的にいっそう強固になった。農民の物質・文化生活が急速に向上し、かれらの政治的熱意と勤労の熱意はさらに高まっている。農村の姿が変わり、都市と農村との差はしだいに縮まっている。
生活は、我が国の社会主義農業経営制度の優位性と、我が党の農村政策の正しさをはっきりと証明している。
現在我々には、農業をいっそう高い水準に発展させ、社会主義農村をより立派に建設すべき膨大な課題が提起されている。
我々は、ひきつづき党の農村政策を貫徹して、農村でおさめた、これまでの成果をかため、発展させるとともに、社会主義農業経営制度の優位性を全面的に発揮させ、社会主義農村の建設と全般的な社会主義建設をさらに促進しなければならない。
１ 農村の技術革命
農村の技術革命は、農業を近代的機械と技術で装備し、農業科学の成果を広く取り入れて農業生産力を高度に発展させ、農民の生活を豊かにし、かれらを骨の折れる労働から解放するための重要な革命課題である。
我が党は、農村で協同化を実現する一方、直ちに技術革命の遂行に着手した。我々は水利化、機械化、電化、化学化を農村技術革命の基本的課題として規定し、これに大きな力をそそいだ。
水利化は、農村の技術革命で極めて重要な位置をしめるものである。農業は工業と異なって自然地理的条件、特に、気候条件に大きく依存している。共産主義者の任務は、自然を征服し改造して、気候の変化やその他偶然な要因に左右されない強固な生産的土台をきずき、人民に安定した生活条件を保障することである。水利化は、大雨と日照りの被害を克服し、農業において安定した高い収穫をおさめ、農業生産のたえまない成長を保障する基本的な裏付けとなる。
稲作が大きな比重をしめ、ほとんど毎年ひどい大雨と日照りに見舞われる我が国の農業にとって、水利化は特に、重要な意義を有する。
我が党は解放直後から水利化に力をそそぎ、特に、農業協同化の実現にともない、潅漑工事と治山治水事業を全国家的・全人民的運動として力強くくりひろげた。我々は既に、水利化を基本的に解決し、凶作を知らぬ農業生産の強固な土台をきずきあげた。
我々の今後の課題は、どのような日照りや大雨に見舞われても常に豊作をおさめることができるよう、これまでの水利化の成果をかため、それをさらに拡大することである。ここでまず第１に解決すべき問題は、米の生産を増やし穀物の総収穫高を上げるため、２～３年内に水田の面積を70万ヘクタールにまで広げることである。
現在進めている大規模の潅漑工事を速やかに完成し、さらに多くの潅漑工事を新たに行うべきである。現存の灌漑施設を整備補強して、それをいっそう有効に利用すべきである。治山治水事業、特に、中小河川の整理事業をひきつづき強力に行うべきである。
農業において労働生産性を高め、農民の労働を楽なものにするためには、必ず機械化を実施しなければならない。
数千年のあいだ、おくれた農具を用い、あらゆる苦役にさいなまれてきた農民を骨の折れる労働から解放するのは、我々共産主義者に課せられた栄誉ある歴史的な任務である。農業の機械化を強力におし進めて農業労働の生産性を早急に高めるとともに、農民の骨の折れる仕事を軽減し、かれらに十分な休息をとらせるだけでなく、学習と文化生活に必要な時間を十分に与えなければならない。
こんにち我が国は、農業の機械化を全面的におし進める段階にある。我々の課題は、耕転から、取り入れ、脱穀にいたるまで、すべての農作業を機械化し、農業の総合的機械化を実現することである。まず、最も骨が折れ、手間のかかる耕転や除草、運搬作業などの機械化に力を集中して、近い将来この問題を解決しなければならない。
農業を機械化するためには、今後、トラクターの台数を７万～８万台（15馬力換算）に、トラックは３万～３万5000台にそれぞれ増やし、その他各種の農業機械を決定的に増やさなければならない。
我が国の農業は自然地理的条件からしても、作物の構成や耕種方式からしても、一連の特殊性をもっている。我が国農業の特殊性に適した新しい農業機械を広く考案し製作するとともに、耕地整理を行い、耕種方式を改善するなど、機械化に有利な条件をつくりださなければならない。
電化は、農村の技術革命と文化革命で重要な役割を果たす。農村を電化せずには水利化と機械化を成功裏に行うことができず、文化的な農村の建設も期待できない。
我が国では既に、全農村里の93.3％、農家総数の71％に電気が引かれている。
国の電化をめざす我が党の方針は、大規模の水力発電所と火力発電所の建設を並行しておし進めるとともに、中小規模の発電所を全国各地に多く建設することである。
ひきつづき党の電化方針を貫き、ここ数年のうちにすべての農村と農家に電気を引くようにしなければならない。農業に電気動力を効果的に利用し、脱穀、揚水、飼料の粉砕や切断など固定した場所で行われる作業はすべて電化すべきである。すべての農家でラジオまたは有線放送が聞けるようにし、各種の電化製品を広範に使えるようにしなければならない。
化学化は、農作物の単位面積当たりの収量を増大させる重要な方途である。農業に化学を応用すれば土壌を改良し、土地の肥沃度を高め、農作物の成育と結実を促し、病虫害を防ぎ、雑草をなくすことができる。
我が国では化学工業が急速に発展した結果、1963年に農耕地ヘクタール当たり化学肥料の施肥量は300キログラムに達し、その品種構成はいちだんと改善された。農村への農薬の供給量も著しく増えた。
化学化における課題は、我が国の土壌と農作物に適した各種の化学肥料を十分に供給し、各種の殺虫剤と除草剤の供給量を大幅に増やすことである。
ここ数年のうちに、農耕地ヘクタール当たり化学肥料の施肥量を500キログラムに増やし、ゆくゆくは１トン以上の水準に引き上げるべきである。科学的な施肥方式を確立し、化学肥料を最も効果的に利用すべきである。
水利化、機械化、電化、化学化は、農村における技術革命の４つの基本的な構成部分である。機械化と電化にのみかたより、水利化、化学化をなおざりにすれば、農業生産で収穫高を不断に高めることはできない。これとは逆に、水利化と化学化にのみ力を入れ、機械化、電化を行わなければ、労働生産性を高めることができず、農民の骨の折れる労働を軽減することができない。
工業の発展程度と農村の具体的な状況に応じて、順序の違いはあるとしても、真に社会主義農業の物質的・技術的土台を強固にきずくためには、必ず農村における技術革命の４つの基本的課題、すなわち水利化、機械化、電化、化学化を実施しなければならない。
水利化、機械化、電化、化学化を実施するとともに、農業科学の成果と先進的な営農技術を広く取り入れ、集約農法をさらに発展させなければならない。
農業の集約化──これは営農事業における我が党の基本的方針である。近代的な科学・技術に基づく集約農法は、最も先進的な農法であり、これは農業生産で多収穫をおさめる基本である。
集約農法で積んだこれまでの豊富な経験を生かし、さらに発展させて、農作物の単位面積当たり収量を画期的に高めなければならない。土地の整理と改良を行い、可能なところではすべて二毛作体系を取り入れ、間作、混作などをいっそう広く実施しなければならない。育種事業を強化して種子を改良し、より多くの自給肥料をほどこし、すべての農作業を適時に質的に行い、田畑を丹念に手入れしなければならない。
農村の技術革命を進め、それに基づいてたえず農業生産を高めなければならない。
農業生産で最も重要なのは穀物生産である。穀物問題を解決してこそ、住民に食糧を十分に供給し、農業の他の部門を急速に発展させることができる。我々は穀物生産に力を集中して、既に食糧を自給自足できるようになった。
穀物生産の当面の課題は、米の生産を増やし、穀物の総収穫高を大幅に高めて全人民が白米を常食とするようにし、畜産業をはじめ、農業のその他すべての部門をさらに発展させるための強固な土台をきずくことである。
穀物生産を主としながら工芸作物の栽培、畜産業、果樹栽培業、養蚕業など、農業のすべての部門を速やかに発展させなければならない。
我々は、農村の技術革命を遂行して農業生産力を高度に発展させ、我が国社会主義農村を強固な食糧および原料基地につくりあげ、農民の生活を豊かにするであろう。我々は、農村の技術革命を強力におし進めて農民の労働を楽なものにし、農村でも基本的に８時間労働制を実施できるようにし、さらには工業労働と農業労働の差をしだいになくすであろう。
２ 農村の文化革命
農村の文化革命は、農民の文化・技術水準を高め、農村の技術幹部を養成し、古い農村の姿を一新し、あらゆる立ち後れた生活様式と因習をなくし、文化的で衛生的な生活を営むための重要な革命課題である。
農村の文化革命で基本となるのは、農民の一般知識水準と技術水準を高めることである。これを行わなければ、農村の技術革命を実現することができず、農民に対する思想教育を成功裏に進めることもできない。
我が国では、1956年から初等義務教育制が実施され、1958年からは中等義務教育制が実施されている。こうして、都市ばかりでなく農村でも、若い世代はすべて７年制までの一般知識を身につけるようになった。農村に技術学校が広範に設置され、多くの農村の青少年が技術教育を受けている。
いまでは、次代に全般的な技術教育を与えることが問題となっている。近い将来に９～10年制の技術義務教育を実施して、この問題を完全に解決しなければならない。
農村における成人教育をひきつづき力強くくりひろげ、すべての農民に初級中学以上の一般知識と農作業に必要な技術知識を身につけさせなければならない。
近代的機械技術に基づく農業の急速な発展は、いっそう多くの農村技術幹部を必要とする。
今後数年のうちに、すべての協同農場に５人以上の技師、すべての作業班に２人の技手または技師を配置できるようにしなければならない。このためには、大学、高等技術学校などをつうじて、農村青年のなかから農業に必要な各部門の技術者、専門家を大量に養成しなければならない。農村技術幹部の隊列を急速に増やすとともに、その質的構成をたえず高めなければならない。
文化革命の重要な課題の一つは、農村における保健衛生事業を発展させ、農民の文化生活条件をさらに改善することである。
農業の協同化が実現した後、農民の文化生活には大きな変化が生じた。農村の各里に診療所が設けられ、農民にも労働者、事務員と同じく無料治療制が実施されている。農村において各種の風土病や伝染病は姿を消している。農村のすべての里に共同の費用で託児所、幼稚園が設けられ運営されている。農村に多くの文化住宅と文化厚生施設が建設された。各種の出版物が大量に農村に配布され、広範な農民が大衆的文芸活動に参加している。かつては停滞し不潔であった我が国の農村が、いまでは活気にみちた、清潔で住みよい新しい農村につくり変えられている。
文化的な社会主義農村を建設するためには、いっそうねばり強いたたかいが必要である。
農村の診療所を拡張、完備し、農民への医療奉仕をさらに改善すべきである。
農村女性の労働条件を改善し、社会的労働に十分参加できるよう、あらゆる可能性を保障しなければならない。女性にひきつづき労働報酬を与えながら、産前産後の休暇を完全に保障しなければならない。既に建設ずみの託児所、幼稚園をいっそう立派にととのえ、その運営を改善して、女性が安心して生産に参加できるようにし、子供たちを立派に養育するようにしなければならない。
ひきつづき農村住宅の建設を強力に進め、すべての農民が美しくしょうしゃで、便利な文化住宅で暮らすようにしなければならない。農村に各種の文化厚生施設を十分にととのえ、農民の生活にいっそうの便宜をはからなければならない。
農村に新聞、雑誌、図書などをさらに多く配布し、農村の各里にクラブを建設し、農民のあいだで大衆文化活動をさらに発展させなければならない。
農村におけるいっさいの立ち後れた生活様式と生活慣習を完全になくし、几帳面で文化的な生活をきずくようにしなければならない。
我々は、農村の文化革命を確実に遂行して、労働者と農民の技術・文化水準での差をしだいになくし、すべての勤労者の技術・文化水準を、しだいに技師または技手の水準に引き上げるであろう。我々は、教育・保健医療・住宅条件、文化厚生施設など、あらゆる文化的な生活条件において、都市と農村の差をさらに縮め、しだいにその差をなくしていくであろう。
３ 農村における思想革命
農村で思想革命を行うというのは農民の古い思想の残りかすを一掃し、かれらを先進的な労働者階級の思想、共産主義思想で武装させることを意味する。
我が党は農業協同化に着手したときから、農民のあいだで階級的教育を基本とする共産主義教育を精力的に展開してきた。その結果、農民の自覚が非常に高まり、思想・意識に大きな変化が生じた。
こんにち、我が国の農民は労働党のまわりにかたく結集し、党の政策を貫くためにすべてのエネルギーと才能を傾けてたたかっている。かれらは社会主義の獲得物を非常に大切にしており、それを守り、いっそう強固にし、発展させようとするかたい決意にみちている。農民のあいだで互いに助け、導きあい、集団を愛し、共同の利益のために奉仕する共産主義的道徳の美風がいっそう発揚されている。農民の労働の熱意と創意は高度にもりあがっている。偉大な共産主義の学校であるチョンリマ（千里馬）作業班運動が、農村で急速に拡大発展している。
これらすべてのことは、我が国の農村で思想革命が農民大衆のあいだに深く浸透しており、それをとおして農民が新しい人間に教育改造されていることを示している。農村における我々のすべての勝利と成果の重要な裏付けは、まさにここにある。
農村活動において思想革命を優先させる原則をひきつづき堅持し、農民に対する共産主義教育をいっそう強くおし進めければならない。
共産主義教育の基本は階級的教育である。農民を帝国主義と地主、資本家階級を憎む思想で武装させ、搾取制度に反対し、社会主義制度を守り発展させるためにたたかうよう教育しなければならない。労働者階級の不屈の革命精神と、郷土と社会主義祖国を愛する熱烈な愛国主義精神、プロレタリア国際主義の思想で農民を武装させなければならない。
農民に対する共産主義教育で最も重要な問題の一つは、かれらのあいだに残っている個人主義・利己主義および小所有者的根性をなくし、かれらを集団主義の思想で武装させることである。農民のあいだに残っている利己主義の思想は、数世紀にわたって先祖代々引き継がれてきた根強い思想である。農民のあいだで利己主義に反対し、共同財産を愛護し、集団と組織を愛する精神を培うために、ひきつづきねばり強い闘争を展開しなければならない。すべての農民が「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という共産主義的な集団主義の思想をもって働き、学び、生活するようにすべきである。
労働を愛する精神で農民をさらにしっかりと武装させることが重要である。農民が労働を好み、それを最も栄誉あるものとし、無為徒食することを恥とし、それを搾取階級の思想として憎み排撃するようにすべきである。すべての農民が労働で自覚的な熱意と献身性を発揮し、集団と社会のために、共同労働にいっそう誠実に参加するようにしなければならない。
農民のあいだで古いものに反対し、新しいものを志向する精神、未来を愛する精神を培うべきであり、革命的な楽天主義でかれらを武装させるべきである。農民のあいだに残っている氏族観念や門閥主義に反対し、かれらのあいだに、しばしば見られる消極性と保守主義に反対してたたかうべきである。農民が、いつそうすばらしい未来への希望と熱烈な志向をもち、勝利の確信にみちてたえず前進し、たえず革新を起こすようにしなければならない。
農民に対する共産主義教育は、必ず党政策教育および革命伝統教育と密接に結びつけて行うべきである。
社会主義のもとで大衆を教育する基本的な方法は、肯定的な模範をもって人々を感化することである。我々の経験は、この方法が大衆教育の最も有力な方法であることを示している。肯定的な模範を広め、誠意をつくして人々を助け、ねばり強く感化する方法で農民を新しい人間に教育改造しなければならない。
勤労者に対する共産主義教育は、主としてかれらの実践活動、集団労働をとおして、生産現場を拠点にして行うべきである。農村でチョンリマ作業班運動をひきつづき拡大深化させて、真の集団的な生産革新運動をますます発展させ、かれらを共産主義思想で教育改造する活動をいっそう立派に行わなければならない。
我々は、農民の政治的自覚と意識水準をたえず高めることによって、社会主義農業経営制度の優位性を全面的に発揮させ、農業生産と技術、農村文化をより速やかに発展させるであろう。我々はひきつづき農村で思想革命を強力に進めて、農民を労働者階級の思想で武装させ、労働者と農民の思想・意識水準における差をしだいになくすであろう。
４ 農村に対する支援
農民に対する労働者階級の指導と援助、農村に対する都市の支援は、労農同盟を強化し、工業と農業の均衡のとれた発展を保障し、社会主義都市や労働者区とともに社会主義農村をしっかりときずき、しだいに都市と農村の差をなくすための基本的な条件の一つである。
我が党は解放直後、土地改革を実施した当時から農村を積極的に支援し、特に、農業の協同化を進めるときからは、すべての分野にわたって農村への支援を決定的に強めた。
我が国における個人農経営の社会主義的協同化は、党と労働者階級の指導と社会主義的国営工業の強力な支援によって成功裏に実現した。我が国の協同農場は、党の正しい指導と国家の莫大な物質的・技術的援助と全人民の支援によって、そして、これに限りなく励まされた協同農民の献身的なたたかいによって、政治的、経済的に急速に強固になった。
我が党は、農村に対する政治的指導をたえず強化しながら、全力をつくして農村を物質的、技術的に、そして財政的に援助するようにした。
農村に対する国家の物質的・技術的援助は膨大な規模に達している。1959年から1963年までの５年間に、人民経済に対する国家の基本建設投資総額の15.8％が農業の発展と農村の文化建設にあてられた。また、国家は協同農場に巨額の資金を貸し付け、そのうちの多くの部分は返済を免除した。
このような国家の基本建設投資と財政的援助によって、膨大な灌漑工事と治山治水事業が行われ、農業の機械化、電化、化学化が促進され、農村の文化建設が広範に実施された。
我が国の工業は、年とともに、ますます多くの農業機械、化学肥料、農薬および各種の消費物資を生産して農村に供給した。我々は農村に膨大な労働力の援助も与えた。
国家は農業諸税を減免し、工芸作物の買いつけ価格を引きあげ、農業機械の作業料、灌漑使用料、農機具の価格を引き下げ、農村の子供に衣服を無料で供給するなど、農民の収入を高め生活を改善するための多くの対策を講じた。
農村に対するこのよう支援は農業を速やかに発達させ、協同農場を強固にし、農民の物質・文化生活をさらに向上させるうえで決定的な役割を果たした。
現在、農業の当面する膨大な課題と社会主義建設の全般的な利益からみて、農村に対する支援をいちだんと強化することが必要である。既に社会主義工業の強固な土台がきずかれている条件のもとで、十分農村により多くの援助を与えることができるし、また当然与えなければならない。
農村への国家投資を増大させ、物質的・技術的援助をいっそう強化すべきである。農業に奉仕する工業部門をいっそう速やかに発展させて、農村に近代的農業機械、化学肥料、建設材料などをより多く供給しなければならない。国家の負担によって各部門の技術者、専門家をさらに多く養成して農村に派遣すべきである。
我が国の農業は高度に集約化されており、農業の機械化は長期間を要する。我が国の農村労働力は、まだ老人と女性が多数をしめている。農村に青壮年労働力をさらに補充し、農村に対する社会的な労働の援助をより計画的に、より効果的に行うべきである。
農民の生活向上のために必要ないっさいの対策を立てなければならない。系統的に農民の負担を減らし、その収入を増やさなければならない。農民に各種の工業製品をより多く供給し、農村の教育・文化・保健医療事業の発展にも積極的な援助を与えるべきである。
農村により多くの労働者、除隊軍人を派遣し、革命家の遺族や敵に虐殺された人の遺族を定着させ、中核分子の隊伍をひきつづき拡大して、農村の基盤を政治的、思想的に、そして階級的にいっそうしっかりとかためなければならない。
すべての党組織、国家機関、大衆団体とその活動家が農村活動に深い関心を払い、農村により大きな援助を与えるべきである。
我々は、政治、経済、文化の各面にわたり農村に対する援助をさらに強化することによって、労働者階級の指導的役割を高め、労農同盟をいっそう強めるとともに、工業と農業の均衡のとれた発展を保障し、人民経済全体の発展をさらに促進し、社会主義都市と社会主義農村をひとしく強固にきずき、いっそう繁栄させるであろう。我々は農村に対する支援をひきつづき強化して、協同農場と農民の負担を系統的に減らし、ゆくゆくは農民にも労働者と同じように、すべての生産条件と生活条件を国家的に、全社会的に保障するであろう。
５ 協同農場に対する国家的指導
農業協同経営に対する国家的な指導体系と指導方法は、協同経営の管理運営を改善し、全人民的所有と協同的所有の連係を強化するうえで決定的な意義を有する。
我が党は、農業協同化を実現した当初から協同農場に対する国家的指導の改善に深い関心を払い、環境と条件の変化に応じて適時に指導体系と方法を改めた。
我が党の伝統的な革命的活動方法、党の大衆路線を社会主義建設の現実に具現したチョンサンリ（青山里）精神とチョンサンリ方法の普及は、すべての党および国家機関の活動に転換をもたらし、協同化された農村の新しい環境にふさわしく農村に対する指導活動を改めさせた。特に、党はチョンサンリ方法を浸透させながら、当時、協同農場を直接指導する機能を果たしていた郡人民委員会の活動家が現地にいって対人活動を強め、農場のすべての事業を直接組織し具体的に助けるようにした。これは、協同農場に対する国家的指導を強めるうえで大きな役割を果たした。
しかし、農村の現実が急速に変化するにつれて、農業に対するいっそう水準の高い、新しい指導が必要になった。協同農場の規模が大きくなり、農業技術がさらに発展し、農村に対する国家の物質的・技術的援助は急速に増大した。農民の技術・文化水準と思想・意識水準が高まった。農村の活動はその範囲が拡大され、はるかに複雑なものとなり、農業にはますます膨大な課題が提起されるようになった。もはや、行政機関としての郡人民委員会は、農業に対して十分な指導を行うことができなくなった。
そこで我が党は、1962年のはじめに、新たに郡協同農場経営委員会と道農業経営委員会を組織し、同時に農業省を農業委員会に改編した。郡協同農場経営委員会と道農業経営委員会の創設は、変化した農村の現実に即して農業の指導体系を根本的に改める画期的な措置であり、農業の発展における機の熟した要求を解決する最も適切な措置であった。これは、マルクス・レーニン主義の原則と我が国の現実を結びつけた創造的な対策であった。
我が国に創設された新しい農業指導体系のうち、最も重要な役割を果たすのは郡協同農場経営委員会である。
郡協同農場経営委員会は、農業技術者と農業機械作業所、農機具工場、潅漑管理所など、農業に奉仕する国営企業所を統一的に掌握し、協同農場の経営活動を現地で直接組織し指導する。経営委員会は、協同農場を直接指導する機能と、協同経営に対する国家の物質的・技術的援助を直接実現する機能とを統一させた専門的な農業指導機関である。
郡協同農場経営委員会は大きな優位性をもっている。
経営委員会は、以前のような行政的方法ではなく、企業的な方法で農業をより効果的に指導し、特に、農業生産に対する技術指導をさらに強めることができる。経営委員会が組織された結果、各協同農場の管理運営が改善されたばかりでなく、郡内の協同農場間のつながりも緊密になった。
経営委員会は、全人民的所有と協同的所有を有機的に結びつけ、工業と農業との生産的なつながりを強める。経営委員会が組織された結果、全人民的所有がより広範に、より深く協同的所有に浸透するようになり、技術、文化、思想の各面にわたって、農民に対する労働者階級の影響力はいちだんと強まった。
経営委員会が創設されたので、農業協同経営に対する社会主義的国営工業の物質的・技術的援助が強まり、協同農場は、このような援助をより効果的に利用しうるようになった。これらすべては、労働者階級の指導的役割を高め、労農同盟をさらに強化し、全人民的所有の指導的役割を高め、協同的所有をたえず全人民的所有に接近させる。
我々の課題は、経営委員会の優位性に基づいて農業を手際よく指導し、協同農場により効果的な援助を与えることである。
第１に重要なのは、経営委員会の活動家の活動方法を決定的に改めることである。経営委員会の活動家は古い行政的な活動方法を完全に捨てて、経営委員会本来の使命にかなうよう、必ず企業的方法で協同農場を指導すべきである。計画の作成から生産の組織、土地や農業機械および潅漑施設の利用、技術の発展、資材の保障、労働力の配置と組織、生産物の分配、財政管理などにいたるまで協同農場のすべての経営活動を直接組織し具体的に援助すべきである。
企業的指導で最も重要なのは、生産に対する技術指導である。農業生産も工業生産と同じく、一つの技術工程である。農業において技術の役割はますます高まり、生産過程は技術面でいっそう複雑になっている。いまでは、技術をぬきにして農業を営むことはできず、技術を知らずには農業を指導することもできない。経営委員会は活動家の技術水準を高め、技術者を正しく動かして農業に対する技術指導を決定的に強め、農村の技術革命をいっそう促進すべきである。
すべての活動で基本となるのは対人活動である。生産は自然を征服するための人間のたたかいであり、このたたかいの主人公は人間である。農業の主人公は農民である。農民の創造力と才能を引き出さなくては農業を発展させることはできない。農民に対する活動を行わずには農村の実情を十分理解することができず、農業を正しく指導することはできない。経営委員会の活動家はチョンサンリ方法にしっかりと依拠して、常に現地にいき、対人活動を優先させ、実情を深く理解し、それに基づいて協同農場に対する企業的指導を十分に行うべきである。
経営委員会は、農業に対する国家の物質的・技術的援助を効果的に実現することに深い関心を払うべきである。農業生産に奉仕する国家のあらゆる物質的・技術的手段と資材は、経営委員会の直接の管轄下にあるか、または経営委員会をつうじて農村に入っていくのである。農業に対する国家の物質的・技術的援助が効果的に実現されるか否かは、もっぱら経営委員会の活動にかかっている。
経営委員会は郡内の農業の実情を具体的に、総合的に把握し、それに即して潅漑施設、農業機械、化学肥料などの設備、資材を最も合理的に利用すべきである。経営委員会は、その管轄下にある国営企業所と国家の技術手段および物資を統一的に掌握し正しく管理して、それらが農業にいっそう立派に奉仕し、協同農場により多くの援助を与えるようにしなければならない。
こうして経営委員会は、郡内のすべての協同農場を物質的・技術的土台が強固で多角的に発展した、収益性の高い社会主義的経営にしなければならない。
郡経営委員会とともに、道農業経営委員会と中央農業委員会の役割と機能を高めるべきである。
道農業経営委員会は、郡協同農場経営委員会と国営農牧場を直接指導し援助しながら、道内の農業の発展を全般的に指導しなければならない。特に、道農業経営委員会は郡に農業機械や肥料、農薬などの営農資材を円滑に供給し、作物の配置、種子の選定、施肥方式の樹立など技術指導に深い関心を払わなければならない。
中央農業委員会は、農業を全般的に指導しながら、主として農業技術の発展方向に関する研究、農業発展の展望と関連した問題に関心を集中すべきである。中央農業委員会は、農業部門の科学研究事業と幹部養成事業、大規模の自然改造事業を直接組織し指導すべきであり、それらの事業をいっそう立派におし進めなければならない。
農業に対する我々の国家的指導体系は、農業の経営管理を先進的な工業管理の水準にいっそう近づけ、全人民的所有と協同的所有を有機的に結びつけ、農業発展における当面の問題と将来の問題を正しく組み合わせて解決していく、すぐれた体系である。
すべての農業指導機関、特に、郡協同農場経営委員会がその機能を十分に発揮すれば、我が国の社会主義的農業の発展は大きく促進されるであろう。
３ 社会主義農村建設における郡の役割と任務
社会主義建設において、農村活動は最も複雑で難しい仕事の一つである。農村活動の複雑さと難しさは農村の技術、文化、思想の後進性、農民構成の複雑さ、農業の自然的、季節的な制約などと関連しているばかりでなく、特に、農村の分散性と関連している。
農村活動の対象は全国各地に分散している村落であり、広い地域に分散している作業場であり、小さな集団に分かれて働き生活している農民である。農業が協同化された結果、農村の分散性はかなり取り除かれたが、依然としてそれは都市や労働者区と区別される農村の重要な特徴、工業と区別される農業の特徴として残っており、将来もひきつづきそのようなものとして残るであろう。農村におけるすべての活動は常にこの特徴を考慮し、それに即して組織し実行しなければならない。
農村のように地域的に分散した対象を指導するうえで重要なのは、地方ごとに一定の地域を統一的な指導の単位とし、それを拠点として直接その地域内のすべての対象を指導することである。このような単位はその大きさが適切なものでなければならず、その単位の範囲内では自然地理的条件をはじめ、その他の条件に大きな差があってはならない。このような拠点は、その単位のすべての活動を統一的に、総合的に十分指導しうる幹部と指導機関、物質的・技術的・文化的手段を基本的にそなえていなければならない。
我が国では、郡が農村活動と地方の全般的な活動を直接、統一的に、総合的に指導する地域的単位となっており拠点となっている。我が国の郡はその大きさからしても、幹部と指導機関、物質的・技術的・文化的手段を基本的にそなえている点からも、このような単位として最も適切である。
我が国の社会主義建設で、郡は実に重要な位置をしめており、大きな役割を果たしている。
郡は、農村と労働者区を直接指導する党と行政の末端指導単位である。党と政府のすべての政策が郡をつうじて直接農村と労働者区に入っていく。郡機関とその活動家は、農村や労働者区にいってじかに勤労者に接し、すべての活動を直接、現地で組織し実行する。
郡は、地方の経済、文化発展の総合的単位になっている。地方経営工業は郡を単位として発展し、農業の発展も郡が直接指導する。郡機関所在地や農村の建設も郡を単位として進められ、地方における供給活動、教育・文化・保健医療事業も郡を中心に発展していくのである。
郡は政治、経済、文化のすべての分野で都市と農村を結びつける拠点である。農民は郡をつうじて党の政策を受け入れ、郡をつうじて労働者階級との生産的・経済的連係を結び、都市の文化と生活様式を学びとる。
社会主義建設全般にわたる郡の大きな役割は、とりもなおさず社会主義農村の発展で郡が極めて重要な役割を果たすことを示している。
郡は、農村における技術革命、文化革命、思想革命の遂行を促進する拠点であり、都市と農村を結びつけ、農村に対する都市の政治的、経済的、文化的な支援を実現する拠点である。
我が党は、国の具体的な実情に照らして郡の位置と役割をこのように規定し、この方向でたえず郡の活動を改善してきた。
党は郡党委員会をはじめ、郡の諸機関を有能な幹部でかため、その役割と機能を高めるために常に指導と援助を与えた。郡に協同農場経営委員会、地方工業経営委員会を組織し、地方産業工場を建設するとともに、学校、病院、図書館、映画館など、多くの文化厚生施設を建設した。
特に、1962年に開かれた地方の党および経済活動家昌城連席会議は、昌城郡の活動の成果と経験を総括し、郡に提起された課題を明確にうちだすことによって、郡の活動を新たなより高い段階に引き上げた。
郡をしっかりきずき、郡の役割を高めるという我が党の方針は、社会主務建設のすべての分野に立派な結実をもたらしている。
我々の課題は、社会主義農村の発展と地方の政治、経済、文化の全般的な発展を促進するために、郡の活動をいちだんと改善することである。
農業に対する郡協同農場経営委員会の指導を強めると同時に、社会主義農村建設のあらゆる分野で郡の役割をいっそう高めなければならない。
１ 郡内の地方経営工業の役割
一般消費物資の生産で、大規模の中央直轄工業と中小規模の地方経営工業を並進させる党の政策が成功裏に貫かれ、我が国の地方経営工業は急速に発展した。各市、郡に織物工場またはメリヤス工場、しょうゆ工場、家具工場など、平均10余りの地方産業工場が建設され、各種の生活必需品を生産している。
地方に広く工場を建設することは、工業を農業にいっそう接近させることを意味する。これは工業と農業とのつながりを強め、社会主義農村建設を促し、都市と農村との差をなくすうえで大きな意義を有する。
我が国の各郡に建設された地方産業工場は、主に地元の原料を加工して消費物資を生産することを基本的な目的としている。地方産業工場は、種々の消費物資を生産して郡内の農村に供給するとともに、都市にも供給して勤労者の需要をみたすうえで重要な貢献をする。地方産業工場は各種の農産物や副業生産物を適時に買い付け加工することにより、農民の収入を増やし、農業生産と農村副業の発展をさらに促進する。
地方産業工場は工業の先進的な企業管理法と生産文化、技術を農村に普及し、農民に労働者階級の政治的・思想的影響を与えるうえでも大きな作用をする。
すべての郡で、既にきずきあげた土台に基づいて、地方経営工業をさらに高い段階に発展させなければならない。
地方産業工場では、広く地元の原料源を動員して加工し、特に、農民が生産する農産物と副業生産物の加工にいっそう力をそそがなければせらない。すべての地方産業工場は、郡内の農業とその他の部門に新しい技術を普及する基地となり、高度の生産文化と先進的な企業管理の手本とならなければならない。地方産業工場は良質で多様な商品をより多く生産して、農村と他の地方に供給すべきである。
こうして農民の生活を向上させ、農業生産と農村副業の発展を促し、工業と農業のつながりを強化するうえで、地方経営工業の役割をいちだんと高めなければならない。
我が国では、大規模の中央直轄工業企業所も広く地方に分布している。ほとんどすべての郡に１つか２つ、あるいはそれ以上の中央直轄工業企業所がある。これは農村の発展にとって大きな力となっており、また工業自体の発展にも多くの面で有利である。
地方にある中央直轄工業企業所は周辺の協同農場に対し物質的技術的に、政治的思想的に積極的な援助を与えなければならない。協同農場はこれらの工場の労働者、技術者に野菜類、畜産物などの食料品を円滑に供給しなければならない。郡は、郡内の中央直轄工業企業所と協同農場とのあいだに密接なつながりをもたせ、相互援助を強めるように指導しなければならない。
２ 農村への供給基地としての郡
社会主義農村を発展させ、社会主義建設を促進するうえで重要な問題の一つは、都市と農村との経済的なつながり、商業上のつながりを強めることである。都市と農村との経済的なつながりを強化してこそ、農村に工業製品を円滑に供給して農民の生活を向上させることができ、工業製品に対する農村の需要を高め、商品の実現を促して工業の発展にさらに拍車をかけることができる。また、このつながりを強化してこそ、適時に農産物を買い付けて都市住民の食糧と工業原料の需要をみたし、農民の収入を高め、農業の発展をさらに促進させることができる。
郡は、都市と農村との経済的なつながりをとりもつ拠点となり、農村への供給基地となる。農村の生産物は郡をへて都市に供給され、都市で生産された工業製品は郡をへて農村に供給される。郡が供給基地としての自己の役割を十分に果たさなけれは、都市と農村との経済的なつながりを十分に保障することができず、結局これは、労働者、農民の生活の向上にも、工業と農業の発展にも大きな支障をきたすことになる。
社会主義建設が進めば進むほど、都市と農村との経済的なつながりはますます緊密になり、したがって、この連係をとりもつ拠点としての郡の役割と機能もいちだんと高められなければならない。
農業が発展し、農民の収入が高まるにつれて、農民は多様で良質の工業製品をより多く要求する。郡はその供給基地を強め、農村の商店網を合理的に配置し、商品の割当てを適切に行って適時に円滑に、工業製品を農民に供給しなければならない。郡の商業機関は、工業企業所が農村の需要にこたえて、さらに立派な製品をより多くつくるよう、生産に積極的な影響を与えるべきである。
他方、農業生産が高まり、農業が多角的に発展するにつれて農村の商品生産物は急速に増大する。郡はその買付け基地を強化し、買付け事業を合理的に組織し、農村の商品生産物を適時に買い付けることによって、農民の収入を増やし、かれらの生産意欲を高めると同時に、都市の住民と工業に対する食糧と農産原料の供給を円滑に行うべきである。
社会主義のもとにおける商業は、本質上、人民に対する供給活動である。農村の商業は農民に対する供給活動である。郡の商業機関と買付け機関の従事者は、あくまでも農民に奉仕する立場に立って活動しなければならない。
郡は、農村への商品供給ばかりでなく、農民の生活に対する奉仕活動を改善することに特別の関心を寄せなければならない。農村の各里に、商店はもとより理髪店、浴場、クリーニング店、衣類および家具の修理所、寄宿舎など、各種の公共奉仕施設を完備し、それを立派に運営して農民の生活上の要求をすべて円滑にみたすべきである。
こうして、我が国の農村の里を農業の強固な生産細胞につくりあげるだけでなく、農民のための立派な供給細胞に、また立派な奉仕細胞につくりあげなければならない。
３ 農村の文化革命の拠点としての郡
郡は農村の文化革命の拠点としても、社会主義農村の発展に強力な作用を及ぼす。
郡機関所在地には学校、病院、映画館、書店、図書館など各種の文化厚生施設が備わっており、これらは郡機関所在地および郡内農村の住民に奉仕する。郡は農村の学校、診療所を直接管理し、郡内農村の全般的な文化・衛生事業を直接指導する。農村の党幹部や管理・技術幹部も、主として郡の教育機関をつうじて養成される。農村の住宅と文化厚生施設の建設は、郡に所属する農村建設隊によって進められる。
文化的な社会主義農村の建設を促進するためには、農村の文化革命の拠点としての郡の役割を全面的に強めなければならない。
郡は農村の学校をよく整備し、教育の質をいちだん高めて、農村の青少年を知・徳・体を兼備した有能な社会主義・共産主義建設者に育てあげなければならない。郡は、特に、郡内農村の青少年にもれなく技術教育を行えるよう、技術義務教育制を実施する準備を強力におし進めなければならない。郡は郡内の高等技術学校、その他の教育機関をとおして農村の幹部をさらに多く養成すべきである。
郡は郡病院と農村の診療所をよく整備し、農村の保健医療綱を拡張して農村における保健・衛生事業をさらに改善しなければならない。農村の全般的な文化活動に対する郡の指導と援助を強めるべきである。
郡機関所在地は、都市の先進的な文化と生活様式を農村に広める基地となる。郡機関所在地を美しくしょうしゃに、文化的で衛生的につくりあげ、農村がこれを見習うようにしなければならない。郡機関所在地は生活のすべての面で農村の模範となり、新しい社会主義的生活様式の手本とならなければならない。
郡は農村建設隊の力を動員して、郡機関所在地と郡内の農村建設を強力におし進めるべきである。農村建設隊は郡内の農村住宅と文化厚生施設の建設を責任をもって受け持ち、遂行しなければならない。
郡がこれらすべての活動を立派に行えば、郡内の農村文化革命はさらに促進されるであろう。
４ 農村活動に対する郡党委員会の指導
郡党委員会は我が党の末端指導機関であり、郡の活動の参謀部である。郡党委員会は郡内のすべての党組織を直接指導し、郡内のすべての活動を統一的に掌握し指導する。
農村活動に対する指導は、郡党委員会の活動で最も重要な位置をしめている。郡党委員会の主な活動の対象は農村である。郡党委員会は郡内農村の党組織を直接指導し、農村のすべての経済活動と文化活動を党的に指導する。郡党委員会が指導する他の部門の活動もすべて、農村活動と直接の関連がある。
農村活動に対する郡党委員会の指導を強めずには、社会主義農村建設における郡の役割を高めることができず、したがって農村の急速な発展を保障することもできない。農村における社会主義建設を促進するために、農村活動に対する郡党委員会の指導をたえず改善することは、我々の最も重要な課題の一つである。
第１に、郡党委員会は農業の発展と農村の文化建設において、舵取りの役割を立派に果たさなければならない。
農業生産と技術、農村の建設、農村の文化活動などは、郡協同農場経営委員会、郡人民委員会と郡内のその他の行政および経済機関が直接組織し実行する。郡党委員会は、直接経済活動と文化活動にたずさわるのでなく、党的に指導し統制する。
郡党委員会は郡内の行政および経済機関が、党の政策にしっかりと依拠して、農村の経済活動と文化活動を正しく進めるよう方向を示し、方法を教えなければならない。これとともに郡党委員会は、臨時、行政および経済機関の活動状況を点検し統制して、誤りは直ちに是正させるべきである。
郡党委員会が農村の経済活動と文化活動を指導するうえで、特に、重要なのは、仕事の順序を正しくみきわめ、それぞれの時期の主要な活動に力を集中するとともに、すべての活動を全面的に、総合的に指導することである。農村活動は他の部門の活動に比べて、いちだんと複雑で多様である。郡党委員会は、必ず重要で第一義的な課題から一つ一つ集中的に解決しながら、農村のすべての経済活動と文化活動を統一的に掌握し指導しなければならない。
第２に、郡党委員会は、農村の党活動と政治・思想活動を直接組織し実行しなければならない。
郡党委員会は農村の党組織との活動、農村の幹部との活動、農村の党員との活動、農民大衆との活動を行わなければならない。農村の党細胞と里党委員会をかため、常にその活動を指導、援助して、農村のすべての党組織がその党的機能を十分発揮できるようにすべきである。農村の幹部隊列をしっかりとかため、かれらを常に教育し助け導いて、すべての農村幹部が党の政策に基づいて自己の活動を正しく行うようにしなければならない。農村党員の党生活を強化し、たえずかれらの党性を高めて、農村の全党員が農民大衆のあいだで前衛の役割を果たすようにしなければならない。農民に対する共産主義教育と階級的教育をひきつづき強化して、すべての農民が党の農村政策を高くかかげ、それを貫くため献身的にたたかうようにしなければならない。
郡党委員会は党活動で大衆路線を貫徹し、農村のすべての党組織が活動するようにし、すべての幹部、すべての党員、すべての農民が活動し、自覚をもって働き、だれもが熱意と創意を発揮するようにしなければならない。
郡党委員会は、農民の思想教育に格別な関心を払うべきである。郡党委員会は農村における思想革命の直接の組織者であり、指導者である。郡党委員会は農村の党組織を動かし、農村の党員やチョンリマ騎手、積極的な農民を奮起させて、農民に対する共産主義教育を大衆的な運動として展開するようにしなければならない。
すべての郡党委員会が、農村の経済活動と文化活動に対する党的指導を強め、農村における党の政治活動を強めて、郡内の農村活動全般において参謀部としての機能を十分に発揮しなければならない。
４ 協同農場の経済的土台を強め、農民の生活を向上させるための当面の幾つかの対策
社会主義的協同経営制度の優位性と党の正しい政策によって、我が国の農業はたえず発展している。
農業生産の急速な増大にともない、協同農場の経済的土台は強まり、農民の生活は向上した。
戦争による廃墟の上に、農業機械もなく労働力や役畜も足りない極めて困難な状況のもとで組織された我が国の協同農場が、いまでは生産をひきつづき拡大し、農場員の生活をさらに向上させることのできる強固な社会主義的経営に成長した。戦争のため住宅や家財道具のほとんどを失い、衣食にこと欠いていた我が国の農民が、いまでは全般的に中農、または富裕な中農水準の生活をするようになった。これは、我が国農業の発展と農民の生活における偉大な変革である。
我々の課題は、協同農場の経済的土台をさらに強め、農民の生活水準をいちだんと高めることである。
協同農場の経済的土台が急速に強化されたとはいえ、元々、我が国の農場はあまりにも貧弱な土台の上に組織されたため、まだ豊かな農場にはなっていない。農民の生活は急速に向上したが、元々、我が国の農民はあまりにも貧しかったため、まだ裕福な暮らしをするまでにはなっていない。解放後、特に、農業の協同化が実現して以来、都市と農村の差は著しく縮まったが、かつて農村があまりにも立ち後れた状態にあったため、まだ農村は都市よりかなりおくれており、農民の生活も労働者、事務員の生活ほどにはなっていない。
我々は、我が国のすべての協同農場を豊かな農場にし、すべての農民が豊かに暮らせるようにしなければならない。我々は都市と農村との差をさらに縮め、労働者、事務員の生活水準をひきつづき高めながら、農民の生活水準をそれに接近させなければならない。
そのためには、農業生産を大幅に増大させるとともに、系統的に協同農場と農民の負担を軽減しなければならない。
こんにち、工業の威力が増大し、国の自立的経済の土台がいっそう強固にきずきあげられた条件のもとで、我々は協同農場と農民の負担を軽減し、かれらにより大きな国家的恩恵をほどこす一連の重要な対策をとることができるようになった。
そのような対象としては、
第１に、農業現物税制を完全に廃止することであり、
第２に、農村の基本建設のうち、これまで協同農場が自己の資金で行っていたものも、今後は国家の資金で行うようにすることであり、
第３に、国家の負担で農民のための文化住宅を建てることなどである。
１ 農業現物税制の廃止
我が国の農業現物税制は、解放直後の1946年に土地改革についで実施された。
解放前の我が国の農民は、小作料、強制供出、その他各種の過酷な税金により、収穫のほとんどを地主と日本帝国主義者に略奪された。土地改革が実施され、単一の現物税制が施行された結果、農民はこのような搾取と略奪から解放され、収穫高の25％を国家に納めるだけで、残りは自由に処分できるようになった。これは当時、農業生産力を発展させ、農民の生活を向上させるうえで革命的な変革であった。
農民が国家に納める現物税は、労働者、事務員の食糧を保障し、工業の発展に必要な資金を調達するうえで大きな役割を果たした。
社会主義的国営工業が発展し、民族経済の自立的土台がきずかれていくにつれて、国家では農民の現物、税の負担を徐々に軽減してきた。戦後には、収穫高の25％であった現物税率を平均20.1％に引き下げ、1959年からはさらに8.4％に引き下げた。そればかりでなく、多くの協同農場に対して現物税を減らし、一部の農場に対しては、これを完全に免除した。我が国の3700余の協同農場のうち、1963年末までに、現物税を完全に免除された協同農場の数は1331に達する。
我が党の第４回大会は、７か年計画の期間に、農業現物税制を全面的に廃止することを決定した。いまやこの決定を実行に移すときがきた。
我々は、1964年から1966年までの３年間に農業現物税制を完全に廃止しなければならない。
現在我が国では、既に現物税を免除された協同農場を除いた2400余の農場が現物税を納めている。
我々はことし、このうち800余の協同農場に対して現物税を免除し、1965年にもまた、およそ800の農場を免除し、最終年度の1966年には残りの農場をすべて免除して現物税制を完全に廃止すべきである。
現物税の免除は個々の協同農場の経済状態を十分に考慮して、立ち後れている農場から順を追って実施しなければならない。第１年度には、比較的経済的土台の弱い農場を免除し、第２年度には中間水準の農場を免除し、比較的豊かな農場は最終年度に免除するようにすべきである。
農業現物税制の廃止は協同農場の経済的土台を強め、農民の収入を増やす重要な対策となるはかりでなく、我が国の農民をいっさいの税負担から完全に解放する歴史的な出来事となるであろう。
２ 国家の負担によるあらゆる農村基本建設の実施
我が国では、農業の物質的・技術的土台を強化するため、年々膨大な基本建設を進めている。
これまで、農村の基本建設のうち、大規模な工事はすべて国家投資によって行い、中小規模の工事は主に協同農場の自己投資によって行ってきた。ここ５年間に、農村の基本建設投資総額のうち国家投資は60％以上を、協同農場の自己投資は約40％をしめている。
我々はこれまで協同農場が自己資金で行っていた基本建設も、ことしからは国家資金で実施しなければならない。農機具、中小農業機械、役牛などは、今後も協同農場が自己資金で購入するようにし、中小潅漑工事、河川整理、揚水施設、脱穀場、畜舎、倉庫、農村発電所の建設と電気架設などの基本建設は、すべて国家資金で行うようにすべきである。これは国家が農民の利益のために、膨大な資金を追加的に負担することを意味する。
このような対策を実施すれば、協同農場の負担を大幅に軽減し、その結果、農場はより多くの資金を営農事業にふり向けながらも、農場員の分配を大幅に増やせるようになるであろう。これはまた、農業に対する全般的な基本建設投資額を増大させ、農村の基本建設をより計画的に、合理的に、しかも質的に進めるようにし、農業の物質的・技術的土台をいっそう急速に強化することになるであろう。
３ 国家の負担による農村文化住宅の建設
我が国の農民は数千年来、軒の傾いたあばら家に住んできた。解放後、農村の住宅問題は農民の生活にとって最も緊切な問題の一つとして提起された。甚大な戦争の被害は、都市と同様、農村での住宅事情をますます困難なものにした。
我が国の農民は生活の向上にともなって、国家の積極的な援助のもとに、数多くの住宅を新築した。特に、農村建設隊が組織されて以来、農村住宅の建設はいっそう広範囲に展開された。既に農村の住宅事情は著しく改善された。
我々は、農村の住宅問題をいっそう円滑に解決するために、今後は、いっさい国の負担で、農民のための文化住宅を建てるべきである。すべての農民に立派な文化住宅がゆきわたるようにするためには、今後もひきつづき農村の住宅建設を大々的に進めなければならない。これに必要な資材、資金、労働力を国家が負担するだけでなく、これまで農村建設隊が建てた文化住宅の建設費も、国家が負担しなければならない。
これは、農民にも労働者、事務員と同じように、住宅を国家が提供することを意味する。全人民のために徹底して奉仕する労働者階級の党と国家であってこそ、また、すべての人が幸せに暮らせる社会主義社会であってこそ、このような人民的施策を実施することができるのである。
我々は、国家の負担で農村の文化住宅の建設をいっそう強力におし進めて、ここ数年内に、農村の姿を一変させなければならない。
以上の３つの対策のほかにも、協同農場と農民の負担を軽減し、収入を増やすために可能なすべての方法を講じ、実施しなければならない。
農民のための膨大な国家的対策を成功裏に実行するためには、労働者階級がさらに奮起してたたかわなければならない。社会主義工業をいっそう発展させてこそ、農村により多くの援助を与え、農村を都市の水準に引き上げることができる。労働者は国の経済的土台をかため、いっそう積極的に農村を支援するために、工業、運輸、建設などすべての部門で、たえず革新を起こさなければならない。
農民を援助し、かれらに裕福な暮らしをさせるのは、労働者階級の神聖な義務であり、それはまた、国家全体、社会全体の利益に合致することである。農民を全面的に援助し、農民が農業で成果をあげればあげるほど、都市の住民と工業のためのいっそう強固な食糧および原料基地がきずかれ、社会主義建設がますます促進されるであろう。
農民は、農業部門に提起された課題を立派になし遂げることによって、社会主義建設における自己の任務と役割を果たすべきである。農民は、労働者階級の積極的な支援にこたえて増産闘争をさらに強化し、労働者と都市の住民に食糧、畜産物、野菜、果物などを十分に供給し、軽工業により多くの原料を提供しなければならない。農業生産が増大すればするほど、工業の発展は促進され、国の経済的土台はさらに強化されるはずであり、国家は農民のためにより多くのことを行うことができるであろう。
労働者階級の指導のもとに、労働者、農民がかたく団結して協力し、全人民がかたく団結してたたかうことによって、社会主義をより立派に、より早く建設しなければならない。
※ ※ ※
農村問題をひきつづき成功裏に解決していくことは、我々の崇高かつ光栄ある任務である。
社会主義農村建設のための闘争は、かつて立ち後れ貧しかった我が国の農村を、現代技術を備えた、豊かで文化的な社会主義農村につくりかえるための闘争であり、社会主義の全面的な建設を促す闘争である。この闘争は我々の革命基地を盤石のようにかため、南朝鮮の農民と人民をいっそう力強く声援し、祖国統一偉業の実現を早めるための闘争である。これはまた、農村問題においてマルクス・レーニン主義の純潔を守りぬき、その偉大な生命力を示すための闘争であり、社会主義農業経営制度の真の優位性を示すための闘争である。
我々に洗練されたマルクス・レーニン主義党と労働者階級の強力な権力があり、先進的な社会主義制度と威力ある自立的経済の土台があり、労働者、農民をはじめ、全人民が党のまわりにかたく団結して進む以上、我々は必ずやこのたたかいで勝利者となるであろう。我が党と人民は、社会主義建設のすべての部門におけると同様、農村部門でも新たな偉大な勝利をかちとるであろう。
出典：「金日成著作集」 18巻
（小林よしおの研究室）
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