昔話「野鼠が選んだ婿」

昔話「野鼠が選んだ婿」

昔、ある山のふもとに野鼠の夫婦が一人娘と一緒に住んでいました。
娘が婚期に入るとその夫婦は、娘の婿を選び始めました。
そして、一人しかいない大事な娘をこの世で一番立派な家に嫁がせようとしました。　

お嫁に行かなければという両親の言葉を聴いた娘の鼠は胸がどきどきし、恥ずかしさのあまり顔が赤くなりました。
長いこと相談した末に両親はお日様を娘の婿に迎えることにしました。
あくる日、お日様が昇るとお父さん鼠はお日様に聞きました。
「もしもし、お日様、うちに大事に育てたきれいな娘がいるんだけど、わしゃこの世で一番立派なあなたを婿にしたいんだが、どうだい」

お日様は首を振って言いました。
「だめだよ、だめだよ、私は暖かい光でこの世の万物を育てはするが、雲には負けるんだよ、雲が私を隠したら光を放たれないんだよ、だから、私より強い雲のところへ行くんだよ」
お父さん鼠は雲のところへ行って話しました。
雲は手を振って答えました。
「違う、違う、僕はお日様を隠してこの世を暗闇にはできるが風には負けるんだ、風だけ吹いたら四方に散ってしまうんだ、だから僕より強い風のほうがいいよ」
お父さん鼠は風を探して歩き続けました。
突然、短気な風が現れました。
お父さん鼠はもう少しで風に飛ばされるところでした。
「本当に風が強いんだな」
お父さん鼠は風に自分の娘の婿になることをせがみました。
すると風は、「それは間違ってるよ、俺は家と木を倒し、山と海を揺るがすことはできるが、野原に立っている石像だけは倒せない、だから俺より石像のところにでも行ってみてね」

お父さん鼠は石像のところへ走っていきました。
お父さん鼠の話を聞いた石像は静かにつぶやきました。
「私は強い風が吹いてもしっかりと千年万年立っていることはできても、鼠が怖くていつもびくびくしてるんだよ、鼠が足元を掘り返したらその場に倒れるしかないからね、ですから私より強い鼠のところにでも行くんだね」
（俺らの野鼠が一番強いということだな、だったら、野鼠のなかから婿を選ばなきゃ）
お父さん鼠は踵を返して家に戻りました。

家では、お母さん鼠が今か今かとお父さん鼠を待っていました。
お父さん鼠はお母さん鼠に婿を選んだ話をしました。
「いくら言ったって、この世で一番立派なのは私たちのような野鼠なんだよ」

あくる日、隣に住む野鼠のチョンガー*1がお見合いに来ました。
その後、野鼠の夫婦は隣のチョンガー鼠を婿に迎え入れて、末長く、仲良く暮らしたとのことです。

（コンテンツ―本）