長編小説「15少年物語」（6） をテンプレートにして作成
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*長編小説「15少年物語」（6） [#xd23f5d1]
金剛丸に小鳥が止まってから、10日目の朝だった。 晴天だった...
デッキに立って、心配そうに海を見つめていた成哲は、遠くに...
「あっ、島だ」
成哲は思わず歓声をあげた。その声が船室にも聞こえて、みな...
成哲が指さす方向に目をやったかれらは、こおどりして喜んだ...
1ヵ月このかた、大波と黒い雲と太い雨あしばかり見てきたかれ...
成哲は涙が出るほどうれしかった。みなが苦しむ姿を見ても、...
しかし、船は島の方に向かわなかった。放っておけば、また遠...
「おい、みんな、ろをこげよ」
万洙はあわてて、ともの方へ走って行った。
成哲と茂漢ははじかれたように、ろの方へ飛んで行った。徳善...
かれらは力いっぱいろをこぎ、万洙はかじを強く握った。金剛...
最初は1つしか見えなかった峰が、やがていくつものとがった頂...
「島だ。島・・・」&br;
「助かったぞ」&br;
「船よ、早く走れ、早く」
小さい子らはかん高い叫び声をあげながら、手をうち、足を踏...
万洙はかたく口を結んで、しっかりとかじを取り、少年たちは...
島と船のへだたりは、だんだんせばまった。船はさっきより高...
（船がこわれないように、島につけなければ）
万洙は全身の神経をかじに集中した。
ろを達柱に渡した茂漢は、落ちつかない気持で岸べを見つめて...
みんなを乗せて帰る船をこわしてはいけない、という思いで、...
（絶対に船をこわしちゃいけないんだ）
かれは上着を脱ぎ捨てた。そして、「船を岸につけるなよっ」...
手に汗を握って見守っていた子どもたちは、黒い頭が見えるた...
高く突きでた岩の前で頭が浮かんだ。綱を岩にかけるつもりだ...
茂漢は岩の上にはいあがり、綱をかけようとしたが、やりそこ...
茂漢が綱をゆわえようとした瞬間、波が岩に荒々しくうちつけ...
「あっ」
子どもたちがかたずをのんで一点に目をこらしていたとき、誰...
成哲だった。茂漢が端をつかんで行ったいかり綱をわきの下に...
万洙は船を再び島の正面に向けようとして、かじをまわしたが...
「成哲」&br;
「茂漢」&br;
「兄ちゃーん」
みんなは足ずりし、のどをからして叫んだ。その声は激しい波...
万洙は、茂漢を救うため成哲より先に、海に飛びこまなかった...
万洙は2人の名を呼びながら泣いた。かれらを失えば、この恐ろ...
「あっ、見えたっ」
子どもたちがいっせいに叫んだ。見ると、黒い頭が2つ、高く突...
「その立岩に巻きつけろっ」
みんな大きな声でどなった。
成哲はいかり綱の端をつかんで、すばやく岩を一まわりしてよ...
「わーい、助かったぞー」
成哲はふらつく足を踏みしめて茂漢に近寄り、肩を抱いた。茂...
成哲は、重心を失って倒れそうになる茂漢をかかえて陸にのぼ...
茂漢は身動き1つしなかった。成哲も、大きなおもしが両肩にの...
一方、船の上では万洙が、岩につないであるいかり綱をつかん...
「みんなこっちへ来い。船を少しでも島に近づけるんだ」
少年たちは力いっぱい綱を引っ張った。しかし暗礁に乗りあげ...
このとき、背負い袋を取りに船室へ行った永洙が、駆け戻って...
「船が割れちゃったよ」&br;
「このほら吹きめ。船も割れるのか」
文基が馬鹿にしたように言った。
「うそだと思ったら行ってみろ。水がドクドク入ってくるんだ...
永沫も負けようとしなかつた。
「なにが割れたんだ」
万洙がやって来ながら、せきこんでたずねた。
「永洙がね、船が割れたってうそつくんだよ」&br;
「うそなもんか。ほんとうなんだ」
永洙は目をむいて言った。
ぎくりとした万洙は、永洙と一緒に船室に駆けおりた。デッキ...
「大変だ。早く荷物を上に運びだせ」
万洙は、散らばっている食器を箱につめてデッキに運び、つづ...
「達柱、ぐずぐずしないで早くやれよ」
万洙にどやされた達柱は、眉をしかめて水おけに手をかけたが...
「どくんだ、能なしのノッポめ。お前はこれを持って行け」
徳善がたこつぼを渡した。
「誰かおれの箱めがねと、風呂敷包みを見なかったか」
基昌がうろうろしながら、聞いてまわった。
「自分のものだけ運ぶつもりなのか。これを持って行けよ」
俊浩が、やすの束と斧を指さした。基昌はまだ自分の持物を探...
「早く運んで行って、また来るんだぞ」&br;
「この針金の束を、かつがせてくれよ」
京三が俊浩に背中を向けて言った。
自分の背負い袋がなくなった、とべそをかいている永洙に、勇...
「なんて泣き虫だ、お前は。おれが上に運んでおいたから安心...
船室の荷物はほとんどデッキに移され、穀物だわらと水おけが...
荷物を運んでいた万洙が言った。
「荷物よりか、チビたちを先に島へ送ろう」&br;
「それがいい」
昌植が賛成した。
波は休みなくおし寄せてはいそべにうち返し、船室はどんどん...
万洙はデッキで、途方にくれ、右往左往している子どもたちを...
「チビと女の子から先に島へ渡れ。お前たち、手ぶらで行くん...
小さい子と女の子らは、綱をつかんで1人ひとり用心深くおりた...
「おれたちも早くおりなきゃ」
昌植に注意されて、万洙はわれにかえった。
「そうだ、早くおりよう」
少年たちはみな荷物をかついでいた。自分の荷物だけでなく、...
岩かげの草むらにぐったりと倒れていた成哲は、船がこわれた...
「危いぞ。こっちへ来るなっ」
万洙と昌植が両手を口にあてて叫んだ。成哲はそれには耳もか...
「穴のあいたところを、板かなんかでふさげないのか」&br;
「穴があいたんじゃなくて、船の底が割れちゃったんだ」
万洙はしょげこんで答えた。
船室に駆けおりてみると、水が足首までつかり、それもどんど...
成哲は胸がひきつった。手さぐりすると、大きな割れ目から水...
それはとうていふさぎようがなかった。目の前が真っ暗になっ...
万洙が上から叫んだ。
「なにをしてるんだ。早くあがって来いよ。もうだめだ。船が...
この浸水では沈没するほかないが、それでも万洙の一言を聞く...
（このまま沈んでしまうというのか）
成哲は歩く気力を失って、ぼんやりと船室を見まわした。水中...
「せっかく持って来たのに」
成哲は急いで拾い集めて、デッキに戻った。
「船が完全にこわれちゃったな。どうしてこんなことになった...
「さつきいかり綱を岩に結びつけるとき、大きな音がしたけど...
「荷物は全部島に運んだろうな」
成哲に聞かれて、万洙はどぎまぎした。船室にはまだ大事なも...
「運べるものはほとんど運んだよ。もうこの釜だけ持って行け...
「じゃ、早くおりよう」
3つの釜も無事に島に運ばれた。
少年たちは、これで一難去ったと思うと、急に疲れが出た。で...
船から運ばれた荷物を見まわしていた成哲が、驚いたように叫...
「荷物は全部でこれっきりか」
問いただすような視線を受けて、万洙は顔がほてった。
「穀物だわらもないし、水おけもないじゃないか。それに網は...
誰も答える者がなかった。ちょっとまをおいて、万洗か消え入...
「船室にそのままあるんだ」&br;
「なんだって？ 水やごはんを食べなくても、生きてゆけると...
成哲は興奮していた。重苦しい雰囲気に気がめいった茂英は、...
自分をとりかこんでいる少年や荷物を見て、正気をとり戻した...
「船がこわれたのか」
茂漢ははじかれたように立ちあがったが、誰も答えなかった。...
成哲は倒れそうになるかれを抱きかかえたが、茂漢はへなへな...
「もう家にも帰れなくなった。なにもかもおしまいだ」
茂漢は声をたてて泣いた。茂英も両手で顔をおおって、しゃく...
端の方で泣きべそをかいていた永洙が、とうとう「母ちゃん、...
成哲と万洙のほおにも、涙がつたっていた。
船は沈んで帆柱だけ見えた。みなをなぐさめ元気づけなければ...
2羽の力モメが帆柱の上を飛びかっていた。風に吹かれて木の葉...
成哲は気を取り直して、涙をぬぐった。
「みんな涙をふけよ。いくら泣いたってしかたがない。なんと...
少年たちは1人、2人と泣きやんだ。
「さっきは腹を立てて悪かった。みんな疲れてるだろうけど、...
「どうやって引きあげるんだい」
達柱が聞いた。
「ここに綱があるだろう。この端を腰に結んで船室にもぐりこ...
「それはいい思いつきだ。それなら8人はいらないよ。おれ2回...
昌植がこう言うと、「それじゃおれも2回行くよ」と、負けん気...
「じゃ、おれたち4人でやろう。おれだってお前たちぐらいはも...
「よし、おれが先に帆をはずして来る」
成哲はすばやく腰に綱を巻きつけた。
「帆はおれにまかせて、お前はほかのものを引きあげろよ」
万殊が言い終わらないうちに、成哲はもう海に飛びこんでいた...
沈没した金剛丸に泳ぎついた成哲は、水面に突きでた帆柱を片...
「どうしたんだろう」&br;
「こっちで先に合図してみようか」
こんなささやきが交わされたとき、合図があった。手に汗を握...
「よせと言ったのに、結局隊長が帆をはずして来たわけだ」&br;
「合図がないので、すごく心配したよ」&br;
「一休みしろよ。今度はおれが行って来る」
昌植が、成哲の腰の綱をほどいて、自分の腰に結んだ。
こうして船に残っていた帆や穀物、水おけ、網が成哲ら4人の手...
いつしか太陽は、水平線の向こうに沈もうとしていた。子ども...
「みんなずいぶん苦労したな。でも15人が全部無事に島にあが...
異議をはさむ者は1人もいなかった。
「じゃ、火をたいて服を乾かそう。そして、夕食をつくって食...
成哲は元気よく立ちあがる子たちを、満足そうにながめた。
（芸術）
RIGHT:'''2020年の記事'''
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//（芸術 2020.08.09）
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*長編小説「15少年物語」（6） [#xd23f5d1]
金剛丸に小鳥が止まってから、10日目の朝だった。 晴天だった...
デッキに立って、心配そうに海を見つめていた成哲は、遠くに...
「あっ、島だ」
成哲は思わず歓声をあげた。その声が船室にも聞こえて、みな...
成哲が指さす方向に目をやったかれらは、こおどりして喜んだ...
1ヵ月このかた、大波と黒い雲と太い雨あしばかり見てきたかれ...
成哲は涙が出るほどうれしかった。みなが苦しむ姿を見ても、...
しかし、船は島の方に向かわなかった。放っておけば、また遠...
「おい、みんな、ろをこげよ」
万洙はあわてて、ともの方へ走って行った。
成哲と茂漢ははじかれたように、ろの方へ飛んで行った。徳善...
かれらは力いっぱいろをこぎ、万洙はかじを強く握った。金剛...
最初は1つしか見えなかった峰が、やがていくつものとがった頂...
「島だ。島・・・」&br;
「助かったぞ」&br;
「船よ、早く走れ、早く」
小さい子らはかん高い叫び声をあげながら、手をうち、足を踏...
万洙はかたく口を結んで、しっかりとかじを取り、少年たちは...
島と船のへだたりは、だんだんせばまった。船はさっきより高...
（船がこわれないように、島につけなければ）
万洙は全身の神経をかじに集中した。
ろを達柱に渡した茂漢は、落ちつかない気持で岸べを見つめて...
みんなを乗せて帰る船をこわしてはいけない、という思いで、...
（絶対に船をこわしちゃいけないんだ）
かれは上着を脱ぎ捨てた。そして、「船を岸につけるなよっ」...
手に汗を握って見守っていた子どもたちは、黒い頭が見えるた...
高く突きでた岩の前で頭が浮かんだ。綱を岩にかけるつもりだ...
茂漢は岩の上にはいあがり、綱をかけようとしたが、やりそこ...
茂漢が綱をゆわえようとした瞬間、波が岩に荒々しくうちつけ...
「あっ」
子どもたちがかたずをのんで一点に目をこらしていたとき、誰...
成哲だった。茂漢が端をつかんで行ったいかり綱をわきの下に...
万洙は船を再び島の正面に向けようとして、かじをまわしたが...
「成哲」&br;
「茂漢」&br;
「兄ちゃーん」
みんなは足ずりし、のどをからして叫んだ。その声は激しい波...
万洙は、茂漢を救うため成哲より先に、海に飛びこまなかった...
万洙は2人の名を呼びながら泣いた。かれらを失えば、この恐ろ...
「あっ、見えたっ」
子どもたちがいっせいに叫んだ。見ると、黒い頭が2つ、高く突...
「その立岩に巻きつけろっ」
みんな大きな声でどなった。
成哲はいかり綱の端をつかんで、すばやく岩を一まわりしてよ...
「わーい、助かったぞー」
成哲はふらつく足を踏みしめて茂漢に近寄り、肩を抱いた。茂...
成哲は、重心を失って倒れそうになる茂漢をかかえて陸にのぼ...
茂漢は身動き1つしなかった。成哲も、大きなおもしが両肩にの...
一方、船の上では万洙が、岩につないであるいかり綱をつかん...
「みんなこっちへ来い。船を少しでも島に近づけるんだ」
少年たちは力いっぱい綱を引っ張った。しかし暗礁に乗りあげ...
このとき、背負い袋を取りに船室へ行った永洙が、駆け戻って...
「船が割れちゃったよ」&br;
「このほら吹きめ。船も割れるのか」
文基が馬鹿にしたように言った。
「うそだと思ったら行ってみろ。水がドクドク入ってくるんだ...
永沫も負けようとしなかつた。
「なにが割れたんだ」
万洙がやって来ながら、せきこんでたずねた。
「永洙がね、船が割れたってうそつくんだよ」&br;
「うそなもんか。ほんとうなんだ」
永洙は目をむいて言った。
ぎくりとした万洙は、永洙と一緒に船室に駆けおりた。デッキ...
「大変だ。早く荷物を上に運びだせ」
万洙は、散らばっている食器を箱につめてデッキに運び、つづ...
「達柱、ぐずぐずしないで早くやれよ」
万洙にどやされた達柱は、眉をしかめて水おけに手をかけたが...
「どくんだ、能なしのノッポめ。お前はこれを持って行け」
徳善がたこつぼを渡した。
「誰かおれの箱めがねと、風呂敷包みを見なかったか」
基昌がうろうろしながら、聞いてまわった。
「自分のものだけ運ぶつもりなのか。これを持って行けよ」
俊浩が、やすの束と斧を指さした。基昌はまだ自分の持物を探...
「早く運んで行って、また来るんだぞ」&br;
「この針金の束を、かつがせてくれよ」
京三が俊浩に背中を向けて言った。
自分の背負い袋がなくなった、とべそをかいている永洙に、勇...
「なんて泣き虫だ、お前は。おれが上に運んでおいたから安心...
船室の荷物はほとんどデッキに移され、穀物だわらと水おけが...
荷物を運んでいた万洙が言った。
「荷物よりか、チビたちを先に島へ送ろう」&br;
「それがいい」
昌植が賛成した。
波は休みなくおし寄せてはいそべにうち返し、船室はどんどん...
万洙はデッキで、途方にくれ、右往左往している子どもたちを...
「チビと女の子から先に島へ渡れ。お前たち、手ぶらで行くん...
小さい子と女の子らは、綱をつかんで1人ひとり用心深くおりた...
「おれたちも早くおりなきゃ」
昌植に注意されて、万洙はわれにかえった。
「そうだ、早くおりよう」
少年たちはみな荷物をかついでいた。自分の荷物だけでなく、...
岩かげの草むらにぐったりと倒れていた成哲は、船がこわれた...
「危いぞ。こっちへ来るなっ」
万洙と昌植が両手を口にあてて叫んだ。成哲はそれには耳もか...
「穴のあいたところを、板かなんかでふさげないのか」&br;
「穴があいたんじゃなくて、船の底が割れちゃったんだ」
万洙はしょげこんで答えた。
船室に駆けおりてみると、水が足首までつかり、それもどんど...
成哲は胸がひきつった。手さぐりすると、大きな割れ目から水...
それはとうていふさぎようがなかった。目の前が真っ暗になっ...
万洙が上から叫んだ。
「なにをしてるんだ。早くあがって来いよ。もうだめだ。船が...
この浸水では沈没するほかないが、それでも万洙の一言を聞く...
（このまま沈んでしまうというのか）
成哲は歩く気力を失って、ぼんやりと船室を見まわした。水中...
「せっかく持って来たのに」
成哲は急いで拾い集めて、デッキに戻った。
「船が完全にこわれちゃったな。どうしてこんなことになった...
「さつきいかり綱を岩に結びつけるとき、大きな音がしたけど...
「荷物は全部島に運んだろうな」
成哲に聞かれて、万洙はどぎまぎした。船室にはまだ大事なも...
「運べるものはほとんど運んだよ。もうこの釜だけ持って行け...
「じゃ、早くおりよう」
3つの釜も無事に島に運ばれた。
少年たちは、これで一難去ったと思うと、急に疲れが出た。で...
船から運ばれた荷物を見まわしていた成哲が、驚いたように叫...
「荷物は全部でこれっきりか」
問いただすような視線を受けて、万洙は顔がほてった。
「穀物だわらもないし、水おけもないじゃないか。それに網は...
誰も答える者がなかった。ちょっとまをおいて、万洗か消え入...
「船室にそのままあるんだ」&br;
「なんだって？ 水やごはんを食べなくても、生きてゆけると...
成哲は興奮していた。重苦しい雰囲気に気がめいった茂英は、...
自分をとりかこんでいる少年や荷物を見て、正気をとり戻した...
「船がこわれたのか」
茂漢ははじかれたように立ちあがったが、誰も答えなかった。...
成哲は倒れそうになるかれを抱きかかえたが、茂漢はへなへな...
「もう家にも帰れなくなった。なにもかもおしまいだ」
茂漢は声をたてて泣いた。茂英も両手で顔をおおって、しゃく...
端の方で泣きべそをかいていた永洙が、とうとう「母ちゃん、...
成哲と万洙のほおにも、涙がつたっていた。
船は沈んで帆柱だけ見えた。みなをなぐさめ元気づけなければ...
2羽の力モメが帆柱の上を飛びかっていた。風に吹かれて木の葉...
成哲は気を取り直して、涙をぬぐった。
「みんな涙をふけよ。いくら泣いたってしかたがない。なんと...
少年たちは1人、2人と泣きやんだ。
「さっきは腹を立てて悪かった。みんな疲れてるだろうけど、...
「どうやって引きあげるんだい」
達柱が聞いた。
「ここに綱があるだろう。この端を腰に結んで船室にもぐりこ...
「それはいい思いつきだ。それなら8人はいらないよ。おれ2回...
昌植がこう言うと、「それじゃおれも2回行くよ」と、負けん気...
「じゃ、おれたち4人でやろう。おれだってお前たちぐらいはも...
「よし、おれが先に帆をはずして来る」
成哲はすばやく腰に綱を巻きつけた。
「帆はおれにまかせて、お前はほかのものを引きあげろよ」
万殊が言い終わらないうちに、成哲はもう海に飛びこんでいた...
沈没した金剛丸に泳ぎついた成哲は、水面に突きでた帆柱を片...
「どうしたんだろう」&br;
「こっちで先に合図してみようか」
こんなささやきが交わされたとき、合図があった。手に汗を握...
「よせと言ったのに、結局隊長が帆をはずして来たわけだ」&br;
「合図がないので、すごく心配したよ」&br;
「一休みしろよ。今度はおれが行って来る」
昌植が、成哲の腰の綱をほどいて、自分の腰に結んだ。
こうして船に残っていた帆や穀物、水おけ、網が成哲ら4人の手...
いつしか太陽は、水平線の向こうに沈もうとしていた。子ども...
「みんなずいぶん苦労したな。でも15人が全部無事に島にあが...
異議をはさむ者は1人もいなかった。
「じゃ、火をたいて服を乾かそう。そして、夕食をつくって食...
成哲は元気よく立ちあがる子たちを、満足そうにながめた。
（芸術）
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//（芸術 2020.08.09）
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