長編小説「15少年物語」（5） をテンプレートにして作成
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*長編小説「15少年物語」（5） [#nc6eaa77]
キンヨウル村の子どもたちが漂流しはじめて、半月がたった。
激しい風雨と荒波に鍛えられて、しだいに船酔いにも慣れ、揺...
しかし、船は方向を見失い、どこまで流されたか知りようがな...
しかし、さすがの嵐も、ある日の夜明けごろから勢いがおとろ...
水をくみだしていた万洙や茂漢、徳善らが、船べりに並んで、...
「くたびれたろう。おりて行って休めよ」
昌植、俊浩と一緒に交替しに来た成哲が言った。
「どうしてこんなに早く出て来たんだ。今夜は水が少なくて楽...
茂漢が答えた。
「楽なわけがあるもんか。さあ、早く休めよ」
成哲が茂漢の洗面器をひったくり、ほかの2人も交替した。
「じゃ、ひと休みしよう」
徳善と茂漢は船室へ引きあげ、万洙はほおづえをついて、夜明...
「行かないのか。少しは寝なくちゃ」
俊浩が言った。
「きょうはどうしてだか、寝る気がしないんだ。北極星が見え...
「雨がやんで星まで出るなんて、まるで夢みたいだなあ」
俊浩の顔に微笑が浮かんだ。
「風も少しないだようじゃないか」
昌植が大またで、万洙に近寄りながら言った。
「でもまだ安心はできないよ。陸に近いのは確かだけど。この...
万洙がミユビシギをさしだした。
「やあこれ、どこでつかまえたんだ」
俊浩が喜んで、小鳥を手に取った。
「さっき船に何羽か飛んで来たんだ」&br;
「へえ。でもよくつかまえたなあ」
俊浩は注意深く鳥を見た。うす暗いのでよくは見えないが、背...
「これ片輪じゃないのか」&br;
「どうしてだい」&br;
「指が前に3本あるだけで、うしろにはないんだ」&br;
「そんな小鳥もあるのさ。ミフウズラだってそうだ」&br;
「よし、もう1羽つかまえよう。船にたくさん止まってるんだ」
万洙は足音をしのばせて鳥に近づき、なんなく前のと同じ鳥を...
「こいつの足もそうだよ。おもしろい鳥だな」
俊浩は2羽の小鳥を手のひらに乗せたが、飛ぼうとしなかった。...
「小鳥が好きなくせに、どうして放してやったんだ。お前にや...
「かわいそうじゃないか。この鳥は飼いならされておとなしい...
「なるほどね」
俊浩は、デッキにちょこんと止まっている小鳥を見つめていた...
「お前らは船にあえて助かったと、喜んでるだろうな。きょう...
小鳥と話しあうようなその言葉に、誰もが同じ思いをしていた。
しばらく沈黙が流れた。
「小鳥が飛んで来るのを見ると、近くに島か陸地があるらしい...
万洙が沈黙を破った。
「こんなに遠く流されたんだから、島か陸地に出あっても手放...
昌植がため息まじりに言った。
「だけどいつまでも海で暮らすわけにはいかないだろう。風さ...
万洙は力なく言って空に目をやった。
「あっ、北極星だっ」
万洙が目を輝かせて叫んだ。
「どれが、北極星だ」&br;
「ほら、あそこに見える星、あれが北極星だ。海ではあの星を...
万洙は俊浩に、指で北極星を示した。
「どうしてそれが、北極星だってわかるんだい」&br;
「筒単だよ。あそこに北斗七星があるだろう。ほら、あの7つの...
「北斗七星ならおれも知ってる」&br;
「北斗七星を探せば、北極星はすぐ見つかるんだ。北斗七星の...
「そうか。だからこの船はいま、東北方に流れてるわけだな」&...
「そうだよ」
万洙は目で笑った。
「じゃ、いまおれたちが、村からどのくらい離れているか、は...
「さあね。船乗りなら、わかるかもしれないけど…」
子どもたちは黙って北極星をながめた。
「こんなとき、大きな汽船が汽笛を鳴らしながら、おれたちの...
俊浩は、黒ぐろとした海のかなたを見やって、つぶやいた。
「もういい天気になりそうだから、汽船が見えるかもしれない...
昌植が相づちをうった。
いまにも汽船があらわれそうな気がして、みな並んで海を見渡...
「こんなとき、月が出るといいんだがなあ」
万洙が空を見あげて言った。
「もう寝るのに、月なんか出ても出なくっても、同じじゃない...
「星が見えるから、寝たくないんだ。みんなを起こして、星を...
「よせよ。くたくたになって寝入ってるのに、わざわざ起こす...
成哲のもっともな言葉に、万洙はうなずき、黙って星空に見と...
「村では、おれたちのことで大騒ぎしてるだろうな」
俊浩がしんみりと言った。
「きっと、みんな死んだと思ってるだろうよ」&br;
「ずいぶん、泣いたり騒いだりしてるだろうな」&br;
「おれたちがひょっこり帰ったら、どんなに喜ぶことだろう」&...
「母さんたちはいまも、船着き場に立って、海を見つめている...
子どもたちの思いは、故郷の空に飛んでいた。
「そんな話はもうよそうよ。涙が出てしょうがないや」
こう言う成哲の目には、露が光っていた。かれはそれをぬぐお...
成哲はこの半月のあいだ、村や家のことをおくびにも出さなか...
成哲は母と2人で暮らしていた。半農半漁で暮らしを立てていた...
それ以来、母は女の細腕で生計をやりくりし、学費も工面しな...
「母ちゃん、もう寝ようよ」
成哲が起き直って、目をこすりながら言っても、母は横になろ...
「母さんのことは心配しないでお眠り。これを仕上げないと、...
こうしたなかで、成哲は6年生になったのである。
（母さんはいまも、おれのこと思って泣いてるだろうな）
ふと人の気配がして、茂漢が姿を見せた。
「どうして寝ないで、出て来たんだ」&br;
「どうにも寝つかれないんだ」
茂漢はふうっとため息をついた。
「また、お父さんのことを心配してるんだな」&br;
「うん。おれ本当に馬鹿なことをしたよ。父さんはきっと巡査...
「お父さんになんの罪があるって言うんだ」&br;
「罪がないって？ 父さんは船主の目を盗んで、船を貸してく...
「船主がどんなに悪どいやつかは、おれの方がよく知ってるつ...
万洙がみなを見まわして言った。
「うちではな、あいつから借りたお金のかたに家をとられ、乞...
「ほんとうだ。金剛丸はちゃんと海に浮かんでいるのに、向こ...
茂漢はそでで涙をぬぐった。
沈黙が流れ、波音だけが聞こえていた。
「ここでいくらくよくよしたって、はじまらない。あんまり心...
成哲のいたわるような口調に、茂漢はうるんだ目をあげた。
「そりゃそうさ。でも、心配しないわけにいかないじゃないか...
「それはお前のせいじゃない。嵐にあつたからさ。過ぎたこと...
「この恐ろしい波に勝てるだろうか」&br;
「いままでもちこたえたんだから、これからも力をあわせて、...
「わかった。お前の話を聞いて、いくらか気が楽になったよ」
茂漢の目に生気がよみがえった。
やがて東の空が白みはじめた。闇につつまれていた地球が、背...
「まだ時間があるからすこし休めよ。日が出るとき、起こして...
成哲は万洙と茂漢を押すようにして、船室に送りこんだ。そし...
成哲はその瞬間を待ちわびた。
ところが急に霧がかかりはじめ、それはみるみる空をおおいつ...
アル島の近くでしけにあったときは、こんなに長いあいだ嵐が...
一時は、「どうせこうなったからには、海のはてまで行ってみ...
東海のはてまで来たのではないかと、不安でならなかった。い...
風がまだやまず、波もいっこうに衰えをみせないので、暗礁に...
成哲は身ぶるいした。
みなを起こして日の出を迎えようという希望は、船ベりにうち...
万洙がまた出て来た。
「どうしてこんなに眠れないんだろう」
かれはつぶやくように言うなり、はっとして立ちすくんだ。
「やあ、大変だ。いつこんなに霧がかかったんだ」&br;
「ついさっきからなんだ」&br;
「陸地に近かったら暗礁があるはずだ」
万洙はともへ行って、そのあいだ放っておいたかじを取った。
「どうも前ぶれがよくないぞ」
かれは視野のきかない濃霧の中で、遠くを見はるかすように目...
昼ごろになって霧がうすれ、空はからりと晴れた。だが青黒か...
（ひょっとすると、おじいさんがよく言っていた、亡霊の海じ...
こう思ったが、口には出さなかった。
（芸術）
RIGHT:'''2020年の記事'''
#br
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#include(boys_navi,notitle)
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#include(vok_navi01,notitle)
//（芸術 2020.08.04）
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*長編小説「15少年物語」（5） [#nc6eaa77]
キンヨウル村の子どもたちが漂流しはじめて、半月がたった。
激しい風雨と荒波に鍛えられて、しだいに船酔いにも慣れ、揺...
しかし、船は方向を見失い、どこまで流されたか知りようがな...
しかし、さすがの嵐も、ある日の夜明けごろから勢いがおとろ...
水をくみだしていた万洙や茂漢、徳善らが、船べりに並んで、...
「くたびれたろう。おりて行って休めよ」
昌植、俊浩と一緒に交替しに来た成哲が言った。
「どうしてこんなに早く出て来たんだ。今夜は水が少なくて楽...
茂漢が答えた。
「楽なわけがあるもんか。さあ、早く休めよ」
成哲が茂漢の洗面器をひったくり、ほかの2人も交替した。
「じゃ、ひと休みしよう」
徳善と茂漢は船室へ引きあげ、万洙はほおづえをついて、夜明...
「行かないのか。少しは寝なくちゃ」
俊浩が言った。
「きょうはどうしてだか、寝る気がしないんだ。北極星が見え...
「雨がやんで星まで出るなんて、まるで夢みたいだなあ」
俊浩の顔に微笑が浮かんだ。
「風も少しないだようじゃないか」
昌植が大またで、万洙に近寄りながら言った。
「でもまだ安心はできないよ。陸に近いのは確かだけど。この...
万洙がミユビシギをさしだした。
「やあこれ、どこでつかまえたんだ」
俊浩が喜んで、小鳥を手に取った。
「さっき船に何羽か飛んで来たんだ」&br;
「へえ。でもよくつかまえたなあ」
俊浩は注意深く鳥を見た。うす暗いのでよくは見えないが、背...
「これ片輪じゃないのか」&br;
「どうしてだい」&br;
「指が前に3本あるだけで、うしろにはないんだ」&br;
「そんな小鳥もあるのさ。ミフウズラだってそうだ」&br;
「よし、もう1羽つかまえよう。船にたくさん止まってるんだ」
万洙は足音をしのばせて鳥に近づき、なんなく前のと同じ鳥を...
「こいつの足もそうだよ。おもしろい鳥だな」
俊浩は2羽の小鳥を手のひらに乗せたが、飛ぼうとしなかった。...
「小鳥が好きなくせに、どうして放してやったんだ。お前にや...
「かわいそうじゃないか。この鳥は飼いならされておとなしい...
「なるほどね」
俊浩は、デッキにちょこんと止まっている小鳥を見つめていた...
「お前らは船にあえて助かったと、喜んでるだろうな。きょう...
小鳥と話しあうようなその言葉に、誰もが同じ思いをしていた。
しばらく沈黙が流れた。
「小鳥が飛んで来るのを見ると、近くに島か陸地があるらしい...
万洙が沈黙を破った。
「こんなに遠く流されたんだから、島か陸地に出あっても手放...
昌植がため息まじりに言った。
「だけどいつまでも海で暮らすわけにはいかないだろう。風さ...
万洙は力なく言って空に目をやった。
「あっ、北極星だっ」
万洙が目を輝かせて叫んだ。
「どれが、北極星だ」&br;
「ほら、あそこに見える星、あれが北極星だ。海ではあの星を...
万洙は俊浩に、指で北極星を示した。
「どうしてそれが、北極星だってわかるんだい」&br;
「筒単だよ。あそこに北斗七星があるだろう。ほら、あの7つの...
「北斗七星ならおれも知ってる」&br;
「北斗七星を探せば、北極星はすぐ見つかるんだ。北斗七星の...
「そうか。だからこの船はいま、東北方に流れてるわけだな」&...
「そうだよ」
万洙は目で笑った。
「じゃ、いまおれたちが、村からどのくらい離れているか、は...
「さあね。船乗りなら、わかるかもしれないけど…」
子どもたちは黙って北極星をながめた。
「こんなとき、大きな汽船が汽笛を鳴らしながら、おれたちの...
俊浩は、黒ぐろとした海のかなたを見やって、つぶやいた。
「もういい天気になりそうだから、汽船が見えるかもしれない...
昌植が相づちをうった。
いまにも汽船があらわれそうな気がして、みな並んで海を見渡...
「こんなとき、月が出るといいんだがなあ」
万洙が空を見あげて言った。
「もう寝るのに、月なんか出ても出なくっても、同じじゃない...
「星が見えるから、寝たくないんだ。みんなを起こして、星を...
「よせよ。くたくたになって寝入ってるのに、わざわざ起こす...
成哲のもっともな言葉に、万洙はうなずき、黙って星空に見と...
「村では、おれたちのことで大騒ぎしてるだろうな」
俊浩がしんみりと言った。
「きっと、みんな死んだと思ってるだろうよ」&br;
「ずいぶん、泣いたり騒いだりしてるだろうな」&br;
「おれたちがひょっこり帰ったら、どんなに喜ぶことだろう」&...
「母さんたちはいまも、船着き場に立って、海を見つめている...
子どもたちの思いは、故郷の空に飛んでいた。
「そんな話はもうよそうよ。涙が出てしょうがないや」
こう言う成哲の目には、露が光っていた。かれはそれをぬぐお...
成哲はこの半月のあいだ、村や家のことをおくびにも出さなか...
成哲は母と2人で暮らしていた。半農半漁で暮らしを立てていた...
それ以来、母は女の細腕で生計をやりくりし、学費も工面しな...
「母ちゃん、もう寝ようよ」
成哲が起き直って、目をこすりながら言っても、母は横になろ...
「母さんのことは心配しないでお眠り。これを仕上げないと、...
こうしたなかで、成哲は6年生になったのである。
（母さんはいまも、おれのこと思って泣いてるだろうな）
ふと人の気配がして、茂漢が姿を見せた。
「どうして寝ないで、出て来たんだ」&br;
「どうにも寝つかれないんだ」
茂漢はふうっとため息をついた。
「また、お父さんのことを心配してるんだな」&br;
「うん。おれ本当に馬鹿なことをしたよ。父さんはきっと巡査...
「お父さんになんの罪があるって言うんだ」&br;
「罪がないって？ 父さんは船主の目を盗んで、船を貸してく...
「船主がどんなに悪どいやつかは、おれの方がよく知ってるつ...
万洙がみなを見まわして言った。
「うちではな、あいつから借りたお金のかたに家をとられ、乞...
「ほんとうだ。金剛丸はちゃんと海に浮かんでいるのに、向こ...
茂漢はそでで涙をぬぐった。
沈黙が流れ、波音だけが聞こえていた。
「ここでいくらくよくよしたって、はじまらない。あんまり心...
成哲のいたわるような口調に、茂漢はうるんだ目をあげた。
「そりゃそうさ。でも、心配しないわけにいかないじゃないか...
「それはお前のせいじゃない。嵐にあつたからさ。過ぎたこと...
「この恐ろしい波に勝てるだろうか」&br;
「いままでもちこたえたんだから、これからも力をあわせて、...
「わかった。お前の話を聞いて、いくらか気が楽になったよ」
茂漢の目に生気がよみがえった。
やがて東の空が白みはじめた。闇につつまれていた地球が、背...
「まだ時間があるからすこし休めよ。日が出るとき、起こして...
成哲は万洙と茂漢を押すようにして、船室に送りこんだ。そし...
成哲はその瞬間を待ちわびた。
ところが急に霧がかかりはじめ、それはみるみる空をおおいつ...
アル島の近くでしけにあったときは、こんなに長いあいだ嵐が...
一時は、「どうせこうなったからには、海のはてまで行ってみ...
東海のはてまで来たのではないかと、不安でならなかった。い...
風がまだやまず、波もいっこうに衰えをみせないので、暗礁に...
成哲は身ぶるいした。
みなを起こして日の出を迎えようという希望は、船ベりにうち...
万洙がまた出て来た。
「どうしてこんなに眠れないんだろう」
かれはつぶやくように言うなり、はっとして立ちすくんだ。
「やあ、大変だ。いつこんなに霧がかかったんだ」&br;
「ついさっきからなんだ」&br;
「陸地に近かったら暗礁があるはずだ」
万洙はともへ行って、そのあいだ放っておいたかじを取った。
「どうも前ぶれがよくないぞ」
かれは視野のきかない濃霧の中で、遠くを見はるかすように目...
昼ごろになって霧がうすれ、空はからりと晴れた。だが青黒か...
（ひょっとすると、おじいさんがよく言っていた、亡霊の海じ...
こう思ったが、口には出さなかった。
（芸術）
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//（芸術 2020.08.04）
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