長編小説「15少年物語」（41） をテンプレートにして作成
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*長編小説「15少年物語」（41） [#bd2626d0]
昌植がいまに東北の季節風が吹くと言ったのはうそでなかった...
塩づけにした獣肉や魚、そしてワカメや山菜のほかにシロクマ...
「季節風って、しけのとき吹いた意地悪の風とは違うのかい」
勇日がにこにこして、昌植に聞いた。
「季節風はあんなに強く吹かないんだ。それに、いまは雨がた...
「じゃ、船をうしろから押してくれるいい風なんだな」
永洙が手をたたいて喜んだ。
16人の少年は船に乗りこんだ。
みな、茂英たちが洗って火のしをかけた服に着かえており、そ...
「これ、達柱の帽子だろう」
永洙から、つばの取れた麦わら帽を渡された達柱は、「こいつ...
「どうして捨てるんだい。かぶったら、なんかみたいで格好い...
京三が鼻にしわをよせて、おどけて見せた。
「もう、一年前のおれじゃないんだぞ」
茂漢はクスッと笑った。キンヨウルを発つとき、麦わら帽をか...
（達柱はずいぶん変わったな）
茂漢は、勇日たちの世話をやいている達柱を見るのが、楽しか...
いざ出発というときに、トルセの姿が見えなかった。
勇日がさっきいそべ伝いに駆けていくのを見たと言うので待つ...
しばらくして、トルセは伝馬を引っ張って来た。
「そんなもの持ってってどうするんだ」&br;
「これだって使い道はあるんだ。捨てるのはもったいないよ」
トルセは伝馬を船のうしろにつないだ。
「さあ、出発だ」
成哲の号令で、万洙が岸をろで押した。船はゆっくりと水ぎわ...
成哲の懐中時計は10時5分を示していた。へさきの羅針盤を見る...
「さらば、シロクマ島よ。ごきげんよう」
茂漢が学生帽を振って叫んだ。ほかの子たちも、手や帽子を振...
成哲はこの10ヵ月間の出来事をふり返った。苦労はしても、シ...
はじめは母親恋しさや寒さに泣き、恐怖におののいたが、もう...
鋼鉄が火のなかで鍛えられるように、おれたちも試練のなかで...
「明玉、お前また途中でおろしてくれって、泣くんじゃないの...
「もう船酔いなんかしないわよ」
明玉は朗らかに答えた。
「おい、大事なこと忘れたよ」
徳善が京三の脇腹を突っついて言った。
「なにを忘れたんだ」&br;
「出発するとき、山の神さまを祭らなかったじゃないか、困っ...
みな京三を見て笑いこけた。
「おれ、もうそんな縁起はかつがないよ」
京三も笑った。
昌植はその仲間に入らず、「なつかしい古里」の歌詞を仕上げ...
舵取りの万洙は感無量の思いで、水平線の向こうに視線を投げ...
少年たちは、一年近く暮らした島を記憶にとどめようと、遠ざ...
だがかれらは、島の方から視線をはずそうとしなかった。
へさきで少年たちが、トルセの海賊談を聞いているとき、とも...
「あら、あれなにかしら」&br;
「船に引かれてるわよ」
男の子たちが来て見ると、アザラシに似た一角の海獣で、つの...
「一角アザラシだ。あいつはなんでもつので突きたがるそうだ...
トルセが説明しているところへ、達柱が槍を持って来た。
「見物ばかりしていないで、早く引っ張りあげよう。逃がしち...
「そうあわてるな。あのつのが抜けるもんか」
トルセは槍を受け取って、そいつを突こうとした。
「つのを折らないで、生けどりにしようや」
徳善がこう言って伝馬船の綱を引き寄せた。
「伝馬に乗るつもりかい。あぶないから、それはおれに任せろ」
茂漢がこう言っておりようとした。
「よせやい。まだ以前の山ザルだと思ってるのか」
徳善は伝馬にひらりと飛びおりた。
不安がる茂漢の視線をあびながら、徳善は一角アザラシのつの...
一角アザラシは、航海中の楽しい見世物だった。
CENTER:※ ※ ※ ※ ※
船は西南に向け快速で走った。らんかんにもたれて日記をめく...
「シロクマ島を発って半月過ぎたのに、お前が言ってた陸は、...
「いまに見えるよ」
しんぼう強く双眼鏡を目にあてていたトルセが叫んだ。
「島が見えるぞっ」
少年たちがワーッと寄って来た。
「ほら、あそこだ」
成哲が双眼鏡を受け取ってのぞくと、水平線上になにか小さい...
「漂流していたときは、島も陸も見えなかったじゃないか」&br;
「朝鮮はまだ遠いはずだけどな」&br;
「方角を間違えたんじゃないのか」&br;
「キンヨウルはまだずっと先だ。やっと半分くらい来たかな」
昌植の言葉だった。
「前には陸がなかったのに、おかしいなあ。やっぱり方角を間...
茂漢が万洙に言った。万洙はじっと考えこんでいたが、急に顔...
「いつか船で鳥をつかまえたことおぼえてるかい。深い霧の日...
「うん、おぼえてるとも」
俊浩が相づちをうつと、茂漢も口をはさんだ。
「おれも思いだしたよ。確かに指が3本しかない鳥だったな」&br;
「あの日は霧が深くて、陸が見えなかったんだ」
「そんなら、あそこは船が通れないんじゃないの」と心配する...
「大丈夫だ。もう少し行くと海峡があるはずだ。海峡さえ通り...
追い風を受けて、船は気持よく走っていたが達柱らは心がはや...
このとき、茂漢がトルせをこづいた。
「おい、あの港におりてみないか。伝馬もあるんだし」&br;
「おれがおりる予定のキンヨウルまでは、まだ10日はかかるよ」
トルセはろをこぐ腕に力をこめた。遠のいていく陸地をふり返...
シロクマ島をあとにしてから28日目の早朝、ほのぼのと明けゆ...
「陸が見えるぞーっ」
ともで舵を取っていた茂漢の大きな声が、あかつきのしじまを...
寝ていた子どもたちは、目をこすりながら飛びだして来た。夢...
「クズ岩山だっ」&br;
「キンヨウルだっ」&br;
「ばんざーい」
みな歓声をあげ、こおどりして喜んだ。
成哲は言い知れぬ感動にひたって、故郷の山河を食い入るよう...
東の空が明るくあけ放たれ、船は静かな波を起こしながら、陸...
「みんな歌をうたわないか。おれが指揮するから、『なつかし...
京三が音頭をとり、両手で指揮をした。子どもたちは力いっぱ...
>荒れくるう怒涛もこわくない&br;
すさぶ暴風も恐れぬぞ&br;
恋しい恋しい母のもと&br;
帆を立て ろをこぎ帰るのだ&br;
カモメやくちばしの長い水鳥が、掃郷する少年たちを歓迎して...
成哲の心はキンヨウルに飛んでいた。
死んだものとあきらめて、きょうも波止場で働きながら、自分...
「母さん。ぼくたちは死なないで帰って来ました。もうじきキ...
成哲は心に叫んだ。
かれは、なつかしい母のいるキンヨウル、侵略者のいない住み...
船は矢のように走っていた。
（芸術、文芸作品―その他）
RIGHT:'''2020年の記事'''
#br
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//（文芸作品―その他 2020.12.26）
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*長編小説「15少年物語」（41） [#bd2626d0]
昌植がいまに東北の季節風が吹くと言ったのはうそでなかった...
塩づけにした獣肉や魚、そしてワカメや山菜のほかにシロクマ...
「季節風って、しけのとき吹いた意地悪の風とは違うのかい」
勇日がにこにこして、昌植に聞いた。
「季節風はあんなに強く吹かないんだ。それに、いまは雨がた...
「じゃ、船をうしろから押してくれるいい風なんだな」
永洙が手をたたいて喜んだ。
16人の少年は船に乗りこんだ。
みな、茂英たちが洗って火のしをかけた服に着かえており、そ...
「これ、達柱の帽子だろう」
永洙から、つばの取れた麦わら帽を渡された達柱は、「こいつ...
「どうして捨てるんだい。かぶったら、なんかみたいで格好い...
京三が鼻にしわをよせて、おどけて見せた。
「もう、一年前のおれじゃないんだぞ」
茂漢はクスッと笑った。キンヨウルを発つとき、麦わら帽をか...
（達柱はずいぶん変わったな）
茂漢は、勇日たちの世話をやいている達柱を見るのが、楽しか...
いざ出発というときに、トルセの姿が見えなかった。
勇日がさっきいそべ伝いに駆けていくのを見たと言うので待つ...
しばらくして、トルセは伝馬を引っ張って来た。
「そんなもの持ってってどうするんだ」&br;
「これだって使い道はあるんだ。捨てるのはもったいないよ」
トルセは伝馬を船のうしろにつないだ。
「さあ、出発だ」
成哲の号令で、万洙が岸をろで押した。船はゆっくりと水ぎわ...
成哲の懐中時計は10時5分を示していた。へさきの羅針盤を見る...
「さらば、シロクマ島よ。ごきげんよう」
茂漢が学生帽を振って叫んだ。ほかの子たちも、手や帽子を振...
成哲はこの10ヵ月間の出来事をふり返った。苦労はしても、シ...
はじめは母親恋しさや寒さに泣き、恐怖におののいたが、もう...
鋼鉄が火のなかで鍛えられるように、おれたちも試練のなかで...
「明玉、お前また途中でおろしてくれって、泣くんじゃないの...
「もう船酔いなんかしないわよ」
明玉は朗らかに答えた。
「おい、大事なこと忘れたよ」
徳善が京三の脇腹を突っついて言った。
「なにを忘れたんだ」&br;
「出発するとき、山の神さまを祭らなかったじゃないか、困っ...
みな京三を見て笑いこけた。
「おれ、もうそんな縁起はかつがないよ」
京三も笑った。
昌植はその仲間に入らず、「なつかしい古里」の歌詞を仕上げ...
舵取りの万洙は感無量の思いで、水平線の向こうに視線を投げ...
少年たちは、一年近く暮らした島を記憶にとどめようと、遠ざ...
だがかれらは、島の方から視線をはずそうとしなかった。
へさきで少年たちが、トルセの海賊談を聞いているとき、とも...
「あら、あれなにかしら」&br;
「船に引かれてるわよ」
男の子たちが来て見ると、アザラシに似た一角の海獣で、つの...
「一角アザラシだ。あいつはなんでもつので突きたがるそうだ...
トルセが説明しているところへ、達柱が槍を持って来た。
「見物ばかりしていないで、早く引っ張りあげよう。逃がしち...
「そうあわてるな。あのつのが抜けるもんか」
トルセは槍を受け取って、そいつを突こうとした。
「つのを折らないで、生けどりにしようや」
徳善がこう言って伝馬船の綱を引き寄せた。
「伝馬に乗るつもりかい。あぶないから、それはおれに任せろ」
茂漢がこう言っておりようとした。
「よせやい。まだ以前の山ザルだと思ってるのか」
徳善は伝馬にひらりと飛びおりた。
不安がる茂漢の視線をあびながら、徳善は一角アザラシのつの...
一角アザラシは、航海中の楽しい見世物だった。
CENTER:※ ※ ※ ※ ※
船は西南に向け快速で走った。らんかんにもたれて日記をめく...
「シロクマ島を発って半月過ぎたのに、お前が言ってた陸は、...
「いまに見えるよ」
しんぼう強く双眼鏡を目にあてていたトルセが叫んだ。
「島が見えるぞっ」
少年たちがワーッと寄って来た。
「ほら、あそこだ」
成哲が双眼鏡を受け取ってのぞくと、水平線上になにか小さい...
「漂流していたときは、島も陸も見えなかったじゃないか」&br;
「朝鮮はまだ遠いはずだけどな」&br;
「方角を間違えたんじゃないのか」&br;
「キンヨウルはまだずっと先だ。やっと半分くらい来たかな」
昌植の言葉だった。
「前には陸がなかったのに、おかしいなあ。やっぱり方角を間...
茂漢が万洙に言った。万洙はじっと考えこんでいたが、急に顔...
「いつか船で鳥をつかまえたことおぼえてるかい。深い霧の日...
「うん、おぼえてるとも」
俊浩が相づちをうつと、茂漢も口をはさんだ。
「おれも思いだしたよ。確かに指が3本しかない鳥だったな」&br;
「あの日は霧が深くて、陸が見えなかったんだ」
「そんなら、あそこは船が通れないんじゃないの」と心配する...
「大丈夫だ。もう少し行くと海峡があるはずだ。海峡さえ通り...
追い風を受けて、船は気持よく走っていたが達柱らは心がはや...
このとき、茂漢がトルせをこづいた。
「おい、あの港におりてみないか。伝馬もあるんだし」&br;
「おれがおりる予定のキンヨウルまでは、まだ10日はかかるよ」
トルセはろをこぐ腕に力をこめた。遠のいていく陸地をふり返...
シロクマ島をあとにしてから28日目の早朝、ほのぼのと明けゆ...
「陸が見えるぞーっ」
ともで舵を取っていた茂漢の大きな声が、あかつきのしじまを...
寝ていた子どもたちは、目をこすりながら飛びだして来た。夢...
「クズ岩山だっ」&br;
「キンヨウルだっ」&br;
「ばんざーい」
みな歓声をあげ、こおどりして喜んだ。
成哲は言い知れぬ感動にひたって、故郷の山河を食い入るよう...
東の空が明るくあけ放たれ、船は静かな波を起こしながら、陸...
「みんな歌をうたわないか。おれが指揮するから、『なつかし...
京三が音頭をとり、両手で指揮をした。子どもたちは力いっぱ...
>荒れくるう怒涛もこわくない&br;
すさぶ暴風も恐れぬぞ&br;
恋しい恋しい母のもと&br;
帆を立て ろをこぎ帰るのだ&br;
カモメやくちばしの長い水鳥が、掃郷する少年たちを歓迎して...
成哲の心はキンヨウルに飛んでいた。
死んだものとあきらめて、きょうも波止場で働きながら、自分...
「母さん。ぼくたちは死なないで帰って来ました。もうじきキ...
成哲は心に叫んだ。
かれは、なつかしい母のいるキンヨウル、侵略者のいない住み...
船は矢のように走っていた。
（芸術、文芸作品―その他）
RIGHT:'''2020年の記事'''
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//（文芸作品―その他 2020.12.26）
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