長編小説「15少年物語」（4） をテンプレートにして作成
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*長編小説「15少年物語」（4） [#d0122eda]
明け方から降りだした雨はいっこうにやまず、風もたけり狂っ...
少年たちは、船倉にしまってあった乗組員用の食糧や薪、炊事...
「早く水をくみだすんだ」
成哲が洗面器で水をくみだすと、みなそれにならった。
作業はなまやさしくなかった。船首が波に押しあげられるとき...
朝になっても嵐はつづいた。
しけを予知してか、青黒い海原には帆影1つ見あたらず、金剛丸...
子どもたちはずぶぬれになって、水をくみだした。
「なにか食べようや。船で腹をすかしたら体がもたんよ。それ...
万洙が言った。
「うん、おれも腹がへったよ。でもこんなに荒れてるのに、食...
成哲の言葉である。
「とにかくあったかい物を食べなきゃ。マッチとまきはぬれな...
「ごはんだって？ 米があるのか」
成哲がけげんな顔をして、万洙を見た。
「船倉に穀物が何俵かあるんだ。船の人たちのものだけど、こ...
「なにがあるんだい」&br;
「粟と豆、それにジャガイモも少しあるみたいだ」&br;
「だめだよ。他人のものを食べるのはよくない。いよいよとな...
「うん、心配するな。さっきみんなのマッチを集めておいたよ...
「それはよかった。いまのところ、水をくみだす仕事しかない...
「なまぐさい卵と魚ばっかり食べて、水がくみだせるかい」
基昌が腹だたしそうに言った。
「穀物は大事にとっておかなきゃだめだ。なまぐさくって食え...
成哲がさとすように言った。
「料理はおれに任せろ」
万洙が船室へおりて行った。船室では、船に酔った子らが真ん...
頭を手ぬぐいでしばって横になっているヤムジョンと明玉、座...
「永洙、おなかがすいたろう。いますぐごはんを作ってやるか...
「永洙は母ちゃんが恋しくて、さっきからオンマ、オンマって...
と、勇日が代わって答えた。
「ふーん。だけど母ちゃんが恋しいのは、お前だけじゃないん...
万洙は今度は女の子たちに聞いた。
「ヤ厶ジョンと明玉も船に酔ったのか」&br;
「さっき、むかむかして吐いたんだけど、苦しくってたまらな...
明玉が眉をしかめて言った。
「うん。でもね、むかついても吐いちゃだめだよ。すぐかゆを...
万洙は船酔いした子には、粟のかゆを作り、ほかの子には、卵...
ところが火をたく場所がなかった。
「けむくてもがまんしろよ。雨と波のため、ほかでは火がたけ...
万洙は釜を2つ持ちこみ、茂英とヤムジョンに手伝ってもらいな...
「お前たち、外で風にあたったらどうだい」
こう言われて、勇日が友達をさそった。
「おれたちも、水をくみだそうや」&br;
「うん、そうしよう」
永洙と文基が立ちあがると、寝ていた達柱も起きあがり、男の...
「交替しよう」
勇日が基昌のひしゃくを取った。
「お前たちになにができる。遊んでいてもいいから、ただ、泣...
徳善が水をくみながら言った。
「ふん、鼻たれ小僧だって馬鹿にしてるんだな」
みなのあいだに割りこんだ勇日は、おしりで徳善の横腹をぐい...
「さあ、これでくみだせ」
大きい子たちは愉快そうに笑い、文基にうつわをやった。徳善...
ー方、万洙と茂英は目をこすりながら火をたいた。
やがて汁のわく音がした。そのあいだにも船は大揺れに揺れた。
万洙は、水が半分ほど入っている釜を、ブリキ製のかまどに乗...
そのうちに、2つの釜がぐらぐら煮えたった。もうまきをくベる...
突然、へさきがぐっともちあがったかと思うと、がけから落ち...
かまどの前にしゃがんでいた万洙が、うしろにひっくりかえり...
万洙と茂英は急いで火を消し、ぞうきんで床をふいた。悲鳴を...
「みんなひっくりかえっちゃったのか」
成哲は卵を集めて、1つを割ってみた。
「卵は煮えてるよ。また汁を作るわけにいかんから、 これでが...
「うん。波が静まるまでは、卵も生で飲むことにしようよ」
万洙が答えた。
「ゆでても生ぐさいのに、生で飲めるもんか」
基昌が不服そうに言った。
「お前、まだ腹がへってないんだな。3日も飢えてみろ。生ぐさ...
徳善が基昌にくってかかった。
「いいからみんな座れよ。船ではなんでも食べなくちゃっだめ...
成哲は、ゆで卵を洗面器に入れて、前にさしだした。
「勇日たちも連れて来なくちゃ」
茂英が誰にともなく言った。
「おれが交替してやるよ」
成哲が出て行くと、入れかわりに勇日たちが入って来た。みな...
「無理にでも食べろよ。1時間かかってもいいし、2時間かかっ...
と、万洙が言った。
基昌は卵のからをむきはじめた。万洙と茂漢、徳善は4つも食べ...
茂英があんまりすすめるので、明玉は無理に起きあがった。
「食べるのよ。食べないとだめだってのに」
茂英がからをむいてやったが、明玉はしきりに吐き気をもよお...
「あたしもう、がまんできない。どこでもいいから、いますぐ...
明玉は卵を置いて、また横になった。
「あんた、ここがどこだと思ってるの。海の上よ」
茂英はあきれて明玉の顔を見た。
ひどく揺れる船の中では、休みなく流れこむ水をくみだす作業...
風はあいかわらず狂ったようにほえたて、波は山のようにうね...
（おれたちは、このまま死んじゃうんじゃないのか）
成哲は不安にかられた。こんな海の中で死ぬなんて。
（いや生きなくちゃ。どんなことがあっても生きぬくんだ）
しかし、この嵐にどう勝てるというのだろうか。
激しい風波の中で、また1日が暮れ、夜が更けた。少年たちは2...
夜が深まると、黒雲が空をおおい大粒の雨を降らせた。風は少...
船は夕方よりも速く、どんどん押し流されて行った。
さいわい船首につけた帆のおかげで、難破はまぬがれた。波は...
みなへとへとになった。意地の悪い風はなおも吹きつづけた。
「明け方には風がやむだろうか」
せっせと水をくみだしていた茂漢が、万洙を見やって力なく言...
「さあ、やんでくれるとありがたいんだけど、海では嵐が何日...
「そのときは、風が何日つづいたんだ」&br;
「まる5日も吹いたんだって。海では嵐ほどこわいものはないか...
「東海のはてまで流されたのか」&br;
「まさか、はてまでは行かなかったろうよ」&br;
「帰るのに何日かかったんだろう」&br;
「半月かかったんだって」&br;
「半月？ おれたちもそうなったら、大変じゃないか」
徳善は目を丸くした。
「だから水ばっかりくみだしていないで、海をよく見張るんだ...
汽船を見つけたら旗を振るんだ。遭難した船は、どこの国の船...
と、茂漢がみなの顔を見まわした。
「朝まで待つことないよ。いますぐ作ろう」
達柱がこう言って、船室へ下りて行った。
「汽船にあえなかったら、どうするんだ」
心配する京三に、徳善がぶっきらぼうに答えた。
「どうするって、流されるしかないさ」&br;
「暗礁にぶつかったら大変だぞ」
これには徳善も答えられず、目をパチパチさせた。
「暗礁はないと思うよ。おれたち、深い海の上に浮かんでるん...
昌植の言葉に、みなしょげこんでしまつた。
（芸術）
RIGHT:'''2020年の記事'''
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#include(boys_navi,notitle)
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//（芸術 2020.08.01）
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*長編小説「15少年物語」（4） [#d0122eda]
明け方から降りだした雨はいっこうにやまず、風もたけり狂っ...
少年たちは、船倉にしまってあった乗組員用の食糧や薪、炊事...
「早く水をくみだすんだ」
成哲が洗面器で水をくみだすと、みなそれにならった。
作業はなまやさしくなかった。船首が波に押しあげられるとき...
朝になっても嵐はつづいた。
しけを予知してか、青黒い海原には帆影1つ見あたらず、金剛丸...
子どもたちはずぶぬれになって、水をくみだした。
「なにか食べようや。船で腹をすかしたら体がもたんよ。それ...
万洙が言った。
「うん、おれも腹がへったよ。でもこんなに荒れてるのに、食...
成哲の言葉である。
「とにかくあったかい物を食べなきゃ。マッチとまきはぬれな...
「ごはんだって？ 米があるのか」
成哲がけげんな顔をして、万洙を見た。
「船倉に穀物が何俵かあるんだ。船の人たちのものだけど、こ...
「なにがあるんだい」&br;
「粟と豆、それにジャガイモも少しあるみたいだ」&br;
「だめだよ。他人のものを食べるのはよくない。いよいよとな...
「うん、心配するな。さっきみんなのマッチを集めておいたよ...
「それはよかった。いまのところ、水をくみだす仕事しかない...
「なまぐさい卵と魚ばっかり食べて、水がくみだせるかい」
基昌が腹だたしそうに言った。
「穀物は大事にとっておかなきゃだめだ。なまぐさくって食え...
成哲がさとすように言った。
「料理はおれに任せろ」
万洙が船室へおりて行った。船室では、船に酔った子らが真ん...
頭を手ぬぐいでしばって横になっているヤムジョンと明玉、座...
「永洙、おなかがすいたろう。いますぐごはんを作ってやるか...
「永洙は母ちゃんが恋しくて、さっきからオンマ、オンマって...
と、勇日が代わって答えた。
「ふーん。だけど母ちゃんが恋しいのは、お前だけじゃないん...
万洙は今度は女の子たちに聞いた。
「ヤ厶ジョンと明玉も船に酔ったのか」&br;
「さっき、むかむかして吐いたんだけど、苦しくってたまらな...
明玉が眉をしかめて言った。
「うん。でもね、むかついても吐いちゃだめだよ。すぐかゆを...
万洙は船酔いした子には、粟のかゆを作り、ほかの子には、卵...
ところが火をたく場所がなかった。
「けむくてもがまんしろよ。雨と波のため、ほかでは火がたけ...
万洙は釜を2つ持ちこみ、茂英とヤムジョンに手伝ってもらいな...
「お前たち、外で風にあたったらどうだい」
こう言われて、勇日が友達をさそった。
「おれたちも、水をくみだそうや」&br;
「うん、そうしよう」
永洙と文基が立ちあがると、寝ていた達柱も起きあがり、男の...
「交替しよう」
勇日が基昌のひしゃくを取った。
「お前たちになにができる。遊んでいてもいいから、ただ、泣...
徳善が水をくみながら言った。
「ふん、鼻たれ小僧だって馬鹿にしてるんだな」
みなのあいだに割りこんだ勇日は、おしりで徳善の横腹をぐい...
「さあ、これでくみだせ」
大きい子たちは愉快そうに笑い、文基にうつわをやった。徳善...
ー方、万洙と茂英は目をこすりながら火をたいた。
やがて汁のわく音がした。そのあいだにも船は大揺れに揺れた。
万洙は、水が半分ほど入っている釜を、ブリキ製のかまどに乗...
そのうちに、2つの釜がぐらぐら煮えたった。もうまきをくベる...
突然、へさきがぐっともちあがったかと思うと、がけから落ち...
かまどの前にしゃがんでいた万洙が、うしろにひっくりかえり...
万洙と茂英は急いで火を消し、ぞうきんで床をふいた。悲鳴を...
「みんなひっくりかえっちゃったのか」
成哲は卵を集めて、1つを割ってみた。
「卵は煮えてるよ。また汁を作るわけにいかんから、 これでが...
「うん。波が静まるまでは、卵も生で飲むことにしようよ」
万洙が答えた。
「ゆでても生ぐさいのに、生で飲めるもんか」
基昌が不服そうに言った。
「お前、まだ腹がへってないんだな。3日も飢えてみろ。生ぐさ...
徳善が基昌にくってかかった。
「いいからみんな座れよ。船ではなんでも食べなくちゃっだめ...
成哲は、ゆで卵を洗面器に入れて、前にさしだした。
「勇日たちも連れて来なくちゃ」
茂英が誰にともなく言った。
「おれが交替してやるよ」
成哲が出て行くと、入れかわりに勇日たちが入って来た。みな...
「無理にでも食べろよ。1時間かかってもいいし、2時間かかっ...
と、万洙が言った。
基昌は卵のからをむきはじめた。万洙と茂漢、徳善は4つも食べ...
茂英があんまりすすめるので、明玉は無理に起きあがった。
「食べるのよ。食べないとだめだってのに」
茂英がからをむいてやったが、明玉はしきりに吐き気をもよお...
「あたしもう、がまんできない。どこでもいいから、いますぐ...
明玉は卵を置いて、また横になった。
「あんた、ここがどこだと思ってるの。海の上よ」
茂英はあきれて明玉の顔を見た。
ひどく揺れる船の中では、休みなく流れこむ水をくみだす作業...
風はあいかわらず狂ったようにほえたて、波は山のようにうね...
（おれたちは、このまま死んじゃうんじゃないのか）
成哲は不安にかられた。こんな海の中で死ぬなんて。
（いや生きなくちゃ。どんなことがあっても生きぬくんだ）
しかし、この嵐にどう勝てるというのだろうか。
激しい風波の中で、また1日が暮れ、夜が更けた。少年たちは2...
夜が深まると、黒雲が空をおおい大粒の雨を降らせた。風は少...
船は夕方よりも速く、どんどん押し流されて行った。
さいわい船首につけた帆のおかげで、難破はまぬがれた。波は...
みなへとへとになった。意地の悪い風はなおも吹きつづけた。
「明け方には風がやむだろうか」
せっせと水をくみだしていた茂漢が、万洙を見やって力なく言...
「さあ、やんでくれるとありがたいんだけど、海では嵐が何日...
「そのときは、風が何日つづいたんだ」&br;
「まる5日も吹いたんだって。海では嵐ほどこわいものはないか...
「東海のはてまで流されたのか」&br;
「まさか、はてまでは行かなかったろうよ」&br;
「帰るのに何日かかったんだろう」&br;
「半月かかったんだって」&br;
「半月？ おれたちもそうなったら、大変じゃないか」
徳善は目を丸くした。
「だから水ばっかりくみだしていないで、海をよく見張るんだ...
汽船を見つけたら旗を振るんだ。遭難した船は、どこの国の船...
と、茂漢がみなの顔を見まわした。
「朝まで待つことないよ。いますぐ作ろう」
達柱がこう言って、船室へ下りて行った。
「汽船にあえなかったら、どうするんだ」
心配する京三に、徳善がぶっきらぼうに答えた。
「どうするって、流されるしかないさ」&br;
「暗礁にぶつかったら大変だぞ」
これには徳善も答えられず、目をパチパチさせた。
「暗礁はないと思うよ。おれたち、深い海の上に浮かんでるん...
昌植の言葉に、みなしょげこんでしまつた。
（芸術）
RIGHT:'''2020年の記事'''
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//（芸術 2020.08.01）
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