長編小説「15少年物語」（39） をテンプレートにして作成
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*長編小説「15少年物語」（39） [#na265576]
少年たちはすぐ船の建造に取りかかったが、道具が足りなかっ...
順番を待っていた茂漢は去年、トナカイをつかまえようとして...
（斧一梃で家を建てたんだから、すごく苦労したろうな）
斧の件については誰もいっさいふれないので、なおさら良心が...
大事な斧をなくしても平気で家ぶしんの邪魔をしたし、いまも...
「それはいい考えだけど、探せるかな。なにしろずいぶん前の...
「斧がもう一梃あったら、仕事がずっとはかどるじゃないか。...
そのかたい決心を読みとって、成哲は万洙と一緒に行くように...
翌朝、茂漢と万洙は数日分の食べ物と水筒、マッチを用意して...
出発するときは、場所がすぐわかりそうな気がしたが、こんも...
トナカイに夢中になって道に迷い、さんざん苦労したことがふ...
日暮れごろ、見おぼえのある谷間についた。しかし、トナカイ...
二人はしかたなく、丘の下で夕食をとって一夜をすごすことに...
翌日も朝早くから、茂った木立ややぶをかき分けて探したあげ...
岩の上に飛びあがってあたりを見ると、岩や大木に見おぼえが...
「ここじゃなかったんじゃないのか」&br;
「確かにここだよ。間違いないよ」&br;
「そんなら、どうしてないんだ。シロクマが食ったわけがない...
二人はこんなことを言いながら、岩や木の下、草むらを探した...
「どんなふうにして、トナカイをつかまえようとしたか、その...
「そのときの真似か。よし、やってみよう」
茂漢は照れくさそうに笑った。
記憶をたどって身ぶり手ぶりで説明し、同じ動作を一度くりか...
「ここで、こう斧を打ちおろしたんだな。だから、こっちにあ...
万洙はこっくりうなずくと、そこから少し離れた草むらを探し...
「やあ、ここにあるよ」
茂漢は斧を拾いあげて叫んだ。少しさびていたが、とげばいく...
二人はすぐ泉谷へ向かった。半道も行かずに日が暮れたが、か...
二人を迎えて、子どもたちはお祭りさわぎのようにはしゃいだ。
「おれ、あしたの朝、ほら穴へ行って来るよ」
達柱がだしぬけに言った。
「なにしに行くんだ」
京三が横から聞いた。
「最初引っ越して行ったとき、ほら穴のそばにあった深いくぼ...
「中を見もしないで埋めたのかい」&br;
「暗くてよく見えなかったし、まさか人間が住んでいたとは思...
「じゃ、おれと一緒に行ってみよう」と、俊浩が言った。
あくる朝、達柱は京三、俊浩と連れだって、小屋を出た。
ほら穴につくと、達柱は入口の横手に目をこらし、ちょっと考...
やがて片隅が深くめりこんだところが、あらわれた。その下が...
「交代しよう」
京三が代わって土を取り除いた。板がずっと敷きつめられ、そ...
中は倉庫に使っていたらしく、深い穴蔵の中に箱がいくつかあ...
五つあった箱を引きだして、あけてみた。
「やあ、道具がいっぱい入ってる。どうしてこんなものが・・...
俊浩は有頂天になった。
泉谷に帰ると、子どもたちは早くも船ができあがったかのよう...
だが成哲は、棚に置いた箱を見ながら考えこんだ。
（あんなにりっぱな道具を持っていた大人たちが、どうして船...
成哲は自分の考えを否定した。
（いや、その人たちは無電を打って助け船を待つだけで、船を...
成哲はさらに強く決心を固めた。
CENTER:＊ ＊ ＊
ある日、成哲たちがカラマツの木をいかだに組んで、海べへ引...
「あっ、あの船はなんだ」
ろをこいでいた少年たちは、驚いて顔を見あわせた。
「近くへ行ってみよう」
成哲の言葉で、そばにこぎつけてみると、5、6人の子どもが乗...
「もしかしたら、無電機の持主が、箱を取りに来たんじゃない...
達柱が興奮して言った。
「とにかく、丸太を運んでから様子を見よう」
成哲のさしずで丸太を材木置場に移したあと、9人の少年が槍や...
「えたいの知れない伝馬があらわれたんだが、船には誰もいな...
かれらは緊張し、決戦にのぞむ兵士のような気持で山を登った...
ほら穴が近づいたとき、かすかに人間のうめく声がした。少年...
成哲は背すじがぞくっとした。
その声は、空を群れ飛ぶ力ワラヒワの鳴き声にかき消された。
「確かに人間のうめき声だ。向こうの方から聞こえたろう」
徳善がささやいた。
「うん、行ってみよう」
成哲を先頭に前方の丘に足を向けると、うめき声はさっきより...
山ひだに白っぽい人影があらわれて、双方の視線がかちあった...
成哲が警戒しながら近寄ると、血にまみれた少年が顔をあげて...
「お前は誰だ」
成哲は威厳を示そうと、大人の声を真似たが、うまくいかなか...
「おい、お前は誰だ」
抵抗したらただではおかないぞと言わんばかりに、みな槍をか...
「お、おれも朝鮮人だ」&br;
「なに、朝鮮人？」&br;
「そうだ。朝鮮人だ」
成哲は鼻の奥がじいんとなった。こんな無人島で同じ朝鮮人に...
しかし、正体を確かめずには、気を許すわけにいかなかった。
「一人で来たのか。連れはいないのか。正直に言うんだぞ」&br;
「おれ一人だ」&br;
「うそをつくと、よくないぞ」&br;
「決してうそじゃないよ。おれを助けてくれ。がけから落ちて...
少年の両頬に涙がつたっていた。まず傷の手あてからすべきだ...
「よし、おれたちのところへ行こう」
成哲が背中を向けると、茂漢が先におぶって立ちあがった。丸...
「いったいどうしたんだ」&br;
「あそこに、シロクマが・・・」
こわがって口もよくきけない少年の有様に、みな大笑いした。
「なんだ、あれかい。あれは死んだやつだよ」
勇日がこう言って、ゲラゲラ笑った。
少年はシロクマのはく製を見てきまり悪そうに笑った。
部屋に横たわると、少年はぐったりして目を閉じた。岩角か木...
俊浩は傷口を洗って薬を塗り、布を巻き直してやった。茂漢が...
「ありがとう。これで助かった」
子どもたちを見まわすその目に涙が光っていた。悪い人間とは...
「みんな同じ朝鮮の子どもだし、年ごろも同じだ。仲よくしよ...
成晳にこう言われて少年はほほえんだ。
「この島には、どうやって来たんだい」&br;
「船に乗ってたんだ」&br;
「船？なんの船だい」&br;
「汽船だよ。この島には伝馬で来たけどね。だって汽船が近く...
「じゃ、お前その船の乗組員だったのか」&br;
「まあね。でもいつも船長にいじめられてたんだ」&br;
「いじめられたのか、かわいがられたのかわかるもんか。あい...
「うん、そうなんだ」&br;
「じゃ、お前はなんのためこの無人島におりたんだ。おかしい...
少年は黙っていた。みな早く返事をしろとせきたてた。
「おれ、お前たちと一緒に暮らしたかったんだ」&br;
「なんだと。 いいかげんなこと言うな。でたらめ言ったら、海...
昌植がげんこつを振りあげてどなった。
「怪しまれてもしかたがないよ。お前たちはおれのこと知らな...
座中を見まわした少年の目が、成哲のところで止まった。子ど...
「金成哲はおれだがどうして名前を知ってるんだ」&br;
「そりゃ知ってるさ。鳥の足に手紙をつけて飛ばしたろう」
成哲はあっけにとられた。
「おれの名前はトルセって言うんだ。おれの話を聞いたら、納...
「お前、あの手紙を読んだのか」
成哲がせきこんでたずねた。みな息をのんで、トルセのそばに...
かれはこっくりうなずき、シロクマ島にあがったいきさつを話...
トルセは10歳のとき、外国の商船パシフィック号に売られて、...
こんな天候にはよくあることだった。トルセは4羽の鳥をつかま...
「機関長さん。この鳥の足に輪がついてるんだけど、なんでし...
「はずしてみよう。うれしい便りかもしれないぞ」
長い足に巻いてあった輪には、びっしり書かれた小さな紙切れ...
「やあ、おれの国の字だ」&br;
「そうか。なんて書いてあるか、読んでみろよ」
トルセは学校に行ってなかったので、たどたどしく読んだ。
「これはとても大事な手紙です。朝鮮のキンヨウルっていう村...
「それはどの島だね」&br;
「島の名も位置もわからないそうです。25日間も漂流して無人...
トルセはその子たちがたまらなくかわいそうになった。どうや...
「なんとかならないでしようか」&br;
「そうだな。みんなと相談してみよう」
トルセが大急ぎで知らせると、船員たちが機関室に集まった。...
一人の船員が海図を持って来たので、それを広げて、風の方向...
しかし、パシフィック号の現在の位置と無人島は、遠くかけ離...
「早く手を打たなきゃみんな死んじゃいます。船長さんに話し...
「子どもたちが無人島で苦労しているのを知っては、放ってお...
一人の船員がこう言って出て行った。しばらくして戻ったかれ...
「すぐにでも助けに行きたいが、船長が反対なんだから、しか...
ほかの船員はため息をつくばかりだった。
トルセはその後も、無人島の少年たちを気づかったが、いつと...
「機関長さん。いまは北の方に航海してるんでしょう」&br;
「そうだよ。北極圏まで行くはずだ。船長は一獲千金を夢みて...
「へえー、そんなうまい口があるんですか」&br;
「なんでも北極のクロギツネやシロギツネ、アオギツネの毛皮...
「機関長さんは海に明るいんですから、なんとかしてその子た...
「でも、おれ一人の力じゃあな。もう一度船長に話してみるが...
こんな話があったあとも、パシフィック号はいくつかの港をへ...
ある日の明け方、深い霧がたちこめて一寸先も見えなくなった...
昼さがりになって霧がうすれ、海と空の見分けがつきはじめた...
船長はほっとして寝室に引きあげ、船員たちも安心して働いた。
デッキの掃除をしながら、なにげなく海をながめたトルセは、...
航海中に島を見るのは珍しいことでないが、その島からは煙が...
（もしかしたら、あの手紙の無人島かもしれないぞ）
トルセは島に目をこらした。島はますますはっきりと姿をあら...
船は島に向かって走っているようだった。このとき、岸べに群...
「そうだ、あの島に違いない」
デッキに人影がなかったので、トルセは機関室におりかけたが...
（船長に話してみようか。船長も血の通った人間だ。知らんふ...
トルセの気持を察しでもしたように、船員一人が船長に話しか...
「船長さん、去年の夏遭難して、あの島で苦労している子ども...
船長は苦りきって言った。
「君にはあの岸が見えないのかね。いったいどこに船をつけろ...
この返事は、船員よりトルセを驚かせた。
（かわいそうなあの子たちを、みすみす見殺しにするというの...
トルセは棒立ちになって、少年たちを見つめた。 汽船は速力を...
トルセの脳裏には、この5年間、船長のもとであらゆるさげすみ...
昼も夜も、自分の時間はこれっぽっちもなかった。
暗いうちから起きだして、大きな船のデッキやらんかん、船首...
あの子たちを助けてやれないなら、いっそ島へ行って、一緒に...
トルセはずっと前に、船員から聞いた話を思いだした。小説の...
（船長に言ったら、かえって面倒なことになる。こっそり島へ...
トルセはこう決心して、日が暮れるのを待った。汽船は北へ向...
やがて水平線に日が落ち、船員たちは食堂へ行った。
トルセは、伝馬船をつるしてあるマストに近づいた。暗いデッ...
パシフイック号は、波をけたてて遠ざかって行く。トルセは波...
パシフイツク号と伝馬船の距離は遠くなった。トルセは力いっ...
シロクマ島の岸をめぐって、子どもたちがいたあたりにこぎつ...
（芸術、文芸作品―その他）
RIGHT:'''2020年の記事'''
#br
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//（文芸作品―その他 2020.12.18）
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*長編小説「15少年物語」（39） [#na265576]
少年たちはすぐ船の建造に取りかかったが、道具が足りなかっ...
順番を待っていた茂漢は去年、トナカイをつかまえようとして...
（斧一梃で家を建てたんだから、すごく苦労したろうな）
斧の件については誰もいっさいふれないので、なおさら良心が...
大事な斧をなくしても平気で家ぶしんの邪魔をしたし、いまも...
「それはいい考えだけど、探せるかな。なにしろずいぶん前の...
「斧がもう一梃あったら、仕事がずっとはかどるじゃないか。...
そのかたい決心を読みとって、成哲は万洙と一緒に行くように...
翌朝、茂漢と万洙は数日分の食べ物と水筒、マッチを用意して...
出発するときは、場所がすぐわかりそうな気がしたが、こんも...
トナカイに夢中になって道に迷い、さんざん苦労したことがふ...
日暮れごろ、見おぼえのある谷間についた。しかし、トナカイ...
二人はしかたなく、丘の下で夕食をとって一夜をすごすことに...
翌日も朝早くから、茂った木立ややぶをかき分けて探したあげ...
岩の上に飛びあがってあたりを見ると、岩や大木に見おぼえが...
「ここじゃなかったんじゃないのか」&br;
「確かにここだよ。間違いないよ」&br;
「そんなら、どうしてないんだ。シロクマが食ったわけがない...
二人はこんなことを言いながら、岩や木の下、草むらを探した...
「どんなふうにして、トナカイをつかまえようとしたか、その...
「そのときの真似か。よし、やってみよう」
茂漢は照れくさそうに笑った。
記憶をたどって身ぶり手ぶりで説明し、同じ動作を一度くりか...
「ここで、こう斧を打ちおろしたんだな。だから、こっちにあ...
万洙はこっくりうなずくと、そこから少し離れた草むらを探し...
「やあ、ここにあるよ」
茂漢は斧を拾いあげて叫んだ。少しさびていたが、とげばいく...
二人はすぐ泉谷へ向かった。半道も行かずに日が暮れたが、か...
二人を迎えて、子どもたちはお祭りさわぎのようにはしゃいだ。
「おれ、あしたの朝、ほら穴へ行って来るよ」
達柱がだしぬけに言った。
「なにしに行くんだ」
京三が横から聞いた。
「最初引っ越して行ったとき、ほら穴のそばにあった深いくぼ...
「中を見もしないで埋めたのかい」&br;
「暗くてよく見えなかったし、まさか人間が住んでいたとは思...
「じゃ、おれと一緒に行ってみよう」と、俊浩が言った。
あくる朝、達柱は京三、俊浩と連れだって、小屋を出た。
ほら穴につくと、達柱は入口の横手に目をこらし、ちょっと考...
やがて片隅が深くめりこんだところが、あらわれた。その下が...
「交代しよう」
京三が代わって土を取り除いた。板がずっと敷きつめられ、そ...
中は倉庫に使っていたらしく、深い穴蔵の中に箱がいくつかあ...
五つあった箱を引きだして、あけてみた。
「やあ、道具がいっぱい入ってる。どうしてこんなものが・・...
俊浩は有頂天になった。
泉谷に帰ると、子どもたちは早くも船ができあがったかのよう...
だが成哲は、棚に置いた箱を見ながら考えこんだ。
（あんなにりっぱな道具を持っていた大人たちが、どうして船...
成哲は自分の考えを否定した。
（いや、その人たちは無電を打って助け船を待つだけで、船を...
成哲はさらに強く決心を固めた。
CENTER:＊ ＊ ＊
ある日、成哲たちがカラマツの木をいかだに組んで、海べへ引...
「あっ、あの船はなんだ」
ろをこいでいた少年たちは、驚いて顔を見あわせた。
「近くへ行ってみよう」
成哲の言葉で、そばにこぎつけてみると、5、6人の子どもが乗...
「もしかしたら、無電機の持主が、箱を取りに来たんじゃない...
達柱が興奮して言った。
「とにかく、丸太を運んでから様子を見よう」
成哲のさしずで丸太を材木置場に移したあと、9人の少年が槍や...
「えたいの知れない伝馬があらわれたんだが、船には誰もいな...
かれらは緊張し、決戦にのぞむ兵士のような気持で山を登った...
ほら穴が近づいたとき、かすかに人間のうめく声がした。少年...
成哲は背すじがぞくっとした。
その声は、空を群れ飛ぶ力ワラヒワの鳴き声にかき消された。
「確かに人間のうめき声だ。向こうの方から聞こえたろう」
徳善がささやいた。
「うん、行ってみよう」
成哲を先頭に前方の丘に足を向けると、うめき声はさっきより...
山ひだに白っぽい人影があらわれて、双方の視線がかちあった...
成哲が警戒しながら近寄ると、血にまみれた少年が顔をあげて...
「お前は誰だ」
成哲は威厳を示そうと、大人の声を真似たが、うまくいかなか...
「おい、お前は誰だ」
抵抗したらただではおかないぞと言わんばかりに、みな槍をか...
「お、おれも朝鮮人だ」&br;
「なに、朝鮮人？」&br;
「そうだ。朝鮮人だ」
成哲は鼻の奥がじいんとなった。こんな無人島で同じ朝鮮人に...
しかし、正体を確かめずには、気を許すわけにいかなかった。
「一人で来たのか。連れはいないのか。正直に言うんだぞ」&br;
「おれ一人だ」&br;
「うそをつくと、よくないぞ」&br;
「決してうそじゃないよ。おれを助けてくれ。がけから落ちて...
少年の両頬に涙がつたっていた。まず傷の手あてからすべきだ...
「よし、おれたちのところへ行こう」
成哲が背中を向けると、茂漢が先におぶって立ちあがった。丸...
「いったいどうしたんだ」&br;
「あそこに、シロクマが・・・」
こわがって口もよくきけない少年の有様に、みな大笑いした。
「なんだ、あれかい。あれは死んだやつだよ」
勇日がこう言って、ゲラゲラ笑った。
少年はシロクマのはく製を見てきまり悪そうに笑った。
部屋に横たわると、少年はぐったりして目を閉じた。岩角か木...
俊浩は傷口を洗って薬を塗り、布を巻き直してやった。茂漢が...
「ありがとう。これで助かった」
子どもたちを見まわすその目に涙が光っていた。悪い人間とは...
「みんな同じ朝鮮の子どもだし、年ごろも同じだ。仲よくしよ...
成晳にこう言われて少年はほほえんだ。
「この島には、どうやって来たんだい」&br;
「船に乗ってたんだ」&br;
「船？なんの船だい」&br;
「汽船だよ。この島には伝馬で来たけどね。だって汽船が近く...
「じゃ、お前その船の乗組員だったのか」&br;
「まあね。でもいつも船長にいじめられてたんだ」&br;
「いじめられたのか、かわいがられたのかわかるもんか。あい...
「うん、そうなんだ」&br;
「じゃ、お前はなんのためこの無人島におりたんだ。おかしい...
少年は黙っていた。みな早く返事をしろとせきたてた。
「おれ、お前たちと一緒に暮らしたかったんだ」&br;
「なんだと。 いいかげんなこと言うな。でたらめ言ったら、海...
昌植がげんこつを振りあげてどなった。
「怪しまれてもしかたがないよ。お前たちはおれのこと知らな...
座中を見まわした少年の目が、成哲のところで止まった。子ど...
「金成哲はおれだがどうして名前を知ってるんだ」&br;
「そりゃ知ってるさ。鳥の足に手紙をつけて飛ばしたろう」
成哲はあっけにとられた。
「おれの名前はトルセって言うんだ。おれの話を聞いたら、納...
「お前、あの手紙を読んだのか」
成哲がせきこんでたずねた。みな息をのんで、トルセのそばに...
かれはこっくりうなずき、シロクマ島にあがったいきさつを話...
トルセは10歳のとき、外国の商船パシフィック号に売られて、...
こんな天候にはよくあることだった。トルセは4羽の鳥をつかま...
「機関長さん。この鳥の足に輪がついてるんだけど、なんでし...
「はずしてみよう。うれしい便りかもしれないぞ」
長い足に巻いてあった輪には、びっしり書かれた小さな紙切れ...
「やあ、おれの国の字だ」&br;
「そうか。なんて書いてあるか、読んでみろよ」
トルセは学校に行ってなかったので、たどたどしく読んだ。
「これはとても大事な手紙です。朝鮮のキンヨウルっていう村...
「それはどの島だね」&br;
「島の名も位置もわからないそうです。25日間も漂流して無人...
トルセはその子たちがたまらなくかわいそうになった。どうや...
「なんとかならないでしようか」&br;
「そうだな。みんなと相談してみよう」
トルセが大急ぎで知らせると、船員たちが機関室に集まった。...
一人の船員が海図を持って来たので、それを広げて、風の方向...
しかし、パシフィック号の現在の位置と無人島は、遠くかけ離...
「早く手を打たなきゃみんな死んじゃいます。船長さんに話し...
「子どもたちが無人島で苦労しているのを知っては、放ってお...
一人の船員がこう言って出て行った。しばらくして戻ったかれ...
「すぐにでも助けに行きたいが、船長が反対なんだから、しか...
ほかの船員はため息をつくばかりだった。
トルセはその後も、無人島の少年たちを気づかったが、いつと...
「機関長さん。いまは北の方に航海してるんでしょう」&br;
「そうだよ。北極圏まで行くはずだ。船長は一獲千金を夢みて...
「へえー、そんなうまい口があるんですか」&br;
「なんでも北極のクロギツネやシロギツネ、アオギツネの毛皮...
「機関長さんは海に明るいんですから、なんとかしてその子た...
「でも、おれ一人の力じゃあな。もう一度船長に話してみるが...
こんな話があったあとも、パシフィック号はいくつかの港をへ...
ある日の明け方、深い霧がたちこめて一寸先も見えなくなった...
昼さがりになって霧がうすれ、海と空の見分けがつきはじめた...
船長はほっとして寝室に引きあげ、船員たちも安心して働いた。
デッキの掃除をしながら、なにげなく海をながめたトルセは、...
航海中に島を見るのは珍しいことでないが、その島からは煙が...
（もしかしたら、あの手紙の無人島かもしれないぞ）
トルセは島に目をこらした。島はますますはっきりと姿をあら...
船は島に向かって走っているようだった。このとき、岸べに群...
「そうだ、あの島に違いない」
デッキに人影がなかったので、トルセは機関室におりかけたが...
（船長に話してみようか。船長も血の通った人間だ。知らんふ...
トルセの気持を察しでもしたように、船員一人が船長に話しか...
「船長さん、去年の夏遭難して、あの島で苦労している子ども...
船長は苦りきって言った。
「君にはあの岸が見えないのかね。いったいどこに船をつけろ...
この返事は、船員よりトルセを驚かせた。
（かわいそうなあの子たちを、みすみす見殺しにするというの...
トルセは棒立ちになって、少年たちを見つめた。 汽船は速力を...
トルセの脳裏には、この5年間、船長のもとであらゆるさげすみ...
昼も夜も、自分の時間はこれっぽっちもなかった。
暗いうちから起きだして、大きな船のデッキやらんかん、船首...
あの子たちを助けてやれないなら、いっそ島へ行って、一緒に...
トルセはずっと前に、船員から聞いた話を思いだした。小説の...
（船長に言ったら、かえって面倒なことになる。こっそり島へ...
トルセはこう決心して、日が暮れるのを待った。汽船は北へ向...
やがて水平線に日が落ち、船員たちは食堂へ行った。
トルセは、伝馬船をつるしてあるマストに近づいた。暗いデッ...
パシフイック号は、波をけたてて遠ざかって行く。トルセは波...
パシフイツク号と伝馬船の距離は遠くなった。トルセは力いっ...
シロクマ島の岸をめぐって、子どもたちがいたあたりにこぎつ...
（芸術、文芸作品―その他）
RIGHT:'''2020年の記事'''
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//（文芸作品―その他 2020.12.18）
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