長編小説「15少年物語」（38） をテンプレートにして作成
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*長編小説「15少年物語」（38） [#g030f551]
空に霧がかかった。汽笛やエンジンのうなりはもう聞こえず、...
「行こうよ。いつまでもこうしてるわけにいかないじゃないか」
俊浩が涙声で言ったが、誰も応じなかった。
もしやという未練から、成哲は霧の海にじっと瞳をこらしてい...
「もう帰ろう」&br;
「信号旗はどうしようか」
昌植が沈んだ声で聞いた。成哲は返事のしようがなかった。
「そんなもの、海にぶちこんじゃえ」
万洙がいまいましそうに言った。
「船はあれだけじゃないよ。あとで助け船が来たらどうするん...
徳善の言葉に、昌植は迷った。
「きれはしまっておこう。ほかに使い道があるだろう」
成哲がこう言うので旗をはずし、さおは海に放りこんだ。
「じゃ海の見張りもやめるのかい。鳥をたくさん飛ばしたんだ...
徳善がこう言っても、成哲ははっきりした返事ができなかった。
「先に帰れよ。あとで行くから」
かれはなぎさに足を向けた。ひとりで歩きたかった。
「どうしたんだ」&br;
「なんでもないよ。すぐ追いつくからな」
万洙はちょっと首をかしげてほかの子たちと一緒に丘を登って...
成哲はしばらくなぎさを歩いてから、山に登った。故郷のある...
助け船をどんなに待ちわびたことか。
きっと救われるという希望があったからこそ、自分たちはあり...
期待が大きかっただけに、それを裏切られた痛手は深かった。
バラ色の夢が一瞬のうちに破れ、心の支えが音を立ててくずれ...
徳善はほかの船を待とうと言ったが、それがいつのことかわか...
骨を刺す風や吹雪をおかして、小さい勇日たちまで、高い山に...
手紙を読んで、助け船が砕氷船を伴って来ても、のろしが見え...
（村に帰れないで、いつまでもここで暮らさなきゃならないの...
成哲は自分の弱気にはっとした。絶対にそんなことになっては...
かれは唇をかみしめて、汽船の消えた方角をにらんだ。
自分たちには目もくれないで、全速力で行ってしまったあんな...
このとき、カワセミが鳴きながら海に向かって飛んで行った。...
（ほかの方法を考えなくちゃ。この無人島にいつまでもいるわ...
それにつけても恋しいのは、母と故郷だった。霧がうすれて水...
このとき、金剛丸がいまも海に沈んでいるはずだという考えが...
（そうだ。いまからでも引きあげて修理しよう。修理さえした...
かれは金剛丸が沈んだあたりに向かって、山を駆けおりた。日...
シラカバの木の下を通って、草小屋のあった場所に来てみると...
（船を修理して帰ることもできなくなった）
成哲が草小屋のあったところへ、重い足を引きずって行くと、...
「お前たち、ここへはどうして」
「隊長だけ残して帰れるかよ。それで帰るふりしてあとをつけ...
「船がまだ沈んでいたら、引きあげて直すつもりだったんだが...
成哲はうなだれてとぼとぼ歩いた。みなしおれて、あとに従っ...
「助け船が来る見こみはないし、金剛丸もなくなったから、ど...
成哲は誰にともなく言ったが、答える者がなかった。
しばらくして徳善が真剣な顔つきで言った。
「それでも助け船を待たなきゃ。船を一隻のがしたからって、...
「その人たちは帰れないで、この島で死んだみたいだよ」
こう言う茂漢の声がふるえていた。
少年たちはどきっとして、かれのそばに集まった。どうしてそ...
「お前たちにずっと隠してきたんだけど、こんなことがあった...
茂漢は仲間の顔を見まわしてこうきりだしたが、ほら穴に引っ...
「しまいまで話せよ。その人たちが死んだっていう証拠がある...
成哲にうながされて茂漢は、井戸を作ろうとほら穴の前を掘っ...
「どくろを見たのはおれと達柱だけだ。ほかの子がわかると、...
「やっぱり死んだんだな」
万洙がおびえた声で言った。
「のろし台を作ったところを見ると、島に上陸したのは、一人...
昌植が口をはさむと、京三が手の甲で涙をぬぐいながら言った。
「大人も死んだんだから、おれたちなんか助かりっこないな」
あちこちでため息がもれた。
「ここに座っていてもしようがない。帰ろう」
成哲が先に歩きだしたので、みなぞろぞろついて行った。
（おれたちはいま、その人たちの二の舞を演じているわけなの...
成哲は身ぶるいした。考えるほど気がめいった。大人も帰れな...
夜遅く泉谷へ帰って横になったものの、15人の運命が自分の肩...
（どんなことがあっても、生きて故郷に帰らなくちゃ。他人ば...
あくる日の朝早く、成哲は大きい子ら何人かと一緒に、いかだ...
魚を積んで帰るとき、昌植がぼそっと言った。
「昔はいかだで南太平洋を渡ったって話だけど、おれたちもい...
「お前、いかだに乗ってオットセイを取るのもこわがってたく...
京三にやりこめられて、昌植はきまり悪そうに笑った。
まもなくいかだが岸についた。少年たちは魚の入った網袋をか...
先頭に立っていた成哲の目がキラッと光った。
（いかだはだめだけれど、船なら帰れる。おれたちの手で船が...
かれはアル島の近海でしけにあって以来の出来事を、一つ一つ...
（そうだ、船を作ろう。仲間の知恵と力を信じることだ。木は...
成哲の胸は強くどうきを打った。かれはこぶしを握りしめて、...
「おい、いかだじゃなく、船を作って、故郷に帰ろうじゃない...
夢にも考えなかった言葉なので、みなしばらくぽかんとしてい...
「よし作ろう。おれは無条件賛成だ」
確実な見通しがあってのことではなかった。自分は最初不可能...
成哲と一緒なら、そしてみんなが力をあわせるならやれないこ...
「おれも賛成だ。船を作るのはそうむずかしいことじゃないと...
「だけど、船を作るには技術がいるんじゃないか。家を建てる...
「おれは成哲と茂漢の意見に賛成だ。家だってずぶの素人同士...
万洙が興奮して、げんこつを振りまわしながら言った。
「そうだ。おれたちの先祖は機械がなかった昔、でかい岩を運...
成哲が力をこめて言った。
少年たちの顔がぱっと輝いた。みなもろ手をあげて、船づくり...
（芸術、文芸作品―その他）
RIGHT:'''2020年の記事'''
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//（文芸作品―その他 2020.12.14）
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*長編小説「15少年物語」（38） [#g030f551]
空に霧がかかった。汽笛やエンジンのうなりはもう聞こえず、...
「行こうよ。いつまでもこうしてるわけにいかないじゃないか」
俊浩が涙声で言ったが、誰も応じなかった。
もしやという未練から、成哲は霧の海にじっと瞳をこらしてい...
「もう帰ろう」&br;
「信号旗はどうしようか」
昌植が沈んだ声で聞いた。成哲は返事のしようがなかった。
「そんなもの、海にぶちこんじゃえ」
万洙がいまいましそうに言った。
「船はあれだけじゃないよ。あとで助け船が来たらどうするん...
徳善の言葉に、昌植は迷った。
「きれはしまっておこう。ほかに使い道があるだろう」
成哲がこう言うので旗をはずし、さおは海に放りこんだ。
「じゃ海の見張りもやめるのかい。鳥をたくさん飛ばしたんだ...
徳善がこう言っても、成哲ははっきりした返事ができなかった。
「先に帰れよ。あとで行くから」
かれはなぎさに足を向けた。ひとりで歩きたかった。
「どうしたんだ」&br;
「なんでもないよ。すぐ追いつくからな」
万洙はちょっと首をかしげてほかの子たちと一緒に丘を登って...
成哲はしばらくなぎさを歩いてから、山に登った。故郷のある...
助け船をどんなに待ちわびたことか。
きっと救われるという希望があったからこそ、自分たちはあり...
期待が大きかっただけに、それを裏切られた痛手は深かった。
バラ色の夢が一瞬のうちに破れ、心の支えが音を立ててくずれ...
徳善はほかの船を待とうと言ったが、それがいつのことかわか...
骨を刺す風や吹雪をおかして、小さい勇日たちまで、高い山に...
手紙を読んで、助け船が砕氷船を伴って来ても、のろしが見え...
（村に帰れないで、いつまでもここで暮らさなきゃならないの...
成哲は自分の弱気にはっとした。絶対にそんなことになっては...
かれは唇をかみしめて、汽船の消えた方角をにらんだ。
自分たちには目もくれないで、全速力で行ってしまったあんな...
このとき、カワセミが鳴きながら海に向かって飛んで行った。...
（ほかの方法を考えなくちゃ。この無人島にいつまでもいるわ...
それにつけても恋しいのは、母と故郷だった。霧がうすれて水...
このとき、金剛丸がいまも海に沈んでいるはずだという考えが...
（そうだ。いまからでも引きあげて修理しよう。修理さえした...
かれは金剛丸が沈んだあたりに向かって、山を駆けおりた。日...
シラカバの木の下を通って、草小屋のあった場所に来てみると...
（船を修理して帰ることもできなくなった）
成哲が草小屋のあったところへ、重い足を引きずって行くと、...
「お前たち、ここへはどうして」
「隊長だけ残して帰れるかよ。それで帰るふりしてあとをつけ...
「船がまだ沈んでいたら、引きあげて直すつもりだったんだが...
成哲はうなだれてとぼとぼ歩いた。みなしおれて、あとに従っ...
「助け船が来る見こみはないし、金剛丸もなくなったから、ど...
成哲は誰にともなく言ったが、答える者がなかった。
しばらくして徳善が真剣な顔つきで言った。
「それでも助け船を待たなきゃ。船を一隻のがしたからって、...
「その人たちは帰れないで、この島で死んだみたいだよ」
こう言う茂漢の声がふるえていた。
少年たちはどきっとして、かれのそばに集まった。どうしてそ...
「お前たちにずっと隠してきたんだけど、こんなことがあった...
茂漢は仲間の顔を見まわしてこうきりだしたが、ほら穴に引っ...
「しまいまで話せよ。その人たちが死んだっていう証拠がある...
成哲にうながされて茂漢は、井戸を作ろうとほら穴の前を掘っ...
「どくろを見たのはおれと達柱だけだ。ほかの子がわかると、...
「やっぱり死んだんだな」
万洙がおびえた声で言った。
「のろし台を作ったところを見ると、島に上陸したのは、一人...
昌植が口をはさむと、京三が手の甲で涙をぬぐいながら言った。
「大人も死んだんだから、おれたちなんか助かりっこないな」
あちこちでため息がもれた。
「ここに座っていてもしようがない。帰ろう」
成哲が先に歩きだしたので、みなぞろぞろついて行った。
（おれたちはいま、その人たちの二の舞を演じているわけなの...
成哲は身ぶるいした。考えるほど気がめいった。大人も帰れな...
夜遅く泉谷へ帰って横になったものの、15人の運命が自分の肩...
（どんなことがあっても、生きて故郷に帰らなくちゃ。他人ば...
あくる日の朝早く、成哲は大きい子ら何人かと一緒に、いかだ...
魚を積んで帰るとき、昌植がぼそっと言った。
「昔はいかだで南太平洋を渡ったって話だけど、おれたちもい...
「お前、いかだに乗ってオットセイを取るのもこわがってたく...
京三にやりこめられて、昌植はきまり悪そうに笑った。
まもなくいかだが岸についた。少年たちは魚の入った網袋をか...
先頭に立っていた成哲の目がキラッと光った。
（いかだはだめだけれど、船なら帰れる。おれたちの手で船が...
かれはアル島の近海でしけにあって以来の出来事を、一つ一つ...
（そうだ、船を作ろう。仲間の知恵と力を信じることだ。木は...
成哲の胸は強くどうきを打った。かれはこぶしを握りしめて、...
「おい、いかだじゃなく、船を作って、故郷に帰ろうじゃない...
夢にも考えなかった言葉なので、みなしばらくぽかんとしてい...
「よし作ろう。おれは無条件賛成だ」
確実な見通しがあってのことではなかった。自分は最初不可能...
成哲と一緒なら、そしてみんなが力をあわせるならやれないこ...
「おれも賛成だ。船を作るのはそうむずかしいことじゃないと...
「だけど、船を作るには技術がいるんじゃないか。家を建てる...
「おれは成哲と茂漢の意見に賛成だ。家だってずぶの素人同士...
万洙が興奮して、げんこつを振りまわしながら言った。
「そうだ。おれたちの先祖は機械がなかった昔、でかい岩を運...
成哲が力をこめて言った。
少年たちの顔がぱっと輝いた。みなもろ手をあげて、船づくり...
（芸術、文芸作品―その他）
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//（文芸作品―その他 2020.12.14）
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