長編小説「15少年物語」（31） をテンプレートにして作成
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*長編小説「15少年物語」（31） [#edc6036c]
ほら穴にシロクマがあらわれてからは、こわくて近所も安心し...
寒さは日一日ときびしくなるのに、冬着も食べ物も用意できず...
シロクマはその後、姿を見せなかった。
茂漢はまた狩りに出かけようと思ったが、天気が荒れるので、...
何日か悪天候がつづいたあと、なまあたたかい東南の風が吹き...
ある朝、茂漢が達柱と一緒に狩りに出かけようとすると、茂英...
「マッチが切れたって。あれだけ節約しろって注意したのに。...
茂漢は誰にともなく文句を言った。
「じゃ、泉谷へ行って少しもらって来るさ」
ぶすっとしていた基昌が、吐きだすように言った。
「くれっこないよ」
茂漢はこう断言して、ため息をついた。
「成哲兄ちゃんは、そんなけちんぼじゃないわ」&br;
「お前はそんな心配なんかしてないで、じっとしてろ。基昌、...
「え？ 木切れでかい」&br;
「お前は学校に行ってないから、知らないんだな。雷が落ちて...
「そんなら、やってみよう」
達柱はしぶしぶ答えた。
茂漢と基昌は、せわしく山を駆けまわった。
5ヵ所に仕掛けたわなを見てまわるためには、山を二つ越え、く...
二人は山や谷を越えながらわなを調べたが、えものはなかった...
ヤマネコのわなを仕掛けた岩が見つからないので、ひとしきり...
手ぶらで帰るのはこれまで一度や二度でなかったが、この日は...
わなを雪の中に放っておいてもしかたがないので、いったん持...
雪だるまのようになってほら穴に戻った二人は、戸の外で雪を...
「どこへ行ったんだろう」
驚いて部屋に目をこらし、台所をのぞいたが、どこにも人影は...
（とうとう泉谷に行っちゃったのか）
茂漢はこう思ったが、すぐ頭を振った。茂英が自分の言葉にそ...
マッチが切れたと、しょげていた茂英の顔が浮かんでくる。
「おれたちが雪に埋まったかと思って、探しに行ったんじゃな...
基昌が心配そうに言った。
「そうかもしれないな。とんまなやつらだ。迎えに行かなきゃ...
茂漢は息で手をあたためながらぼやいた。
二人はほら穴に入ったが、寒くてやりきれなかった。そのうち...
「茂英はまだ帰って来ないのか」
茂漢はあっけにとられて、達柱を見つめた。
基昌がむっとした顔つきで聞いた。
「茂英はどこへ行ったんだ」&br;
「おれいままで探したんだけどさっぱりわからないんだ」
達柱のたよりない返事に、茂漢はかっとなった。
「さっぱりわからないとはなんだ。行先も言わないで出かけた...
「だから探しまわったって言ってるんじゃないか。これ見ろ。...
不平たらたらな口ぶりだった。
「お前、気分の悪いことがあったのか」&br;
「自分がいいつけといて、もう忘れたのか。これでどうやって...
達柱は片隅に転がっている木切れをつかんで振りまわし、ての...
「いくらこすっても火がつかないから、腹がたって放り投げた...
「それからどうしたんだ」&br;
「早く火をおこさなくちゃ大変だと言って、外へ出たんだけど...
「お前は、出て行くのを喜んで見てたのか」
基昌が怒った。
「そのときは吹雪が吹く前だったんだよ。で、おれはまた板を...
「それから？」&br;
「それからは、いまいましくなって寝転んだんだけど、つい眠...
「じゃ、茂英は泉谷へ行ったのか」
茂漢が怒って聞いた。
「おれが止めたから、そこへは行かなかったはずだ。もしかし...
達柱の言葉に茂漢はうなずいた。
背中を丸めて吹雪の中を行く妹の姿が、目の前にちらつき、不...
茂漢は外へ飛びだして、のろし台へと走った。基昌と達柱がそ...
茂漢は、狂ったように走りつづけた。烈風にさからって吹きだ...
吹雪のなかでも火は燃えつづけていた。だが、茂英の姿はなか...
「茂英ー」
三人は山頂に立ってのどがはりさけんばかりに呼んだ。しかし...
今度は山の斜面を探しながら、茂英の名を呼びつづけた。
骨を刺す風も、顔を横なぐりにする吹雪も感じなかった。斜面...
（もう生きていないかもしれない）
日がとっぷり暮れて、もう探しようがなかった。
もしや行きちがいになったのではと思って、一目散に山を駆け...
茂漢は棒のようになった足を引きずって、底冷えのする暗いほ...
茂漢は夜だということに気がついて、灯油皿を探した。そのと...
かれは空腹も寒さも忘れて、ただ妹の身を気づかった。吹雪の...
（茂英はほんとうに、凍え死んだんだろうか）
涙ににじんだ目に、妹の面影がつぎつぎと浮かんでくる。キン...
キンヨウルを発つとき、無理にでも追い返せばよかったのにと...
（茂英が死んだらどうしよう）
茂漢は戸をあけて外をのぞいた。あたりは闇につつまれ、夜空...
雪に埋もれてあがく茂英の姿や、アザラシをひとのみにしたあ...
「なんで、ため息ばかりついてるんだ」
茂漢はむしゃくしゃして怒鳴ったが、返事がなかった。
「ため息しか出ないのを、どうしろってんだ」
達柱のつっけんどんな言葉つきに、茂漢は2度びっくりした。
（あいつも、泉谷のことを考えてるんだな）
茂漢の口から、ひとりでにため息がもれた。
基昌は、真っ暗なほら穴に座っているのがたまらなくなって、...
雲の切れ間に星がちらほら見えた。徳善峰の隣の峰が、暗い夜...
（あの子たちは毎晩勉強までしながら、楽しくすごしているそ...
今すぐ、泉谷へ飛んでいきたかったが、そんな勇気がなかった。
ふと、頭上にまたたく三つ星が目についた。
（もうこんなに更けたのか）
基昌はこうつぶやいて部屋に戻った。
（芸術、文芸作品―その他）
RIGHT:'''2020年の記事'''
#br
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#include(boys_navi,notitle)
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#include(vok_navi01,notitle)
//（文芸作品―その他 2020.11.17）
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*長編小説「15少年物語」（31） [#edc6036c]
ほら穴にシロクマがあらわれてからは、こわくて近所も安心し...
寒さは日一日ときびしくなるのに、冬着も食べ物も用意できず...
シロクマはその後、姿を見せなかった。
茂漢はまた狩りに出かけようと思ったが、天気が荒れるので、...
何日か悪天候がつづいたあと、なまあたたかい東南の風が吹き...
ある朝、茂漢が達柱と一緒に狩りに出かけようとすると、茂英...
「マッチが切れたって。あれだけ節約しろって注意したのに。...
茂漢は誰にともなく文句を言った。
「じゃ、泉谷へ行って少しもらって来るさ」
ぶすっとしていた基昌が、吐きだすように言った。
「くれっこないよ」
茂漢はこう断言して、ため息をついた。
「成哲兄ちゃんは、そんなけちんぼじゃないわ」&br;
「お前はそんな心配なんかしてないで、じっとしてろ。基昌、...
「え？ 木切れでかい」&br;
「お前は学校に行ってないから、知らないんだな。雷が落ちて...
「そんなら、やってみよう」
達柱はしぶしぶ答えた。
茂漢と基昌は、せわしく山を駆けまわった。
5ヵ所に仕掛けたわなを見てまわるためには、山を二つ越え、く...
二人は山や谷を越えながらわなを調べたが、えものはなかった...
ヤマネコのわなを仕掛けた岩が見つからないので、ひとしきり...
手ぶらで帰るのはこれまで一度や二度でなかったが、この日は...
わなを雪の中に放っておいてもしかたがないので、いったん持...
雪だるまのようになってほら穴に戻った二人は、戸の外で雪を...
「どこへ行ったんだろう」
驚いて部屋に目をこらし、台所をのぞいたが、どこにも人影は...
（とうとう泉谷に行っちゃったのか）
茂漢はこう思ったが、すぐ頭を振った。茂英が自分の言葉にそ...
マッチが切れたと、しょげていた茂英の顔が浮かんでくる。
「おれたちが雪に埋まったかと思って、探しに行ったんじゃな...
基昌が心配そうに言った。
「そうかもしれないな。とんまなやつらだ。迎えに行かなきゃ...
茂漢は息で手をあたためながらぼやいた。
二人はほら穴に入ったが、寒くてやりきれなかった。そのうち...
「茂英はまだ帰って来ないのか」
茂漢はあっけにとられて、達柱を見つめた。
基昌がむっとした顔つきで聞いた。
「茂英はどこへ行ったんだ」&br;
「おれいままで探したんだけどさっぱりわからないんだ」
達柱のたよりない返事に、茂漢はかっとなった。
「さっぱりわからないとはなんだ。行先も言わないで出かけた...
「だから探しまわったって言ってるんじゃないか。これ見ろ。...
不平たらたらな口ぶりだった。
「お前、気分の悪いことがあったのか」&br;
「自分がいいつけといて、もう忘れたのか。これでどうやって...
達柱は片隅に転がっている木切れをつかんで振りまわし、ての...
「いくらこすっても火がつかないから、腹がたって放り投げた...
「それからどうしたんだ」&br;
「早く火をおこさなくちゃ大変だと言って、外へ出たんだけど...
「お前は、出て行くのを喜んで見てたのか」
基昌が怒った。
「そのときは吹雪が吹く前だったんだよ。で、おれはまた板を...
「それから？」&br;
「それからは、いまいましくなって寝転んだんだけど、つい眠...
「じゃ、茂英は泉谷へ行ったのか」
茂漢が怒って聞いた。
「おれが止めたから、そこへは行かなかったはずだ。もしかし...
達柱の言葉に茂漢はうなずいた。
背中を丸めて吹雪の中を行く妹の姿が、目の前にちらつき、不...
茂漢は外へ飛びだして、のろし台へと走った。基昌と達柱がそ...
茂漢は、狂ったように走りつづけた。烈風にさからって吹きだ...
吹雪のなかでも火は燃えつづけていた。だが、茂英の姿はなか...
「茂英ー」
三人は山頂に立ってのどがはりさけんばかりに呼んだ。しかし...
今度は山の斜面を探しながら、茂英の名を呼びつづけた。
骨を刺す風も、顔を横なぐりにする吹雪も感じなかった。斜面...
（もう生きていないかもしれない）
日がとっぷり暮れて、もう探しようがなかった。
もしや行きちがいになったのではと思って、一目散に山を駆け...
茂漢は棒のようになった足を引きずって、底冷えのする暗いほ...
茂漢は夜だということに気がついて、灯油皿を探した。そのと...
かれは空腹も寒さも忘れて、ただ妹の身を気づかった。吹雪の...
（茂英はほんとうに、凍え死んだんだろうか）
涙ににじんだ目に、妹の面影がつぎつぎと浮かんでくる。キン...
キンヨウルを発つとき、無理にでも追い返せばよかったのにと...
（茂英が死んだらどうしよう）
茂漢は戸をあけて外をのぞいた。あたりは闇につつまれ、夜空...
雪に埋もれてあがく茂英の姿や、アザラシをひとのみにしたあ...
「なんで、ため息ばかりついてるんだ」
茂漢はむしゃくしゃして怒鳴ったが、返事がなかった。
「ため息しか出ないのを、どうしろってんだ」
達柱のつっけんどんな言葉つきに、茂漢は2度びっくりした。
（あいつも、泉谷のことを考えてるんだな）
茂漢の口から、ひとりでにため息がもれた。
基昌は、真っ暗なほら穴に座っているのがたまらなくなって、...
雲の切れ間に星がちらほら見えた。徳善峰の隣の峰が、暗い夜...
（あの子たちは毎晩勉強までしながら、楽しくすごしているそ...
今すぐ、泉谷へ飛んでいきたかったが、そんな勇気がなかった。
ふと、頭上にまたたく三つ星が目についた。
（もうこんなに更けたのか）
基昌はこうつぶやいて部屋に戻った。
（芸術、文芸作品―その他）
RIGHT:'''2020年の記事'''
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//（文芸作品―その他 2020.11.17）
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