長編小説「15少年物語」（30） をテンプレートにして作成
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*長編小説「15少年物語」（30） [#f669664c]
茂漢と達柱は、5人が冬中食べられるほどの魚を取って、草原に...
ある日、2人が狩りに出ようとしていると、茂英が魚が腐りかけ...
（大変だ。乾きもしないで腐るなんて）
達柱もにおいをかいで、顔をしかめた。
「こんなもん食えないや。捨てよう」
達柱はべっとつばを吐いた。
「苦労してとったのに、なんてこと言うんだ」
茂漢はかっとなった。
「腐った魚を食おうってのか」&br;
「じゃ、冬中なにを食うつもりだ。飢え死にしたいのか」&br;
「死ぬなんて、まさか。氷を割って魚を取ればいいじゃないか...
「そんなあやふやなことやれるもんか」
2人は草原に座りこんだ。いくら頭をひねっても、いい考えが浮...
「そうだ、小さい魚を取ったらどうだろう」&br;
「そうしてみるか」
その日から、イワシやシロイカナゴなどを取って砂浜に干した...
気温は日一日と低くなった。上着に毛皮をあてれば冬が越せる...
夏着のかれらは、海ベに出ただけでぶるぶるふるえ、手足がこ...
冬着や食べ物が用意できないうちに、恐ろしい冬がやって来そ...
茂漢は、泉谷を去るとき、アリの巣をたずねたセミみたいにな...
自分たちが飼っているトナカイを殺して、冬着を作ろうかとも...
（かえっておれの方が、セミの身の上になるかもしれないぞ）
茂漢ははっとして、思わず首を横に振った。
「なんて弱気を出すんだ。セミになってたまるもんか」
茂漢は自分の心にむち打った。
冬越し用の魚を取るあいだは、基昌にも手伝わせようかと思っ...
翌日から急にみぞれが降りだした。5人はほら穴に火をともして...
それでなくても足りない小魚が、砂浜に放ったらかしたままだ...
翌日からは西北の風が吹きすさび、数日たつと海に氷が厚く張...
「えらいことになったな。いったい、どうしたらいいんだ」&br;
「なにがえらいことだ。弱音をはくな」
茂漢はべそをかく達柱に強がりを言った。
「冬のあいだ、なにを食って生きるんだ」&br;
「ちょっとくさくても、魚を食わなくちゃ。そのうちに気温が...
「ちぇっ、のんきなこと言ってやがる」
達柱はくさくさして、ごろりと寝転んだ。
しばらく誰も口をきかなかった。平気なふりはしていても、こ...
基昌はすっかりふさいで、茂漢について来たことを後悔した。
無電機はいくら分解して調べても、なにもわからなかった。ぎ...
せめてピーッという音がしても慰められるだろうに、全然反応...
「完全に壊れちゃったのに、無駄骨を折ってるんじゃないのか」
かれはよくこうつぶやいた。無電機を生かしてみようという意...
けれど、修理できると信じきっている茂漢に、直す見こみがな...
かれらにひきかえ、文基は単純だった。魚は焼いても、くさく...
（泉谷へ帰ろうか）
こう思うと矢もたてもたまらなくなって、ほら穴にかけこんだ。
食事の後片づけをすませた茂英が、火鉢にあたっていた。
「おれ、泉谷に帰るよ」
思いがけない言葉に、茂英はきょとんとした。そう言ったもの...
「泉谷に帰りたいの」
ちょっと間をおいて、茂英が口を開いた。
「うん。ここはくさい魚しかないし、冬服もないからいまに死...
2人は黙りこんだ。
「あんたははじめから来るんじゃなかったのよ。ほんとに、な...
茂英がやさしい声で言った。
「だから、帰るって言ってるんだ」
文基はじっと茂英を見つめた。
「そんなら、兄ちゃんたちが帰って来てからにしたらどう」&br;
「いやだよ。止めるにきまってるもん。いますぐ行くよ」&br;
「じゃ、いいようにしなさい」
茂英は、一人でもよけいな苦労をすることはないと思った。
「おれ行くよ」
文基は急いで持物をまとめ、峠道を駆けて行った。文基が泉谷...
茂英が文基のことを話した。
「厄介者がいなくなって、大助かりだ。一日中ぶらぶらしやが...
こうののしる達柱に茂漢が言った。
「すぐ帰って来るよ。あくたいをついて出て行った子を、受け...
文基は日が暮れても帰って来なかったし、次の日も音沙汰がな...
基昌は傷あとにこびりついていた薬をきれいにはがし、ほうた...
「おれも気ばらしについて行きたいんだけど、だめかい」
ある日基昌は狩りに出かける茂漢に聞いた。
茂漢はその気持が理解できたし、無電機が直せるかどうかも疑...
「行きたけりゃ一緒に行こう。けものは取らなくてもいいから...
茂漢は言葉じりをにごして笑った。
3人は狩りに出かけたが、この日にかぎってウサギ一匹目につか...
「なんだろう、あの煙は。ほら、向こうの山のてっぺんの煙・...
達柱が驚いて指さす方角を見ると、徳善峰の横手の峰から、黒...
「いつか茂英が言ってたじゃないか。泉谷では手紙を鳥の足に...
基昌が言った。
「あいつら、ほんとうに手紙を送ったのかな」&br;
「送ったからのろしをあげてるんだろう」&br;
「ずいぶん奇抜なことを考えたもんだな。だけど無電機に比べ...
基昌と達柱のやりとりを聞いていた茂漢が、ため息まじりに言...
「だから早く修理しなくちゃ。無電を受けて、船が汽笛を鳴ら...
3人はしばらく黙って煙を見つめた。
「あれはまたなんだろう。そら、あの海の上だ」
基昌が大きな声をたてた。岸べの海上に雲のようなものがゆら...
「あそこは凍ってないみたいだ。水温より海上の空気が冷たい...
3人は谷間を通りぬけて海べに出た。氷の上を歩いていたとき、...
「おい、あれを見ろっ」
立ちのぼる蒸気の前に、ウシほどもあるシロクマがうずくまっ...
少年たちに見られているとは知らないで、シロクマは、うずく...
「あいつ、なにを見てるんだろう」&br;
「さあ、なにかな」
かれらはひそひそとささやきながら、様子をうかがった。
時間がだいぶたったけれど、シロクマはその場を離れようとし...
3人はすっかり弱ってしまった。見つかったら百年目なので、引...
やがてシロクマは前足を氷の穴に突っこんで、なにかを引きだ...
「あれはなんだろう」&br;
「アザラシだ。息をしに浮かびあがるのを狙ってつかまえたん...
茂漢が基昌の耳に口をあてて言った。
シロクマはアザラシをぺろりとたいらげ、岩の方をふり返って...
3人は岩にへばりついた。いまにもクマの前足で、うち殺されて...
（アザラシを丸ごとたいらげたから、もう引きあげるだろう）
茂漢はこう思って見守ったが、いっこうに離れる気配がなかっ...
「あいつ、まだ食い足りないのか」&br;
「どうもそうらしいな」
冷たい風に吹きさらされて、かれらは手足がかじかみ、耳が凍...
「逃げようか」
達柱が茂漢の脇腹を突っついて、小声で言った。
「お前、気は確かなのか。あいつ、さっきもこっちをふり向い...
寒さもひどいが、ひもじくてたまらない。
それでも、じっと隠れていなければならなかった。
日暮れごろ、また一匹のアザラシを食ったあとで、シロクマは...
シロクマは岩に向かって、のっしのっしと歩いて来る。3人は青...
ふうっと息をついた茂漢のひたいには、あぶら汗がにじんでい...
その姿が見えなくなったとき、茂漢はやすをかついで、蒸気が...
「まだそんな格好をしてるのか」
達柱に脇腹をこづかれて、基昌はシロクマはどうしたのかと、...
「山の方へ行ったよ」&br;
「おっかなくて、目も耳もふさいでたんだ。お前たち、どこへ...
「あいつ、アザラシをたらふく食ったから、もう来ないだろう...
シロクマが座っていたあとには、毛まで食ったのか、アザラシ...
「帰ろうよ。なんにもないじゃないか」と、基昌が言った。
「一日中腹をすかしてふるえたのに、手ぶらで帰れるかよ。ア...
茂漢はやすをかまえて、穴の中をのぞいた。基昌は自分だけ帰...
かなり時間がすぎて、アザラシの頭が一つぴょこんと浮きあが...
「そらみろ。さっき帰ってたら、こんなものが手にはいらなか...
茂漢は大得意だった。
アザラシをかついでほら穴へ帰ったとき、日はもう暮れていた。
その夜はシロクマの話でもちきった。アザラシを一匹しとめた...
狩りに出かけた男の子たちはまだ帰らず、茂英がひとり台所で...
（きっと寒がってるんだわ）
茂英はこう思って炊事をつづけた。雪をとかして使おうと、水...
茂英は全身の力がすっと抜け、気を失ってしまった。
男の子たちが帰って来たのはシロクマがトナカイをたいらげて...
「なにしてるんだ。早く戸をあけろっ」
それでも答えがなかった。不吉な予感にうたれて、戸をこじあ...
「大変だ、茂英が気絶してる」
達柱と基昌が飛びこんで、一緒に茂英を部屋に運んだ。ぬれ手...
「シ口クマだって？」&br;
「シロクマがトナカイを食べちゃったのよ」
茂英がふるえる声で答えた。達柱は外へ飛びだし、しばらくし...
「いったいどうしたんだ」
いくら聞いても、達柱はあごをがくがくさせるばかりだった。
子どもたちは戸をあけてみる勇気もなく、部屋の中で騒ぎ立て...
「ちょっと待ってろ」
茂漢が台所に駆けこみ、たいまつに火をつけて外へ飛びだした...
「早く家の中へ入ろう。こわくてたまんないや」
基昌にうながされて、3人はそそくさとほら穴に駆けこんだ。茂...
「ほら穴を知ったから、なにをしでかすかわからないぞ。大変...
達柱は泣きださんばかりだった。
「トナカイが食われるとき、外へ出たっていったね」と、茂漢...
「そうよ」&br;
「じゃ、クマに見つかったのか」&br;
「台所の戸をあけたとき、頭をあげてあたしを見たわ」&br;
「えらいことになったなあ。今度はおれたちを食いに来るかも...
達柱ががたがたふるえながら言った。
茂漢は苦しかった。そんなことはないと打ち消すわけにいかな...
（芸術、文芸作品―その他）
RIGHT:'''2020年の記事'''
#br
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#include(boys_navi,notitle)
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//（文芸作品―その他 2020.11.14）
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*長編小説「15少年物語」（30） [#f669664c]
茂漢と達柱は、5人が冬中食べられるほどの魚を取って、草原に...
ある日、2人が狩りに出ようとしていると、茂英が魚が腐りかけ...
（大変だ。乾きもしないで腐るなんて）
達柱もにおいをかいで、顔をしかめた。
「こんなもん食えないや。捨てよう」
達柱はべっとつばを吐いた。
「苦労してとったのに、なんてこと言うんだ」
茂漢はかっとなった。
「腐った魚を食おうってのか」&br;
「じゃ、冬中なにを食うつもりだ。飢え死にしたいのか」&br;
「死ぬなんて、まさか。氷を割って魚を取ればいいじゃないか...
「そんなあやふやなことやれるもんか」
2人は草原に座りこんだ。いくら頭をひねっても、いい考えが浮...
「そうだ、小さい魚を取ったらどうだろう」&br;
「そうしてみるか」
その日から、イワシやシロイカナゴなどを取って砂浜に干した...
気温は日一日と低くなった。上着に毛皮をあてれば冬が越せる...
夏着のかれらは、海ベに出ただけでぶるぶるふるえ、手足がこ...
冬着や食べ物が用意できないうちに、恐ろしい冬がやって来そ...
茂漢は、泉谷を去るとき、アリの巣をたずねたセミみたいにな...
自分たちが飼っているトナカイを殺して、冬着を作ろうかとも...
（かえっておれの方が、セミの身の上になるかもしれないぞ）
茂漢ははっとして、思わず首を横に振った。
「なんて弱気を出すんだ。セミになってたまるもんか」
茂漢は自分の心にむち打った。
冬越し用の魚を取るあいだは、基昌にも手伝わせようかと思っ...
翌日から急にみぞれが降りだした。5人はほら穴に火をともして...
それでなくても足りない小魚が、砂浜に放ったらかしたままだ...
翌日からは西北の風が吹きすさび、数日たつと海に氷が厚く張...
「えらいことになったな。いったい、どうしたらいいんだ」&br;
「なにがえらいことだ。弱音をはくな」
茂漢はべそをかく達柱に強がりを言った。
「冬のあいだ、なにを食って生きるんだ」&br;
「ちょっとくさくても、魚を食わなくちゃ。そのうちに気温が...
「ちぇっ、のんきなこと言ってやがる」
達柱はくさくさして、ごろりと寝転んだ。
しばらく誰も口をきかなかった。平気なふりはしていても、こ...
基昌はすっかりふさいで、茂漢について来たことを後悔した。
無電機はいくら分解して調べても、なにもわからなかった。ぎ...
せめてピーッという音がしても慰められるだろうに、全然反応...
「完全に壊れちゃったのに、無駄骨を折ってるんじゃないのか」
かれはよくこうつぶやいた。無電機を生かしてみようという意...
けれど、修理できると信じきっている茂漢に、直す見こみがな...
かれらにひきかえ、文基は単純だった。魚は焼いても、くさく...
（泉谷へ帰ろうか）
こう思うと矢もたてもたまらなくなって、ほら穴にかけこんだ。
食事の後片づけをすませた茂英が、火鉢にあたっていた。
「おれ、泉谷に帰るよ」
思いがけない言葉に、茂英はきょとんとした。そう言ったもの...
「泉谷に帰りたいの」
ちょっと間をおいて、茂英が口を開いた。
「うん。ここはくさい魚しかないし、冬服もないからいまに死...
2人は黙りこんだ。
「あんたははじめから来るんじゃなかったのよ。ほんとに、な...
茂英がやさしい声で言った。
「だから、帰るって言ってるんだ」
文基はじっと茂英を見つめた。
「そんなら、兄ちゃんたちが帰って来てからにしたらどう」&br;
「いやだよ。止めるにきまってるもん。いますぐ行くよ」&br;
「じゃ、いいようにしなさい」
茂英は、一人でもよけいな苦労をすることはないと思った。
「おれ行くよ」
文基は急いで持物をまとめ、峠道を駆けて行った。文基が泉谷...
茂英が文基のことを話した。
「厄介者がいなくなって、大助かりだ。一日中ぶらぶらしやが...
こうののしる達柱に茂漢が言った。
「すぐ帰って来るよ。あくたいをついて出て行った子を、受け...
文基は日が暮れても帰って来なかったし、次の日も音沙汰がな...
基昌は傷あとにこびりついていた薬をきれいにはがし、ほうた...
「おれも気ばらしについて行きたいんだけど、だめかい」
ある日基昌は狩りに出かける茂漢に聞いた。
茂漢はその気持が理解できたし、無電機が直せるかどうかも疑...
「行きたけりゃ一緒に行こう。けものは取らなくてもいいから...
茂漢は言葉じりをにごして笑った。
3人は狩りに出かけたが、この日にかぎってウサギ一匹目につか...
「なんだろう、あの煙は。ほら、向こうの山のてっぺんの煙・...
達柱が驚いて指さす方角を見ると、徳善峰の横手の峰から、黒...
「いつか茂英が言ってたじゃないか。泉谷では手紙を鳥の足に...
基昌が言った。
「あいつら、ほんとうに手紙を送ったのかな」&br;
「送ったからのろしをあげてるんだろう」&br;
「ずいぶん奇抜なことを考えたもんだな。だけど無電機に比べ...
基昌と達柱のやりとりを聞いていた茂漢が、ため息まじりに言...
「だから早く修理しなくちゃ。無電を受けて、船が汽笛を鳴ら...
3人はしばらく黙って煙を見つめた。
「あれはまたなんだろう。そら、あの海の上だ」
基昌が大きな声をたてた。岸べの海上に雲のようなものがゆら...
「あそこは凍ってないみたいだ。水温より海上の空気が冷たい...
3人は谷間を通りぬけて海べに出た。氷の上を歩いていたとき、...
「おい、あれを見ろっ」
立ちのぼる蒸気の前に、ウシほどもあるシロクマがうずくまっ...
少年たちに見られているとは知らないで、シロクマは、うずく...
「あいつ、なにを見てるんだろう」&br;
「さあ、なにかな」
かれらはひそひそとささやきながら、様子をうかがった。
時間がだいぶたったけれど、シロクマはその場を離れようとし...
3人はすっかり弱ってしまった。見つかったら百年目なので、引...
やがてシロクマは前足を氷の穴に突っこんで、なにかを引きだ...
「あれはなんだろう」&br;
「アザラシだ。息をしに浮かびあがるのを狙ってつかまえたん...
茂漢が基昌の耳に口をあてて言った。
シロクマはアザラシをぺろりとたいらげ、岩の方をふり返って...
3人は岩にへばりついた。いまにもクマの前足で、うち殺されて...
（アザラシを丸ごとたいらげたから、もう引きあげるだろう）
茂漢はこう思って見守ったが、いっこうに離れる気配がなかっ...
「あいつ、まだ食い足りないのか」&br;
「どうもそうらしいな」
冷たい風に吹きさらされて、かれらは手足がかじかみ、耳が凍...
「逃げようか」
達柱が茂漢の脇腹を突っついて、小声で言った。
「お前、気は確かなのか。あいつ、さっきもこっちをふり向い...
寒さもひどいが、ひもじくてたまらない。
それでも、じっと隠れていなければならなかった。
日暮れごろ、また一匹のアザラシを食ったあとで、シロクマは...
シロクマは岩に向かって、のっしのっしと歩いて来る。3人は青...
ふうっと息をついた茂漢のひたいには、あぶら汗がにじんでい...
その姿が見えなくなったとき、茂漢はやすをかついで、蒸気が...
「まだそんな格好をしてるのか」
達柱に脇腹をこづかれて、基昌はシロクマはどうしたのかと、...
「山の方へ行ったよ」&br;
「おっかなくて、目も耳もふさいでたんだ。お前たち、どこへ...
「あいつ、アザラシをたらふく食ったから、もう来ないだろう...
シロクマが座っていたあとには、毛まで食ったのか、アザラシ...
「帰ろうよ。なんにもないじゃないか」と、基昌が言った。
「一日中腹をすかしてふるえたのに、手ぶらで帰れるかよ。ア...
茂漢はやすをかまえて、穴の中をのぞいた。基昌は自分だけ帰...
かなり時間がすぎて、アザラシの頭が一つぴょこんと浮きあが...
「そらみろ。さっき帰ってたら、こんなものが手にはいらなか...
茂漢は大得意だった。
アザラシをかついでほら穴へ帰ったとき、日はもう暮れていた。
その夜はシロクマの話でもちきった。アザラシを一匹しとめた...
狩りに出かけた男の子たちはまだ帰らず、茂英がひとり台所で...
（きっと寒がってるんだわ）
茂英はこう思って炊事をつづけた。雪をとかして使おうと、水...
茂英は全身の力がすっと抜け、気を失ってしまった。
男の子たちが帰って来たのはシロクマがトナカイをたいらげて...
「なにしてるんだ。早く戸をあけろっ」
それでも答えがなかった。不吉な予感にうたれて、戸をこじあ...
「大変だ、茂英が気絶してる」
達柱と基昌が飛びこんで、一緒に茂英を部屋に運んだ。ぬれ手...
「シ口クマだって？」&br;
「シロクマがトナカイを食べちゃったのよ」
茂英がふるえる声で答えた。達柱は外へ飛びだし、しばらくし...
「いったいどうしたんだ」
いくら聞いても、達柱はあごをがくがくさせるばかりだった。
子どもたちは戸をあけてみる勇気もなく、部屋の中で騒ぎ立て...
「ちょっと待ってろ」
茂漢が台所に駆けこみ、たいまつに火をつけて外へ飛びだした...
「早く家の中へ入ろう。こわくてたまんないや」
基昌にうながされて、3人はそそくさとほら穴に駆けこんだ。茂...
「ほら穴を知ったから、なにをしでかすかわからないぞ。大変...
達柱は泣きださんばかりだった。
「トナカイが食われるとき、外へ出たっていったね」と、茂漢...
「そうよ」&br;
「じゃ、クマに見つかったのか」&br;
「台所の戸をあけたとき、頭をあげてあたしを見たわ」&br;
「えらいことになったなあ。今度はおれたちを食いに来るかも...
達柱ががたがたふるえながら言った。
茂漢は苦しかった。そんなことはないと打ち消すわけにいかな...
（芸術、文芸作品―その他）
RIGHT:'''2020年の記事'''
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//（文芸作品―その他 2020.11.14）
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