長編小説「15少年物語」(2) をテンプレートにして作成
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*長編小説「15少年物語」(2) [#ne2263b8]
船がアル島についたのは、遅い朝食がすむころだった。緑の老...
島が近づくにつれ有頂天になった子どもたちは、船が岸につく...
真っ先に茂漢が駆けおり、昌植がそれにつづいた。
「成哲、なにをぐずぐずしてるんだ。茂英も早くおりろよ」
茂漢が大声で叫んだ。
成哲は最後まで、みながおりるのを待った。小さい子たちもお...
「早くおりよう」
成哲がうながした。
「歩み板が高すぎて、落っこちそうなんだ。チビたちはこわく...
徳善はまだためらっていた。
「お前、船に慣れていないんだな。海を見ないで、細い山道を...
成哲は徳善の包みを受け取った。
徳善は両手を広げて、恐る恐る歩み板を渡りはじめた。島に飛...
かれが生まれ育ったのは、けだものや鳥の鳴き声しか聞こえな...
徳善につづいて成哲もおりた。
「どうだ。いい景色だろう」&br;
「うん、まるで別天地だ。ここは岩だらけなのに、どうやって...
「島が海に浮かんでるみたいじゃないか」&br;
「ほんとうだ。ここは無人島なのかい」&br;
「作物が育たないから、住む人がいるわけないよ。島の主はあ...
成哲はこう言うと、手製の小さな四つ手網を持って、いそにお...
「そうしておくと魚が入るのか」&br;
「うん。おれたちも、力モメの卵を取ろうよ」
成哲は、わらの網袋やつり竿、風呂敷包みを持って、徳善と一...
子どもたちは、岩場をせわしく登りおりして、カモメの巣をあ...
「こっちへあがって来いよ。すごくたくさんあるんだ。おれ、...
万洙が卵をさしあげて2人を呼んだ。
「おれたち2人で取りくらべをしようや」
成哲はでこぼこの岩場にあがるなり、卵を3つ発見した。力モメ...
「これを見ろ。力モメはこんな具合に巣を作って、卵をうむん...
成哲が卵を徳善の袋に入れてやろうとするのを、徳善は自分で...
「力モメも、二ワトリみたいに卵を抱いてかえすのか」&br;
「水鳥のなかには砂や岩の上に卵をうんで、日光でかえすのも...
こんな話をやりとりしながら、成哲はまた見つけた岩穴に手を...
「おい、ここにたくさんあるぞ。ほら」
成哲は一度に2つの卵を取りだして、袋に入れた。
「まだある」
かれは3つの巣から、8つも卵をつかみだした。
茂英とヤムジョン、明玉の3人は一緒にあちこち駆けまわりなか...
「うわー、もうこんなに取ったのかい」
成哲は茂英のかごをのぞいて、びっくりした。
「お兄ちゃんたちに負けると思ってるの」
茂英が口をとがらせた。
「じゃ競争しようか」&br;
「いいわ」&br;
「なにをかける」&br;
「勝った方が、負けた方の卵を全部もらうことにしたらどうだ」
徳善が口をはさんだ。
「そんなさもしいかけなんかいやだわ。ねえ、茂英」&br;
「うん」
女の子たちがクックッ笑うと、男の子たちもつられて笑った。
このとき、前方の高い岩の上で茂漢が叫んだ。
「おーい、ひとの残り物ばかり探さないでこっちへ来いよ。す...
茂漢が高くさしあげた袋には、卵がもう半分がた入っていた。
「あたしたちも行こうよ」
明玉ら3人もいっせいに駆けだした。みなうきうきとして走って...
急にごつごつした岩場の方から、泣き声が聞こえた。
永洙らしい。
成哲と徳善が駆けて行った。
「おい、どうしたんだ」&br;
「おれが見つけた卵を文基が横取りしたんだ」
永洙はさっきよりもっと大きな声で泣いた。
「なんだと、おれが先に見つけたじゃないか」
文基が負けずに言い返した。
「あれはおれのだって、おれが先に言ったじゃないか」&br;
「おれはその前に見つけて走って来たんだぞ。おれのものだっ...
文基はこうやりこめながらも、卵を取る手は片ときも休めなか...
「ここで、いくつ取ったんだ」
成哲が聞いた。
「5つ」
文基は取りあげられては大変とばかり、袋をだきしめて、岩か...
「男のくせに泣くやつがあるか。おれのをやるから、涙をふけ...
成哲は卵をいくつか取りだした。
「いやだ。めぐんでもらおうと泣いたんじゃないよ」
永洙はこぶしで涙をぬぐった。
「誰がもっとたくさん取るかみてみろ。そんなによくばったら...
永洙はくやしまぎれにこう言って、文基とは反対の方向へ走っ...
いたるところ力モメの卵だった。1つの巣には2、3個しかないが...
成哲は徳善と一緒に、波うちぎわの絶壁の下へ行った。きりた...
「あそこへ登ってみよう」
徳善が近づきながら言った。
「危くないか」&br;
「あの岩さえ越えれば、わけないよ」
徳善はがけをよじ登りはじめた。
「お前、船の中ではおく病だったけど、さすがは山家育ちだな...
徳善はどうしたのかと思って、立ち止まった。
「あの岩、いまにもくずれ落ちそうなんだ」&br;
「なんだと」
めざす岩の中ほどに、1本の松の木が根を張って、青々と茂って...
成哲はそれをじっと見つめた。見れば見るほど奇妙だった。
(松の木は岩より強いんだな)
「なにをそんなに見てるんだ。ここはだめだから、ほかへ行こ...
徳善がこう言ったとき、茂漢がやって来た。
「どれくらい取ったんだ。へえー、びりっこにおりたくせに、...
茂漢は得意になって卵でいっぱいの袋を見せた。
「やっぱり卵拾いの名人だ。おれたちも負けないで拾おう」
成哲と徳善はまた岩穴を探した。
島の端の方でザブンと水音がし、爆笑が起きた。見ると、海に...
「どうして落ちたんだい。水は飲まなかったのか」&br;
「あのがけで卵を取っているうちに、足がすべったらしいんだ...
勇日が腹をかかえて笑った。文基は自分の袋をのぞいて、ベそ...
「ざまあみろ。ひとのものを横取りしたから、ばちがあたった...
永沫が小気味よさそうに言うと、
「なんだと、もういっぺん言ってみろ」
と、文基がつかみかかった。
「じゃ、さっきおれが見つけた卵を、横取りしたのは誰だ」
永洙も真っ赤になって、文基のむなぐらをつかんだ。
みな面白がってワイワイはやしたてた。
「なんで、けんかなんかするんだ」
茂漢が駆け寄って、2人を引き離した。
「おいお前たち、けんかがそんなに面白いのか。茂漢のように...
成哲にとがめられて、まわりの子どもたちは、また取っ組みあ...
「どうして、あんな危い所に登ったんだ。卵はほかにいくらで...
成哲は2人を同じようにたしなめた。
「ふん、あんな泣き虫、友だちなもんか」
永洙は言い返す言葉が思いつかないのか、文基をにらんで目を...
「じゃ、水に落っこった犬ころと友だちになったらいいや」
しばらくしてこうやりかえした永洙は、文基がずぶぬれの小犬...
「2人とも笑って仲直りしたからいいや。さあ、卵をもっと取ろ...
成哲の言葉に、みな笑いながら散って行った。
12時ごろになって、昼支度をはじめた。そのとき、俊浩がいな...
「俊浩ー」
声をあわせて呼んだが、答えがなかった。
海に落ちたのではないか、と成哲は気が気でなかった。
さっき水におぼれてもがいていた文基の顔に、俊浩の顔がダブ...
「俊浩を見かけた者は、ほんとにいないのか」
成哲はとまどって、もう一度聞いた。
「さっき、向こうへ行くのを見たんだけど…」
1人の子が大きな岩を指さした。
「一緒に行ってみよう」
2人が歩きだすと、ほかの子らもあとについて行った。俊浩はそ...
「遠くへ行かないで、この辺を手分けして探そう」
成哲の言葉に、みな散り散りになって探した。でも俊浩の姿は...
成哲は切り立ったがけの前で立ち止まった。がけの下では波が...
(もしか足をすべらして…)
このとき、岩の曲がり角の方から、俊浩の元気な声がした。
「おれここにいるよー」
みなが走って行くと、捕虫網と大きなカブト虫を手にした俊浩...
「1人でなにをしてたんだ」
茂漢が責めた。
「こいつをつかまえるために、ずい分苦労したよ」
俊浩は、村では見たことのない大きなカブト虫を振ってみせた。
「カブト虫をつかまえようと、ツユ虫をつかまえようとお前の...
昌植がにらみつけた。
「みんな聞いてたよ。でも声をたてると逃げちゃうから、黙っ...
俊浩は片目をつぶってみせた。
みなが帰ると、茂英と明玉はあつあつの貝汁を食器によそった...
「お前、なにをもったいないことするんだ」
徳善がとがめた。
「原っぱでめしを食うときはなあ、こうやっておまじないする...
「お前はどこへ行っても神様だな。飯一さじでおっぱらえる厄...
昌植がからかった。
「京三はね、コガネ虫の飛ぶ音にも、びっくりするんだよ」
勇日が相づちをうったので、大笑いになった。
ごうせいなごちそうだった。いつもは、うすいかゆかイモしか...
「おいみんな、食べてばかりいないで、約束どおり歌ったり、...
京三が立ちあがった。パチパチと拍手の音がした。
>鳥よ鳥 青い鳥&br;やえなり畑に止まるな
京三は歌いおわると、「うまいぞ!」と手をたたいたので、拍...
かれは座中をぐるっと見まわし、ボサボサ頭の徳善を名ざした。
徳善は頭をかきながら立ちあがったが、そくざに小話をはじめ...
「ある村の百姓家のことだけど、明け方、オンドリがコケコッ...
徳善は両手を重ねて、鼻が地べたにつくほど深く頭をさげた。...
「うまいもんだ。夜中にオンドリの鳴き声をだしたら、近所の...
「犬の吠え声だって、本物そっくりだ」&br;
「おれのうちへ来て、ネコの鳴き声を出して、ネズミをおっぱ...
みんな愉快になって、自分たちも動物の鳴き声をまねてみた。
子どもたちが楽しいひとときをすごしているとき、海の方から...
万洙はさじを手にしたまま、空を見あげた。
「力モメがあんなふうに飛んでるのを見ると、風が強くなりそ...
だが、誰1人その言葉に気をとめなかった。海はそれほどおだや...
余興が終わると、子どもたちはまためいめい好きなことをした...
大抵の者はつりを楽しんだ。マス、イワシ、クロソイ、ホッケ...
つりの見物をしていた万洙が空模様を心配して成哲に言った。
「もう帰ろうじゃないか」&br;
「大きいやつをもう少しつって行こう。まだ時間があるよ」
成哲はつりに夢中だった。
「荒れそうだぜ。さっき、力モメが群がって飛んでただろう。...
万洙に言われて見あげると、なるほど、さっきまで晴れわたっ...
「じゃ、帰ろう」
子どもたちは帰り支度を急いだ。入れ物ごとにいっぱい入った...
(芸術)
RIGHT:'''2020年の記事'''
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//(芸術 2020.07.18)
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*長編小説「15少年物語」(2) [#ne2263b8]
船がアル島についたのは、遅い朝食がすむころだった。緑の老...
島が近づくにつれ有頂天になった子どもたちは、船が岸につく...
真っ先に茂漢が駆けおり、昌植がそれにつづいた。
「成哲、なにをぐずぐずしてるんだ。茂英も早くおりろよ」
茂漢が大声で叫んだ。
成哲は最後まで、みながおりるのを待った。小さい子たちもお...
「早くおりよう」
成哲がうながした。
「歩み板が高すぎて、落っこちそうなんだ。チビたちはこわく...
徳善はまだためらっていた。
「お前、船に慣れていないんだな。海を見ないで、細い山道を...
成哲は徳善の包みを受け取った。
徳善は両手を広げて、恐る恐る歩み板を渡りはじめた。島に飛...
かれが生まれ育ったのは、けだものや鳥の鳴き声しか聞こえな...
徳善につづいて成哲もおりた。
「どうだ。いい景色だろう」&br;
「うん、まるで別天地だ。ここは岩だらけなのに、どうやって...
「島が海に浮かんでるみたいじゃないか」&br;
「ほんとうだ。ここは無人島なのかい」&br;
「作物が育たないから、住む人がいるわけないよ。島の主はあ...
成哲はこう言うと、手製の小さな四つ手網を持って、いそにお...
「そうしておくと魚が入るのか」&br;
「うん。おれたちも、力モメの卵を取ろうよ」
成哲は、わらの網袋やつり竿、風呂敷包みを持って、徳善と一...
子どもたちは、岩場をせわしく登りおりして、カモメの巣をあ...
「こっちへあがって来いよ。すごくたくさんあるんだ。おれ、...
万洙が卵をさしあげて2人を呼んだ。
「おれたち2人で取りくらべをしようや」
成哲はでこぼこの岩場にあがるなり、卵を3つ発見した。力モメ...
「これを見ろ。力モメはこんな具合に巣を作って、卵をうむん...
成哲が卵を徳善の袋に入れてやろうとするのを、徳善は自分で...
「力モメも、二ワトリみたいに卵を抱いてかえすのか」&br;
「水鳥のなかには砂や岩の上に卵をうんで、日光でかえすのも...
こんな話をやりとりしながら、成哲はまた見つけた岩穴に手を...
「おい、ここにたくさんあるぞ。ほら」
成哲は一度に2つの卵を取りだして、袋に入れた。
「まだある」
かれは3つの巣から、8つも卵をつかみだした。
茂英とヤムジョン、明玉の3人は一緒にあちこち駆けまわりなか...
「うわー、もうこんなに取ったのかい」
成哲は茂英のかごをのぞいて、びっくりした。
「お兄ちゃんたちに負けると思ってるの」
茂英が口をとがらせた。
「じゃ競争しようか」&br;
「いいわ」&br;
「なにをかける」&br;
「勝った方が、負けた方の卵を全部もらうことにしたらどうだ」
徳善が口をはさんだ。
「そんなさもしいかけなんかいやだわ。ねえ、茂英」&br;
「うん」
女の子たちがクックッ笑うと、男の子たちもつられて笑った。
このとき、前方の高い岩の上で茂漢が叫んだ。
「おーい、ひとの残り物ばかり探さないでこっちへ来いよ。す...
茂漢が高くさしあげた袋には、卵がもう半分がた入っていた。
「あたしたちも行こうよ」
明玉ら3人もいっせいに駆けだした。みなうきうきとして走って...
急にごつごつした岩場の方から、泣き声が聞こえた。
永洙らしい。
成哲と徳善が駆けて行った。
「おい、どうしたんだ」&br;
「おれが見つけた卵を文基が横取りしたんだ」
永洙はさっきよりもっと大きな声で泣いた。
「なんだと、おれが先に見つけたじゃないか」
文基が負けずに言い返した。
「あれはおれのだって、おれが先に言ったじゃないか」&br;
「おれはその前に見つけて走って来たんだぞ。おれのものだっ...
文基はこうやりこめながらも、卵を取る手は片ときも休めなか...
「ここで、いくつ取ったんだ」
成哲が聞いた。
「5つ」
文基は取りあげられては大変とばかり、袋をだきしめて、岩か...
「男のくせに泣くやつがあるか。おれのをやるから、涙をふけ...
成哲は卵をいくつか取りだした。
「いやだ。めぐんでもらおうと泣いたんじゃないよ」
永洙はこぶしで涙をぬぐった。
「誰がもっとたくさん取るかみてみろ。そんなによくばったら...
永洙はくやしまぎれにこう言って、文基とは反対の方向へ走っ...
いたるところ力モメの卵だった。1つの巣には2、3個しかないが...
成哲は徳善と一緒に、波うちぎわの絶壁の下へ行った。きりた...
「あそこへ登ってみよう」
徳善が近づきながら言った。
「危くないか」&br;
「あの岩さえ越えれば、わけないよ」
徳善はがけをよじ登りはじめた。
「お前、船の中ではおく病だったけど、さすがは山家育ちだな...
徳善はどうしたのかと思って、立ち止まった。
「あの岩、いまにもくずれ落ちそうなんだ」&br;
「なんだと」
めざす岩の中ほどに、1本の松の木が根を張って、青々と茂って...
成哲はそれをじっと見つめた。見れば見るほど奇妙だった。
(松の木は岩より強いんだな)
「なにをそんなに見てるんだ。ここはだめだから、ほかへ行こ...
徳善がこう言ったとき、茂漢がやって来た。
「どれくらい取ったんだ。へえー、びりっこにおりたくせに、...
茂漢は得意になって卵でいっぱいの袋を見せた。
「やっぱり卵拾いの名人だ。おれたちも負けないで拾おう」
成哲と徳善はまた岩穴を探した。
島の端の方でザブンと水音がし、爆笑が起きた。見ると、海に...
「どうして落ちたんだい。水は飲まなかったのか」&br;
「あのがけで卵を取っているうちに、足がすべったらしいんだ...
勇日が腹をかかえて笑った。文基は自分の袋をのぞいて、ベそ...
「ざまあみろ。ひとのものを横取りしたから、ばちがあたった...
永沫が小気味よさそうに言うと、
「なんだと、もういっぺん言ってみろ」
と、文基がつかみかかった。
「じゃ、さっきおれが見つけた卵を、横取りしたのは誰だ」
永洙も真っ赤になって、文基のむなぐらをつかんだ。
みな面白がってワイワイはやしたてた。
「なんで、けんかなんかするんだ」
茂漢が駆け寄って、2人を引き離した。
「おいお前たち、けんかがそんなに面白いのか。茂漢のように...
成哲にとがめられて、まわりの子どもたちは、また取っ組みあ...
「どうして、あんな危い所に登ったんだ。卵はほかにいくらで...
成哲は2人を同じようにたしなめた。
「ふん、あんな泣き虫、友だちなもんか」
永洙は言い返す言葉が思いつかないのか、文基をにらんで目を...
「じゃ、水に落っこった犬ころと友だちになったらいいや」
しばらくしてこうやりかえした永洙は、文基がずぶぬれの小犬...
「2人とも笑って仲直りしたからいいや。さあ、卵をもっと取ろ...
成哲の言葉に、みな笑いながら散って行った。
12時ごろになって、昼支度をはじめた。そのとき、俊浩がいな...
「俊浩ー」
声をあわせて呼んだが、答えがなかった。
海に落ちたのではないか、と成哲は気が気でなかった。
さっき水におぼれてもがいていた文基の顔に、俊浩の顔がダブ...
「俊浩を見かけた者は、ほんとにいないのか」
成哲はとまどって、もう一度聞いた。
「さっき、向こうへ行くのを見たんだけど…」
1人の子が大きな岩を指さした。
「一緒に行ってみよう」
2人が歩きだすと、ほかの子らもあとについて行った。俊浩はそ...
「遠くへ行かないで、この辺を手分けして探そう」
成哲の言葉に、みな散り散りになって探した。でも俊浩の姿は...
成哲は切り立ったがけの前で立ち止まった。がけの下では波が...
(もしか足をすべらして…)
このとき、岩の曲がり角の方から、俊浩の元気な声がした。
「おれここにいるよー」
みなが走って行くと、捕虫網と大きなカブト虫を手にした俊浩...
「1人でなにをしてたんだ」
茂漢が責めた。
「こいつをつかまえるために、ずい分苦労したよ」
俊浩は、村では見たことのない大きなカブト虫を振ってみせた。
「カブト虫をつかまえようと、ツユ虫をつかまえようとお前の...
昌植がにらみつけた。
「みんな聞いてたよ。でも声をたてると逃げちゃうから、黙っ...
俊浩は片目をつぶってみせた。
みなが帰ると、茂英と明玉はあつあつの貝汁を食器によそった...
「お前、なにをもったいないことするんだ」
徳善がとがめた。
「原っぱでめしを食うときはなあ、こうやっておまじないする...
「お前はどこへ行っても神様だな。飯一さじでおっぱらえる厄...
昌植がからかった。
「京三はね、コガネ虫の飛ぶ音にも、びっくりするんだよ」
勇日が相づちをうったので、大笑いになった。
ごうせいなごちそうだった。いつもは、うすいかゆかイモしか...
「おいみんな、食べてばかりいないで、約束どおり歌ったり、...
京三が立ちあがった。パチパチと拍手の音がした。
>鳥よ鳥 青い鳥&br;やえなり畑に止まるな
京三は歌いおわると、「うまいぞ!」と手をたたいたので、拍...
かれは座中をぐるっと見まわし、ボサボサ頭の徳善を名ざした。
徳善は頭をかきながら立ちあがったが、そくざに小話をはじめ...
「ある村の百姓家のことだけど、明け方、オンドリがコケコッ...
徳善は両手を重ねて、鼻が地べたにつくほど深く頭をさげた。...
「うまいもんだ。夜中にオンドリの鳴き声をだしたら、近所の...
「犬の吠え声だって、本物そっくりだ」&br;
「おれのうちへ来て、ネコの鳴き声を出して、ネズミをおっぱ...
みんな愉快になって、自分たちも動物の鳴き声をまねてみた。
子どもたちが楽しいひとときをすごしているとき、海の方から...
万洙はさじを手にしたまま、空を見あげた。
「力モメがあんなふうに飛んでるのを見ると、風が強くなりそ...
だが、誰1人その言葉に気をとめなかった。海はそれほどおだや...
余興が終わると、子どもたちはまためいめい好きなことをした...
大抵の者はつりを楽しんだ。マス、イワシ、クロソイ、ホッケ...
つりの見物をしていた万洙が空模様を心配して成哲に言った。
「もう帰ろうじゃないか」&br;
「大きいやつをもう少しつって行こう。まだ時間があるよ」
成哲はつりに夢中だった。
「荒れそうだぜ。さっき、力モメが群がって飛んでただろう。...
万洙に言われて見あげると、なるほど、さっきまで晴れわたっ...
「じゃ、帰ろう」
子どもたちは帰り支度を急いだ。入れ物ごとにいっぱい入った...
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