長編小説「15少年物語」（17） をテンプレートにして作成
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*長編小説「15少年物語」（17） [#q33ccfe3]
ほら穴につくと、茂漢は真っ先に中へ入った。
「さあ、どうだい。ここへ戸をつけ、あそこに小さな台所を作...
だが基昌は、首をかしげて言った。
「でもやっぱりせますぎるよ」&br;
「せまいのがかえっていいんだよ。お前、15人も一緒に暮らす...
「暗くて、なんだかおっかないな。あんな穴からへビが出て来...
「はじめのうちはちょっと気味が悪いけど、慣れれば大丈夫だ...
「ここは泉がなくて不便だな」&br;
「それも見つけるさ。向こうの谷間に泉があるのに、こっちに...
「なかったらどうするんだ」&br;
「井戸を掘るさ。家を建てるよりは、ずっと简単だろう」&br;
「掘ったら水が出てくるかな」&br;
「お前もずいぶん苦労性だなあ。水が出なけりゃ当分のあいだ...
3人はほら穴の前で火をおこし、ジャガイモを焼いて食べた。ひ...
「泉はどうもないみたいだ。いっそのこと井戸を掘ろうか」
と、基昌が言った。
茂漢は泉がなければ井戸を掘ろうと言ったものの、それがなま...
しかし、それを正直に言うわけにはいかなかった。
「いったんはじめたからには、けりをつけなきゃ。 昼めしを食...
朝の食べ残りのジャガイモで腹ごしらえをした3人は、ほら穴の...
「こんないい場所を捨てて、なんでわざわざ苦労するんだ。あ...
「わかったよ」
達柱はすぐ腰をあげた。
茂漢と基昌がほら穴に残った。
「なんて、楽なんだろう。もっと早く来ていたら、あんな苦労...
茂漢の話をよそに、基昌はもう軽いいびきをかいていた。やが...
ひと眠りした茂漢が目をこすって起きると、意外にもそばで達...
「こいつ、いつ来たんだ。おい達柱。海を見張らないで、なぜ...
「さっき、交替するためお前を起こしたじゃないか。返事した...
「なに、おれを起こしたって。いつ起こしたんだ」&br;
「だいぶ前だ。『うん』って返事したから、起きるだろうと思...
そう言えば、呼ばれた記憶がかすかにあった。茂漢はそれには...
「3時がすぎたよ。左側の谷間を探してみよう」&br;
「もう、そんなにたったのか」
基昌が目をこすりながら、起きあがった。
「仮小屋じゃいくら寝ても、寝た気がしなかったろう。寒いか...
3人は、左側の谷間も隅から隅まで探した。だが、泉は見つから...
茂漢は小屋を発つときとは違って、みなが一緒に泉谷へ行くべ...
「お前たちはここに残っていろよ。3人も行くことはないからな...
達柱と基昌はかえって、それをありがたく思った。
「茂漢、忘れちゃいけないことがあるよ」
達柱が真剣な顔つきで茂漢を呼び止めた。
「なんだ」&br;
「来るとき、きっと穀物を分けてもらうんだぞ」
茂漢はうれしくなって、達柱の肩をたたいてやりたかった。
（学校に行けなかったから学問はないけど、しっかりしたやつ...
茂漢は心の中で感心したが、口では反対のことを言った。
「そんなものくれって言うのはみみっちいよ。魚やけだものを...
「どうしてみみっちいんだ。穀物を分けるのは当たり前のこと...
「あいつらがくれるかな。それが食いたけりゃ行くなって言わ...
「じゃ、全部くれてやる気か。お前の父さんが借りてくれた船...
達柱が目をむいた。
「わかった。それじゃもらって来るよ」
茂漢は遅くなる前に帰らなければと道を急いだ。
茂漢は夕方、仮小屋についた。
1日の仕事を終えて、少年たちは泉のほとりで顔を洗っていた。...
「お前だけ来たのか。基昌と達柱はどうしたんだ」
京三が小屋の前で聞いた。
「おれたちは、ほら穴で暮らすことにしたんだ。お前行く支度...
「いいや」
京三はかぶりを振った。
「どうしてだ。基昌と達柱はほら穴を見て、こんないいところ...
基昌がほら穴に残ったと聞いて、京三は急に行きたくなった。...
「いやなら勝手にしろ。むりに引っ張っては行かないからな。...
こう言い捨てて、茂漢は中へ入って行った。
そこでは先に顔を洗った子たちが、夕食を食べようとしていた...
「いま帰ったのか。ずいぶん遅かったじゃないか。1日中待って...
「すまなかったな。基昌の荷物はどこだ。うん、これか。こっ...
茂漢はあちこちの隅から荷物を探しだした。
「お前たち、ほら穴で暮らすつもりなのか」
茂漢を見つめていた成哲が、さびしそうに言った。
「そうだよ。別れて暮らしちゃいけないのか。お前は見こみの...
はじめから強く出ないと、押されてしまいそうなので、茂漢は...
「まだだよ。お前が来たら一緒に相談しようと待ってたのに、...
「原因を突きとめたってしようがないや。またつぶれるにきま...
そばで聞いていた昌植が、こぶしを握って立ちあがった。
「お前は、また家がつぶれたらいいと思ってるのか」&br;
「おれがいつ、そう言ったんだ。とにかく家を建てるのは、お...
「仲間はどうなろうと、自分だけ生き残ればいいって言うんだ...
「そんな気はないよ。だから、ほら穴を見つけたとき、すぐ帰...
「ばか言うな。ほら穴に行くことだけが生きる道で、家を建て...
昌植は茂漢をにらんでいきまいた。
「なにっ、卑怯だと」&br;
「卑怯だとも。みんなで決めたことは、どんなことがあっても...
「じゃ建てろっ、皁く建ててみせろ」
このとき茂英が、「兄ちゃん」と叫んで前へ進み出た。2人の目...
「お前の出る幕じゃない。それより、さっさと荷物をまとめろ...
「兄ちゃんはどこへ行くの。死ぬ思いをしてここまで来たのに...
「どうしていけないんだ。おれたちはもともと、別の家で暮ら...
「ほんとうに兄ちゃんたら・・・。ここじゃ身内よりも仲よく...
「お前はまだ小さいから、なにもわからないんだ。つベこべ言...
「あたしは行かないわ。ここまで一緒に来て、別れ別れになる...
「行かないなら、引きずってでも連れて行くぞ」
しばらく沈黙がつづいた。茂漢の荒い息づかいが聞こえるだけ...
「京三、お前はどうする。行きたければ行こう」
京三の顔が赤くほてった。さっきまでは行こうかとも思ったが...
「人の心配はしないで、1人で行けよ。おれは行かないぞ」
きっぱり言ってしまうと、京三は気が楽になった。
いまいましそうににらみつけていた茂漢は、達柱と基昌、それ...
「さあ、行こう」
どなる茂漢に背を向けて、茂英はしくしく泣いていた。
「お前、強情を張る気だな」
茂漢が妹の肩をつかんだ。兄の性格をよく知っている茂英は、...
「いいわ、行ってやるわ」
兄の方にくるりと向き直った茂英の目から、涙がぽろぽろこぼ...
「茂英」
明玉とヤムジョンが目に涙をためて引き止めた。3人は手を取り...
「茂英、行かないで。あんたが行ったら、あたしたちどうする...
「おれたちだけ生き残ろうとして、ほら穴へ行くんじゃないん...
茂漢がいくぶんやわらいだ声で言った。
「おれも行くよ。ここじゃおれをいじめてばかりいるんだもん」
文基がこう言って、自分の持物を背負い袋につめこんだ。
朝責められたことを思いだしたら、急にくやしくなったのだ。...
「おれたちがやたらに怒ったのかよ。イモや豆をぬすみ食いし...
勇日が小さなこぶしを振って、つめ寄った。
「どうして、おればっかりいじめるんだ。達柱がもっとたくさ...
文基も引っこんでいなかった。
「達柱はここにいないじゃないか。お前は食ベなかったっての...
勇日はこぶしで、文基のあごを突きあげた。そばにいた徳善が...
「なんで、なぐるんだ」
文基も泣きべそをかいて、つかみかかろうとしたが、明玉に引...
「お前みたいに逃げるやつは、ぶんなぐったってかまわないん...
徳善に腕をつかまえられた勇日は、腹の虫がおさまらないで、...
「仲よしなのに、けんか別れしちゃいけないよ」
と、万洙がなだめた。
茂漢は、チビの文基がついて来るのが迷惑だったが、 反対する...
茂漢が穀物や道具を持って行こうとしていることは、成哲も知...
かれらも生きていかなければならないし、いつかはまた一緒に...
「みんなが力をあわせて、家を建て直して一緒に暮らしたらい...
成哲はうるんだ声でこう言った。文基のほかに、行くと言う者...
「じゃ、ほら穴で暮らす子たちに、船にあった穀物と道具を分...
みな驚いて成哲を見た。
（自分たちだけ楽しようと逃げだすやつらに、なんでやるんだ）
子どもたちの顔にはこう書いてあった。成哲はそれに気がつか...
「あの穀物物と道具は、おれたちみんなのものだから、5人分わ...
万洙は、沈んだ金剛丸から運びだした道具を持って来た。ほか...
穀物と道具はもちろん、食器やさじ、マッチまで分けてやって...
遠い無人島に流れついて、どんなことがあっても生死を共にし...
茂漢や文基が出て行くと、子どもたちは気抜けしたように座っ...
成哲も腕まくらをして、苦い思いにふけっていた。
（一度失敗したからって、仲間を捨てて行くなんて・・・。こ...
成哲は、茂漢にたいする憎しみとともに、言いしれぬ悲しみを...
成哲はふうっとため息をもらした。このときふと、アル島で見...
（激しい雨風にたえ、岩の中に根をおろして年中青々と茂るあ...
成哲はこう心に誓った。
CENTER:※ ※ ※ ※ ※
茂英と文基を連れてほら穴に戻った茂漢は、万事が思い通りに...
みなでほら穴の中を掃除して道具を整頓し、枯れ草を厚く敷き...
仮小屋にいたときは、毎晩たき火をたいてあたったものだが、...
「あしたはまず台所を作ろう。茂英に外で炊事をさせるわけに...
「あいつらも乗せていくの」
と、文基が聞いた。
「もちろんさ。家を建てることでは意見があわなくて引っ越し...
茂漢は4人の顔を見た。答えはしなかったが、みな茂漢の気持が...
「井戸も掘らなくちゃな」
達柱が沈黙を破った。
「先に台所を作ってから、井戸を掘ろう。谷間に石がごろごろ...
茂英が明りをもって行ったり来たりしながら、適当な置き場所...
「ひと晩くらい下においとけよ。おれがあした格好よく台を作...
「でも、お皿をひっくりかえしたらどうするの」
茂英は小さいくぼみを見つけて油皿を置いた。そして首をかし...
「あら、これすすじゃない」
茂英は指先についた黒いものを、男の子たちに見せた。4人が明...
「ここに人が住んでるのか」
文基がこわそうな目つきをして言った。
「そんならどうして、がらんとしてるんだ。きっと猟師が、一...
茂漢は気にもとめなかった。
5人の子どもたちはあくる日の朝早くから、ほら穴の手入れにと...
ほら穴の前で草をむしっていた茂英が、あきびんとあきかんを...
「あそこにこんなものがあったわ。このほら穴にきっと人が住...
男の子たちが寄って来て、びんとあきかんを手に取って見た。
「原住民がいたのかな」&br;
「原住民がかんづめを食うもんか」
茂漢が達柱の言葉を否定した。
「じゃ、誰がいたんだろう」&br;
「おれたちみたいに、しけで流されて来た人たちじゃないのか」
と、基昌が言った。
「どうもそうらしいな。難破してこのほら穴で暮らしてるうち...
やっぱり兄ちゃんは利口だなあと思って、茂英はにつこりした。
ある夕方、わなを見に行った達柱が、喜び勇んで帰って来た。
「あしたは獲物がありそうだぞ」&br;
「どうしてだい」
と、茂漢が聞いた。
「けだものの穴を見つけたんだ。出入りした跡まであるから間...
「そこにわなを移したのか」&br;
「大きいやつを1つだけ移したよ。お前と相談しないで、3つと...
「相談なんかしなくても、移せばよかったのに。とにかくあし...
翌朝、茂漢は達柱について山道を登って行った。ほら穴から遠...
きのう、達柱が岩の前に仕掛けたわなにはなにもかかっていな...
「1匹はかかるはずなのに、おかしいなあ。おい、これ確かにけ...
達柱はがっかりしたように言った。それには耳をかさず、茂漢...
穴は大きい岩の下にあった。前には木がなく、草もあまり生え...
（これはほら穴に住んでいた人たちが、出入りした跡かもしれ...
茂漢は腰をかがめて穴をのぞきこんだ。中は真っ暗だが、けだ...
「なんか、見えるかい」&br;
「暗くてなんにも見えないよ。お前、中をのぞいても見ないで...
「だって、オオカミやヤマイヌなんかに食いつかれたら、大変...
こう言いながら、達柱も用心深く穴をのぞいた。やっぱりなに...
「中に入ってみないか。なんの穴だか調べてみよう」&br;
「わざわざ入らなくたって、けだものさえつかまえればいいじ...
「なんて臆病なんだ。どけ、おれが入ってみるから」
茂漢は達柱の肩をつかんでおしのけた。そして、なにげなく入...
「なんだ、これは」
針金には細い線がついていて、穴の中に引かれている。
「お前、けだものの穴だって言ったな。けだものがこんなまね...
茂漢は細い線をつかんで、岩の針金を引き抜こうとした。
「よせよ。なにかもわからないで、引き抜いたらどうするんだ...
「うん、それじゃおれが出て来るまで待ってろよ」
こう言い残して、茂漢は背中をかがめて中に入った。大人が2、...
茂漢はカニのようにはって外へ出た。
「なんにもないのか」&br;
「変なものがあるんだ。でも暗くてよくわからないから、たい...
2人は松ごっぱに火をつけて中へ入った。火に照らしてみると、...
「これ、汽船で使う機械じゃないのか」
と、達柱が言った。
「どうしてわかるんだ」&br;
「これを見ろよ。どこかに取りつけてあった跡があるじゃない...
達柱は、箱のうしろにあるくぎ穴を指で示した。
「おれもそう思うけど、汽船でなにに使ってたのか知る必要が...
茂漢はこう言って、前面についているボタン状のものにさわっ...
「基昌を呼んで来よう。あいつなら少しはわかるだろう」&br;
「そうだ。おれが連れて来るよ」&br;
「早く行って来いよ。文基と茂英には内緒だぞ。泉谷の子たち...
「心配するな。おれもそれくらいのことは知ってるよ」
達柱は山を一目散に駆けおりて行った。
茂漢は箱を何度ものぞきこんで考えたが、どうしてもわからな...
「あれはまた、なんだろう」
大きい箱にばかり気をとられて、それには注意が向かなかった...
そっとふたをあけてみたが、中の物がなにか、やはり見当がつ...
（船の羅針盤だな。うまく作ったもんだ）
茂漢は羅針盤を箱にしまってふたをした。基昌らが来たらしく...
「あれたちには、言わなかったんだろう」
茂漢は入って来る達柱に聞いた。
「うん、基昌が1人で海を見張っていたから、こっそり連れて来...
2人が話をしているあいだ、基昌は穴の中を珍しそうに見まわし...
「お前、これなんの機械か知らないか。達柱と一緒に見つけた...
茂漢はたいまつを前へ突きだした。
基昌は首をかしげてながめ、あちこちいじってみた。
「お前も知らないらしいな」
からかうように言う達柱にはかまわず、基昌はボタンのような...
「どうも、わからないなあ」&br;
「どんなところで使ってた物かは、わかるかい」&br;
「さあね」
基昌は目をあげて茂漢を見た。
「どこで使ってたものか、あててみようか」
茂漢は笑って自信たっぷりに言った。そして箱をあけて中の物...
「羅針盤だな。それもここにあったのか」
茂漢がうなずくと、基昌は深刻な顔つきになった。
基昌から羅針盤の説明を聞いた達柱は、好奇心に目を輝かせて...
「ちえっ、使えないや。電池が切れたんだろう」
達柱が投げ捨てようとすると、茂漢が小型のケースをさしだし...
「球が切れてないか見ろよ。これは豆電球のケースだ」
達柱は箱を受け取ってふたをあけて見た。豆電球が5つも入って...
大きい箱のまわりを調べていた基昌は、なにかをくるんだ布き...
「おい、これを見ろよ。おれ、ずっと前、郵便局へ電報打ちに...
「あれっ、これ防寒用の耳あてじゃないか。それにしちゃ、毛...
レシーパーだった。達注はそれを両耳にかけてみながらはしゃ...
「鉄のそろばんみたいだな。なんだろう」&br;
「おれも名前は知らないけど、郵便局で見たときは、達柱が持...
基昌は、茂漢が手にしていた電鍵盤のキーをたたいて見せなが...
「だから、これは汽船で使ってた無電機なんだな」
茂漢は大喜びで、箱をなでまわした。
「おれもそう思うよ。電話は電線を通して話すんだけど、無電...
「きっと、おれたちみたいに難破した人たちが、船から持って...
達柱はにこにこして基昌に聞いた。
そう言れれて小さい箱に気がついた基昌は、ふたを開けてみて...
「無電も電気がないと打てないのだ。ここには電気がないだろ...
「だからこの懐中電灯は、暗くて無電が打てないから、持って...
達柱はしたり顔で言った。
「基昌の言うとおり、その人たちは無電で助け船を呼んで、故...
茂漢は親指を立ててみせながら言った。基昌も乗り気になって...
昼食後、3人は、茂英と文基に狩りに行くと言って穴へ出かけた。
基昌は無電機のボタンや部品を動かしてみたが、なんの反応も...
「あしたは直せるだろうな」
外に出たとき、茂漢が基昌に聞いた。
「さあ、とにかくやってみよう。夜もやりたいんだけど、食事...
基昌はほら穴へ持って行って直したかったが、茂漢が賛成しそ...
「1日中いじってもあきないのか。夜は寝なくちゃな。きょうは...
かれらは3日間、穴に入りびたりで無電機と取り組んだが、むだ...
もできていない。そうかといって、無電機の修理は絶対にやめ...
茂漢は帰りながら、2人に相談をもちかけた。
「あしたから、無電機は基昌に任せて、おれと達柱は魚取りや...
「そうしよう。どうせ無電機は基昌しか直せないもん」&br;
「基昌、お前はどう思う」&br;
「両方とも大事な仕事だから、反対はできないけれど・・・」
基昌は言葉じりをにごした。
「なんだ。言いたいことがあったら言えよ」&br;
「おれの力でなおせるかどうか、心配なんだ」&br;
「情けないこと言うな。おまえがやらなきゃ誰がなおすんだ。...
「それもそうだな。じゃ、頑張ってみるよ」
基昌は何度かうなずいて見せた。
（芸術）
RIGHT:'''2020年の記事'''
#br
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//（芸術 2020.09.20）
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*長編小説「15少年物語」（17） [#q33ccfe3]
ほら穴につくと、茂漢は真っ先に中へ入った。
「さあ、どうだい。ここへ戸をつけ、あそこに小さな台所を作...
だが基昌は、首をかしげて言った。
「でもやっぱりせますぎるよ」&br;
「せまいのがかえっていいんだよ。お前、15人も一緒に暮らす...
「暗くて、なんだかおっかないな。あんな穴からへビが出て来...
「はじめのうちはちょっと気味が悪いけど、慣れれば大丈夫だ...
「ここは泉がなくて不便だな」&br;
「それも見つけるさ。向こうの谷間に泉があるのに、こっちに...
「なかったらどうするんだ」&br;
「井戸を掘るさ。家を建てるよりは、ずっと简単だろう」&br;
「掘ったら水が出てくるかな」&br;
「お前もずいぶん苦労性だなあ。水が出なけりゃ当分のあいだ...
3人はほら穴の前で火をおこし、ジャガイモを焼いて食べた。ひ...
「泉はどうもないみたいだ。いっそのこと井戸を掘ろうか」
と、基昌が言った。
茂漢は泉がなければ井戸を掘ろうと言ったものの、それがなま...
しかし、それを正直に言うわけにはいかなかった。
「いったんはじめたからには、けりをつけなきゃ。 昼めしを食...
朝の食べ残りのジャガイモで腹ごしらえをした3人は、ほら穴の...
「こんないい場所を捨てて、なんでわざわざ苦労するんだ。あ...
「わかったよ」
達柱はすぐ腰をあげた。
茂漢と基昌がほら穴に残った。
「なんて、楽なんだろう。もっと早く来ていたら、あんな苦労...
茂漢の話をよそに、基昌はもう軽いいびきをかいていた。やが...
ひと眠りした茂漢が目をこすって起きると、意外にもそばで達...
「こいつ、いつ来たんだ。おい達柱。海を見張らないで、なぜ...
「さっき、交替するためお前を起こしたじゃないか。返事した...
「なに、おれを起こしたって。いつ起こしたんだ」&br;
「だいぶ前だ。『うん』って返事したから、起きるだろうと思...
そう言えば、呼ばれた記憶がかすかにあった。茂漢はそれには...
「3時がすぎたよ。左側の谷間を探してみよう」&br;
「もう、そんなにたったのか」
基昌が目をこすりながら、起きあがった。
「仮小屋じゃいくら寝ても、寝た気がしなかったろう。寒いか...
3人は、左側の谷間も隅から隅まで探した。だが、泉は見つから...
茂漢は小屋を発つときとは違って、みなが一緒に泉谷へ行くべ...
「お前たちはここに残っていろよ。3人も行くことはないからな...
達柱と基昌はかえって、それをありがたく思った。
「茂漢、忘れちゃいけないことがあるよ」
達柱が真剣な顔つきで茂漢を呼び止めた。
「なんだ」&br;
「来るとき、きっと穀物を分けてもらうんだぞ」
茂漢はうれしくなって、達柱の肩をたたいてやりたかった。
（学校に行けなかったから学問はないけど、しっかりしたやつ...
茂漢は心の中で感心したが、口では反対のことを言った。
「そんなものくれって言うのはみみっちいよ。魚やけだものを...
「どうしてみみっちいんだ。穀物を分けるのは当たり前のこと...
「あいつらがくれるかな。それが食いたけりゃ行くなって言わ...
「じゃ、全部くれてやる気か。お前の父さんが借りてくれた船...
達柱が目をむいた。
「わかった。それじゃもらって来るよ」
茂漢は遅くなる前に帰らなければと道を急いだ。
茂漢は夕方、仮小屋についた。
1日の仕事を終えて、少年たちは泉のほとりで顔を洗っていた。...
「お前だけ来たのか。基昌と達柱はどうしたんだ」
京三が小屋の前で聞いた。
「おれたちは、ほら穴で暮らすことにしたんだ。お前行く支度...
「いいや」
京三はかぶりを振った。
「どうしてだ。基昌と達柱はほら穴を見て、こんないいところ...
基昌がほら穴に残ったと聞いて、京三は急に行きたくなった。...
「いやなら勝手にしろ。むりに引っ張っては行かないからな。...
こう言い捨てて、茂漢は中へ入って行った。
そこでは先に顔を洗った子たちが、夕食を食べようとしていた...
「いま帰ったのか。ずいぶん遅かったじゃないか。1日中待って...
「すまなかったな。基昌の荷物はどこだ。うん、これか。こっ...
茂漢はあちこちの隅から荷物を探しだした。
「お前たち、ほら穴で暮らすつもりなのか」
茂漢を見つめていた成哲が、さびしそうに言った。
「そうだよ。別れて暮らしちゃいけないのか。お前は見こみの...
はじめから強く出ないと、押されてしまいそうなので、茂漢は...
「まだだよ。お前が来たら一緒に相談しようと待ってたのに、...
「原因を突きとめたってしようがないや。またつぶれるにきま...
そばで聞いていた昌植が、こぶしを握って立ちあがった。
「お前は、また家がつぶれたらいいと思ってるのか」&br;
「おれがいつ、そう言ったんだ。とにかく家を建てるのは、お...
「仲間はどうなろうと、自分だけ生き残ればいいって言うんだ...
「そんな気はないよ。だから、ほら穴を見つけたとき、すぐ帰...
「ばか言うな。ほら穴に行くことだけが生きる道で、家を建て...
昌植は茂漢をにらんでいきまいた。
「なにっ、卑怯だと」&br;
「卑怯だとも。みんなで決めたことは、どんなことがあっても...
「じゃ建てろっ、皁く建ててみせろ」
このとき茂英が、「兄ちゃん」と叫んで前へ進み出た。2人の目...
「お前の出る幕じゃない。それより、さっさと荷物をまとめろ...
「兄ちゃんはどこへ行くの。死ぬ思いをしてここまで来たのに...
「どうしていけないんだ。おれたちはもともと、別の家で暮ら...
「ほんとうに兄ちゃんたら・・・。ここじゃ身内よりも仲よく...
「お前はまだ小さいから、なにもわからないんだ。つベこべ言...
「あたしは行かないわ。ここまで一緒に来て、別れ別れになる...
「行かないなら、引きずってでも連れて行くぞ」
しばらく沈黙がつづいた。茂漢の荒い息づかいが聞こえるだけ...
「京三、お前はどうする。行きたければ行こう」
京三の顔が赤くほてった。さっきまでは行こうかとも思ったが...
「人の心配はしないで、1人で行けよ。おれは行かないぞ」
きっぱり言ってしまうと、京三は気が楽になった。
いまいましそうににらみつけていた茂漢は、達柱と基昌、それ...
「さあ、行こう」
どなる茂漢に背を向けて、茂英はしくしく泣いていた。
「お前、強情を張る気だな」
茂漢が妹の肩をつかんだ。兄の性格をよく知っている茂英は、...
「いいわ、行ってやるわ」
兄の方にくるりと向き直った茂英の目から、涙がぽろぽろこぼ...
「茂英」
明玉とヤムジョンが目に涙をためて引き止めた。3人は手を取り...
「茂英、行かないで。あんたが行ったら、あたしたちどうする...
「おれたちだけ生き残ろうとして、ほら穴へ行くんじゃないん...
茂漢がいくぶんやわらいだ声で言った。
「おれも行くよ。ここじゃおれをいじめてばかりいるんだもん」
文基がこう言って、自分の持物を背負い袋につめこんだ。
朝責められたことを思いだしたら、急にくやしくなったのだ。...
「おれたちがやたらに怒ったのかよ。イモや豆をぬすみ食いし...
勇日が小さなこぶしを振って、つめ寄った。
「どうして、おればっかりいじめるんだ。達柱がもっとたくさ...
文基も引っこんでいなかった。
「達柱はここにいないじゃないか。お前は食ベなかったっての...
勇日はこぶしで、文基のあごを突きあげた。そばにいた徳善が...
「なんで、なぐるんだ」
文基も泣きべそをかいて、つかみかかろうとしたが、明玉に引...
「お前みたいに逃げるやつは、ぶんなぐったってかまわないん...
徳善に腕をつかまえられた勇日は、腹の虫がおさまらないで、...
「仲よしなのに、けんか別れしちゃいけないよ」
と、万洙がなだめた。
茂漢は、チビの文基がついて来るのが迷惑だったが、 反対する...
茂漢が穀物や道具を持って行こうとしていることは、成哲も知...
かれらも生きていかなければならないし、いつかはまた一緒に...
「みんなが力をあわせて、家を建て直して一緒に暮らしたらい...
成哲はうるんだ声でこう言った。文基のほかに、行くと言う者...
「じゃ、ほら穴で暮らす子たちに、船にあった穀物と道具を分...
みな驚いて成哲を見た。
（自分たちだけ楽しようと逃げだすやつらに、なんでやるんだ）
子どもたちの顔にはこう書いてあった。成哲はそれに気がつか...
「あの穀物物と道具は、おれたちみんなのものだから、5人分わ...
万洙は、沈んだ金剛丸から運びだした道具を持って来た。ほか...
穀物と道具はもちろん、食器やさじ、マッチまで分けてやって...
遠い無人島に流れついて、どんなことがあっても生死を共にし...
茂漢や文基が出て行くと、子どもたちは気抜けしたように座っ...
成哲も腕まくらをして、苦い思いにふけっていた。
（一度失敗したからって、仲間を捨てて行くなんて・・・。こ...
成哲は、茂漢にたいする憎しみとともに、言いしれぬ悲しみを...
成哲はふうっとため息をもらした。このときふと、アル島で見...
（激しい雨風にたえ、岩の中に根をおろして年中青々と茂るあ...
成哲はこう心に誓った。
CENTER:※ ※ ※ ※ ※
茂英と文基を連れてほら穴に戻った茂漢は、万事が思い通りに...
みなでほら穴の中を掃除して道具を整頓し、枯れ草を厚く敷き...
仮小屋にいたときは、毎晩たき火をたいてあたったものだが、...
「あしたはまず台所を作ろう。茂英に外で炊事をさせるわけに...
「あいつらも乗せていくの」
と、文基が聞いた。
「もちろんさ。家を建てることでは意見があわなくて引っ越し...
茂漢は4人の顔を見た。答えはしなかったが、みな茂漢の気持が...
「井戸も掘らなくちゃな」
達柱が沈黙を破った。
「先に台所を作ってから、井戸を掘ろう。谷間に石がごろごろ...
茂英が明りをもって行ったり来たりしながら、適当な置き場所...
「ひと晩くらい下においとけよ。おれがあした格好よく台を作...
「でも、お皿をひっくりかえしたらどうするの」
茂英は小さいくぼみを見つけて油皿を置いた。そして首をかし...
「あら、これすすじゃない」
茂英は指先についた黒いものを、男の子たちに見せた。4人が明...
「ここに人が住んでるのか」
文基がこわそうな目つきをして言った。
「そんならどうして、がらんとしてるんだ。きっと猟師が、一...
茂漢は気にもとめなかった。
5人の子どもたちはあくる日の朝早くから、ほら穴の手入れにと...
ほら穴の前で草をむしっていた茂英が、あきびんとあきかんを...
「あそこにこんなものがあったわ。このほら穴にきっと人が住...
男の子たちが寄って来て、びんとあきかんを手に取って見た。
「原住民がいたのかな」&br;
「原住民がかんづめを食うもんか」
茂漢が達柱の言葉を否定した。
「じゃ、誰がいたんだろう」&br;
「おれたちみたいに、しけで流されて来た人たちじゃないのか」
と、基昌が言った。
「どうもそうらしいな。難破してこのほら穴で暮らしてるうち...
やっぱり兄ちゃんは利口だなあと思って、茂英はにつこりした。
ある夕方、わなを見に行った達柱が、喜び勇んで帰って来た。
「あしたは獲物がありそうだぞ」&br;
「どうしてだい」
と、茂漢が聞いた。
「けだものの穴を見つけたんだ。出入りした跡まであるから間...
「そこにわなを移したのか」&br;
「大きいやつを1つだけ移したよ。お前と相談しないで、3つと...
「相談なんかしなくても、移せばよかったのに。とにかくあし...
翌朝、茂漢は達柱について山道を登って行った。ほら穴から遠...
きのう、達柱が岩の前に仕掛けたわなにはなにもかかっていな...
「1匹はかかるはずなのに、おかしいなあ。おい、これ確かにけ...
達柱はがっかりしたように言った。それには耳をかさず、茂漢...
穴は大きい岩の下にあった。前には木がなく、草もあまり生え...
（これはほら穴に住んでいた人たちが、出入りした跡かもしれ...
茂漢は腰をかがめて穴をのぞきこんだ。中は真っ暗だが、けだ...
「なんか、見えるかい」&br;
「暗くてなんにも見えないよ。お前、中をのぞいても見ないで...
「だって、オオカミやヤマイヌなんかに食いつかれたら、大変...
こう言いながら、達柱も用心深く穴をのぞいた。やっぱりなに...
「中に入ってみないか。なんの穴だか調べてみよう」&br;
「わざわざ入らなくたって、けだものさえつかまえればいいじ...
「なんて臆病なんだ。どけ、おれが入ってみるから」
茂漢は達柱の肩をつかんでおしのけた。そして、なにげなく入...
「なんだ、これは」
針金には細い線がついていて、穴の中に引かれている。
「お前、けだものの穴だって言ったな。けだものがこんなまね...
茂漢は細い線をつかんで、岩の針金を引き抜こうとした。
「よせよ。なにかもわからないで、引き抜いたらどうするんだ...
「うん、それじゃおれが出て来るまで待ってろよ」
こう言い残して、茂漢は背中をかがめて中に入った。大人が2、...
茂漢はカニのようにはって外へ出た。
「なんにもないのか」&br;
「変なものがあるんだ。でも暗くてよくわからないから、たい...
2人は松ごっぱに火をつけて中へ入った。火に照らしてみると、...
「これ、汽船で使う機械じゃないのか」
と、達柱が言った。
「どうしてわかるんだ」&br;
「これを見ろよ。どこかに取りつけてあった跡があるじゃない...
達柱は、箱のうしろにあるくぎ穴を指で示した。
「おれもそう思うけど、汽船でなにに使ってたのか知る必要が...
茂漢はこう言って、前面についているボタン状のものにさわっ...
「基昌を呼んで来よう。あいつなら少しはわかるだろう」&br;
「そうだ。おれが連れて来るよ」&br;
「早く行って来いよ。文基と茂英には内緒だぞ。泉谷の子たち...
「心配するな。おれもそれくらいのことは知ってるよ」
達柱は山を一目散に駆けおりて行った。
茂漢は箱を何度ものぞきこんで考えたが、どうしてもわからな...
「あれはまた、なんだろう」
大きい箱にばかり気をとられて、それには注意が向かなかった...
そっとふたをあけてみたが、中の物がなにか、やはり見当がつ...
（船の羅針盤だな。うまく作ったもんだ）
茂漢は羅針盤を箱にしまってふたをした。基昌らが来たらしく...
「あれたちには、言わなかったんだろう」
茂漢は入って来る達柱に聞いた。
「うん、基昌が1人で海を見張っていたから、こっそり連れて来...
2人が話をしているあいだ、基昌は穴の中を珍しそうに見まわし...
「お前、これなんの機械か知らないか。達柱と一緒に見つけた...
茂漢はたいまつを前へ突きだした。
基昌は首をかしげてながめ、あちこちいじってみた。
「お前も知らないらしいな」
からかうように言う達柱にはかまわず、基昌はボタンのような...
「どうも、わからないなあ」&br;
「どんなところで使ってた物かは、わかるかい」&br;
「さあね」
基昌は目をあげて茂漢を見た。
「どこで使ってたものか、あててみようか」
茂漢は笑って自信たっぷりに言った。そして箱をあけて中の物...
「羅針盤だな。それもここにあったのか」
茂漢がうなずくと、基昌は深刻な顔つきになった。
基昌から羅針盤の説明を聞いた達柱は、好奇心に目を輝かせて...
「ちえっ、使えないや。電池が切れたんだろう」
達柱が投げ捨てようとすると、茂漢が小型のケースをさしだし...
「球が切れてないか見ろよ。これは豆電球のケースだ」
達柱は箱を受け取ってふたをあけて見た。豆電球が5つも入って...
大きい箱のまわりを調べていた基昌は、なにかをくるんだ布き...
「おい、これを見ろよ。おれ、ずっと前、郵便局へ電報打ちに...
「あれっ、これ防寒用の耳あてじゃないか。それにしちゃ、毛...
レシーパーだった。達注はそれを両耳にかけてみながらはしゃ...
「鉄のそろばんみたいだな。なんだろう」&br;
「おれも名前は知らないけど、郵便局で見たときは、達柱が持...
基昌は、茂漢が手にしていた電鍵盤のキーをたたいて見せなが...
「だから、これは汽船で使ってた無電機なんだな」
茂漢は大喜びで、箱をなでまわした。
「おれもそう思うよ。電話は電線を通して話すんだけど、無電...
「きっと、おれたちみたいに難破した人たちが、船から持って...
達柱はにこにこして基昌に聞いた。
そう言れれて小さい箱に気がついた基昌は、ふたを開けてみて...
「無電も電気がないと打てないのだ。ここには電気がないだろ...
「だからこの懐中電灯は、暗くて無電が打てないから、持って...
達柱はしたり顔で言った。
「基昌の言うとおり、その人たちは無電で助け船を呼んで、故...
茂漢は親指を立ててみせながら言った。基昌も乗り気になって...
昼食後、3人は、茂英と文基に狩りに行くと言って穴へ出かけた。
基昌は無電機のボタンや部品を動かしてみたが、なんの反応も...
「あしたは直せるだろうな」
外に出たとき、茂漢が基昌に聞いた。
「さあ、とにかくやってみよう。夜もやりたいんだけど、食事...
基昌はほら穴へ持って行って直したかったが、茂漢が賛成しそ...
「1日中いじってもあきないのか。夜は寝なくちゃな。きょうは...
かれらは3日間、穴に入りびたりで無電機と取り組んだが、むだ...
もできていない。そうかといって、無電機の修理は絶対にやめ...
茂漢は帰りながら、2人に相談をもちかけた。
「あしたから、無電機は基昌に任せて、おれと達柱は魚取りや...
「そうしよう。どうせ無電機は基昌しか直せないもん」&br;
「基昌、お前はどう思う」&br;
「両方とも大事な仕事だから、反対はできないけれど・・・」
基昌は言葉じりをにごした。
「なんだ。言いたいことがあったら言えよ」&br;
「おれの力でなおせるかどうか、心配なんだ」&br;
「情けないこと言うな。おまえがやらなきゃ誰がなおすんだ。...
「それもそうだな。じゃ、頑張ってみるよ」
基昌は何度かうなずいて見せた。
（芸術）
RIGHT:'''2020年の記事'''
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//（芸術 2020.09.20）
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