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*父は今いずこ [#qc48685c]
20世紀前半、日本帝国主義者が朝鮮を植民地にして、840万人以上の朝鮮の青壮年を強制連行し、戦場と苦役の場で死と苦痛を強いたことは世に広く知られています。多くの朝鮮人強制連行犠牲者の遺族が長い歳月、恨みに耐えて来ました。

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朝鮮人強制連行犠牲者　''キム・ジョンピョ''（左、1943年）
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ピョンヤン市((平壌市（평양시）))チュン区域((中区域（중구역）))に住む80歳の''キム・ウォンギョン''さんは、胸が裂けるような思いで未だに帰らない父を呼び、また呼んでいます。

>「私は日帝に強制連行されて無念の死を強いられたキム・ジョンピョの次男のキム・ウォンギョンです。父は、日帝が朝鮮の青壮年を徴兵に強制連行するという話を聞いて、1943年初め、祖母と母と相談して、中国のハルビンに住んでいる従兄弟のところへ身を逃れました。父は情勢がやや緩和したとの話を人づてに聞いて、6ヶ月ぶりにチョンジンの家に戻りましたが、これを察知した侵略軍は直ちに襲い掛かり、父を連行しました。しばらくして、父がチョンジン埠頭で船に乗せられて日本に連行されるということを聞いた祖母と母は、当時五つの兄と三つの私の手を取って、夢中でチョンジン埠頭に走って行ったと言います。生死がわからない道に立つとき、父は、金日成将軍がペクトゥ山で日帝侵略軍を打ち倒しているから日本はすぐ滅びるに違いない、それまで気を挫かずに生きることと、長男が学校に行く頃にはきっと帰って来るという言葉を残して、国を後にしたと言います。いよいよ船が発つと、父と母は顔が消えるまで互いに手を振って、喉が裂けんばかりに呼んで、また呼んだとのことです。船が埠頭を離れる時、父は何か大きな声で話しましたが、母は日帝に対する憎しみと悲しみがこみ上げてきて、何一つ聞き取れなかったと言います。

>1943年の晩秋のことでした。父が連行された時から数ヵ月後、母は女の子を産みました。母は、私たち3人兄弟を育てるため苦労の限りを尽くしました。まともな人も息絶え絶えの世知辛い世の中で、女手一つで3人の子を育てるのは容易なことではありませんでした。今も母が早朝から夜遅くまで雨の日、雪の日かまわず、また仕事のよしあしを選ばずに僅かの魚を手に入れるため苦労した姿や、魚を穀物と取り替えて数里の夜道を歩いて家に帰ってきては、お腹がすいて弱弱しく寝転んでいる私たち3人兄弟を涙の中、眺めていたその姿がつい昨日のことのように思い起こされます。

>1945年8月、日帝が敗北し、国が解放されると、日本に連行された人たちが九死に一生を得て帰って来るという便りがあっちこっちから届きました。すると母は、すぐかけつけて行って、父のことを聞いてみたり、もしかすれば、と駅と埠頭に出て父を待ちわびながら何日も夜を明かしたりしました。父がまだ帰って来ないのを見ると、きっとなくなったに違いないと言って、霊を祭っては、と親戚やらが話しかけると、母は怒って、まだ死んだという便りもないのに祭るとは何事なの、音信不通は無事息災と言うが、きっと生きて帰って来るでしょうと言って、父を待ちわびました。

>国の解放後、わが家も土地をただで分与され、暮らし向きもよくなりました。また、兄弟皆が大学を卒業して重責に就きました。しかし歳月がたっても父への思いは募るばかりでした。祖国に帰ってくる在日朝鮮人を乗せた帰国船が埠頭に着くたびに、もしかして父が帰って来るのでは、と言う思いで待っていました。その私たちに60年が過ぎて、父の便りが届きました。関係部門の人が訪ねて来て、父の名を呼んだ時、私は驚きの余り、自分の耳を疑いました。いよいよ父が生きて帰って来ると思いました。ところが家族が待ちわびていた父の便りは、晴天の霹靂のようなものでした。東京の祐天寺にある朝鮮人強制連行犠牲者の遺骨の名簿に父の名が載っているとのことでした。それに父の位牌が、犠牲者の遺族みなと過去の被害者の恨みと非難の的となっている靖国神社にあると言うことを聞いて、憤激を禁じえませんでした。父母妻子が待っているふるさとへ戻れなかった父の位牌が、なぜそこにあるのか、どうしても納得がいかず、また想像もできないことでした。

>祐天寺の遺骨の名簿には父が旧日本軍の独立歩兵第373大隊に所属していて、1944年12月31日、セルベス島でマラリアと脚気病にかかって死亡したと記載されていました。人が死んだら、せめてもの遺族に知らせるのが当たり前でしょう。両親に奉公し、幼い子たちを元気に育てるべき30代の青年を強制連行して死なしては、それについて何の通知もせず、60年の歳月を放置しておいたと言うのはとうてい許せないことです。そして私の父の遺骨はいったいどこにあるというのですか。これは恨みを抱いて死んだ父を再び死なせ、60年もの間、わたしたちの家族を不幸と涙の中に追い込んだ悪辣な犯罪でした。

>2004年12月、私は東京で行われる朝鮮人強制連行犠牲者の追悼会に参加するという通知を受けました。その日、私と家族のみなはまんじりともせず、夜を明かしました。たとえ生きて帰れなかった父の遺骨でも、自分の手で触ってみたかったです。父を待ちわびて一生を孤独に送った母の思いも込めて、また父の霊前に酒でも注いで深々とお辞儀をすれば、あの世でも安らかに眠ることができると思いながら私はその日を指折り待っていました。ところが日本政府の人道にもとる行為のため、日本に行けなくなり、夢にまで見た父の遺骨を抱いてみる機会も逃し、それに息子としての道義も守ることができませんでした。言うに言われぬこのような恨めしい、驚きあきれたことがまたあるでしょうか。息子が父の遺骨を訪ねることまで遮る国はどこにもありません。

>どうして日本政府は私たちを引き続き騙し、癒されない胸の傷跡にまたもや刃物を突きつけるのでしょうか。日帝の過去の犯罪の被害者である父の名を、世界の非難の的となっている戦犯の位牌と並んでおいている日本政府の非人間的な行為は、強制連行被害者とその遺族への卑劣な欺瞞で酷い冒涜だと言わざるを得ません。私は父を家族の許から奪って死なせ、靖国神社の悪名高い戦犯と合祀しただけでなく、過去の侵略戦争を美化し、軍国主義をあおるのに悪用する日本政府の厚顔無恥な行為を強く断罪するものです。私の父だけでなく、全ての朝鮮人強制連行犠牲者の魂を、血みどろの日本軍国主義の亡霊と共に置くのは絶対駄目です。私は、朝鮮の遺族皆と、過去の被害者の思いを込めて、日本政府が私たちに加えた精神的苦痛と我慢ならない人権蹂躙行為について謝罪し、賠償し、父の遺骸を送り返すことを強く求めるものです」

（世界と朝鮮）

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RIGHT:'''2022.03.31の記事'''
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//（世界と朝鮮 2022.03.31）
//220401_父は今いずこ
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