長編小説「15少年物語」（21） をテンプレートにして作成
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*長編小説「15少年物語」（21） [#o287a514]
丸太小屋ではこけら板で屋根をふき、オンドルの床石を敷くと...
ふしん中につぶれたり、茂漢に逃げられたりしたときはがっか...
（もうじき冬が来て海が凍りつけば、この島で冬を越すことに...
こう思うと目の前が暗くなった。
嵐にあって以来の2ヵ月間、成哲は肋け船のことばかり考えてい...
だが、いまはもう希望もうすれてしまった。1ヵ月海で漂流した...
（ただ船が通るのを待つのでなく、助け船を呼ぶ方法はないも...
考えれば考えるほど、気がふさいだ。
島や海の上をおおって飛びかう鳥の群れを見るたびに、成哲は...
（あの鳥たちが口がきけて、おれたちの気持を察してくれたら...
こんな空想はすぐ、ため息にかき消されてしまうのだった。
それが、きのう伝書バトの足輪を見てからは、またあわい希望...
（渡り鳥の足に手紙をつけて送ったら、どうだろうか）
成哲は胸をおどらせて考えた。
あの群がり飛ぶ無数の鳥は、大半が渡り鳥なのだ。冬が来れば...
成哲はふと、ある探険談を思いだした。北極を探険中氷山にぶ...
（そうだ。海難にあった者は国籍にかかわりなく、通過中の船...
成哲は鳥の群れをいとしそうにながめた。鳴きしきる声や羽ば...
汽船に乗りこんで、汽笛を鳴らしながらキンヨウルに向かう自...
「なにをにやにやしてるんだ」
俊浩に声をかけられて、成哲は現実に引き戻された。惜しい夢...
「きのう伝書バトを見たろう。そのことからいいことを思いつ...
「どんなことだ」&br;
「船を待ってばかりいないで、ここへ呼ぶのさ」&br;
「なんだって。いったいどうやって呼ぶんだ」&br;
「お前の部下の力を借りるんだ」&br;
「おれの部下だって？」&br;
「そんなに驚くことはないよ。もうじき渡り鳥が南の国に飛ん...
「そりゃな」&br;
「伝書バトに手紙をくくって送るように、渡り鳥に手紙の使い...
「渡り鳥に？」
俊浩の目が輝いた。
「わかった。鳥をつかまえて、そいつの足に手紙をくっつけよ...
「そうだ。何百通も送れば、何通かは誰かの手にとどくはずだ...
「うまいことを思いついたなあ。きっと成功するよ。やっぱり...
「でも、むずかしい問題があるんだ」&br;
「なんだい」&br;
「第一に、空を飛んでいる鳥をそうたくさんつかまえることは...
「それは問題ないよ。百羽でも千羽でも取ってみせるから、お...
「そうかい」
成哲は頼もしそうに、俊浩を見やった。
「それは自信があるからいいとして、またどんな問題があるん...
「この島の位置と名前がわからないから、住所を書けないんだ...
「なるほど…。住所のない手紙じゃしようがないな」&br;
「そうなんだよ」
2人は海のかなたを見ながら考えこんだが、どうにも方法が思い...
「みんなと相談してみよう。どうやって鳥をとろうかとずいぶ...
2人は仮小屋に戻って行った。
「みんな集まれよ。相談ごとがあるんだ」
俊浩が叫んだ。
子どもたちが集まると、成哲が自分の考えを話した。
助け船を呼ぼうという言葉に、みなこおどりして喜んだ。
「問題は住所だ。住所がわからなくちゃ船が来られないからな...
子どもたちの顔がいっぺんにくもった。
「どうしたら島の名前がわかるだろう」&br;
「どこかの岩に書いてないだろうか」&br;
「無人島に誰が島の名前を書くっていうんだい」&br;
「住所のない手紙なんか、送ってもしようがないや」
子どもたちは、口々に言いあった。
「島の位置は知らせることができるよ」
眉根にしわをよせて考えていた昌植が、口を開いた。
「朝鮮から帆かけ船が南西の風に乗ってひと月くらい漂流した...
子どもたちは目をぱちくりさせて、顔を見あわせた。
「どの島かはっきりわかりもしないで、船が来るってのか」
ちょっと間をおいて、成哲がたずねた。
「そうだよ」&br;
「このへんにほかの島がなければいいけど、たくさんあったら...
昌植はこれに答えられなかった。
「それは大丈夫だ」
万洙が自信たっぷりに言った。
「徳善峰のてっぺんに火を燃やせばいいんだ。木はいくらでも...
「うん、名案だ」
成哲は手をうって喜んだ。
「うまい、うまい。山のてっぺんで、煙をもくもくあげればい...
「万洙はまったく気転がきくよ」
子どもたちは喜んではしゃいだ。
「手紙を入れる足輪は、なんで作るんだ」
「あたしたちの弁当箱で作ったらいいわ」と、明玉が俊浩の質...
「そりゃ、いい思いつきだ」&br;
「善は急げだ。さっそく手紙を出すことにして、早く鳥をつか...
徳善が勢いよく立ちあがって、俊浩をうながした。
「いまはだめだよ。鳥は夜つかまえるものなんだ」
「じゃ、昼間は受け持った仕事をして、鳥を取るのは夜にしよ...
俊浩は一日中、鳥をつかまえる準備をした。
乾いた草や枯れ枝でたいまつを作り、鳥かごもいくつかこしら...
日が沈むころ、俊浩は鳥のねぐらを見ておくため山に登った。...
昼間の仕事でつかれていたが、夜が更けると、総出で鳥をつか...
「絶対に自由行動をとっちゃいけないよ。夜中だから、どんな...
成哲は出発に先立って、こう念をおした。
みな規律を守ると誓った。
子どもたちは、オットセイのあぶらがたっぷりしみこんだたい...
「どうやって鳥をつかまえるんだ」
それらしい道具を持って来なかったので、永洙が不思議がった。
「これでつかまえるんだよ」
俊浩がたいまつを振ってみせた。
「うそだ」&br;
「うそじゃないよ。鳥が落っこちたら、すぐつかまえて、鳥か...
俊浩は先頭に立って、夕方見ておいたシナの木林にしのび寄っ...
子どもたちは大きなシナの木の手前で、5本のたいまつに火をつ...
「たいまつをかざしていっぺんにあの木の下へ行くんだ。する...
俊浩の言いつけどおり、子どもたちはたいまつをかかげて、シ...
子どもたちは鳥を片っぱしからつかまえて、かごに入れた。
「うわー、面白いな」&br;
「この調子だと、ひと晚ですごく取れるぞ」&br;
「ほかの木に行こうよ」&br;
「夜が明けるまでつかまえよう」
子どもたちはほかの木に移って、そこでもたくさん取った。
5番目の木に向かおうとしたとき、林の中でけだものの悲しげな...
「オオカミの声だろう」
万洙が小声で徳善に聞いた。
「さあ、オオカミなら、あんなふうにひと声だけ吠えるはずが...
徳善はおびえて、首をかしげた。
「とにかく、息の根が止まりそうな声だったよ。怪物につかま...
昌植がこわごわ林に目をやった。
「もう帰ろうよ」
京三がすくみあがって言った。
成哲は心細くなった。けものの悲鳴を聞いては、これ以上みな...
「うん、帰ろう。たいまつをもっと明るくしな。みんないるか...
成哲はたいまつで1人ひとりの顔を照らした。永洙が見えなかっ...
「永洙はどこへ行ったんだ」
誰も答えなかった。
成哲ははっとした。さっきの悲鳴が耳によみがえって、急に胸...
（ひょっとしたら、永洙が…）
いつか昌植から聞いた怪物の姿や、例の足跡が目に浮かんだ。
みなまっさおになった。
「永洙はいついなくなったんだ」
「1番目の木のところでは、おれと一緒にいたんだけどなあ」と...
「自分勝手な行動をするなって、あんなに注意したのに、いた...
成哲は頭がくらくらっとした。小さい子たちを連れて来たこと...
「永洙を探そう。どんなことがあっても探すんだぞ。みんな固...
成哲はこう言うと、たいまつをあわせて火を大きくした。
子どもたちは声を揃えて呼んだ。
「永洙ー」&br;
「永洙ー」
声は大きく谷間にこだましたが、なんの返事もなかった。
「絶対にばらばらになるなよ」
成哲は何度もくりかえした。
かれらは山腹を登りおりしながら、名前を呼びつづけた。いつ...
成哲は、カシワの大木の下で立ち止まった。もう探すところが...
向こうの岩かげをながめていた昌植の目に、なにか白っぽいも...
「あれはなんだ」
子どもたちが駆けつけてみると、なんとそれは永洙だった。永...
みなガヤガヤ騒いだ。
「こんなところで、寝てるやつがあるか」
昌植が肩を強く揺さぶったが、起きないので、俊浩が体をかか...
「おいとけ、おれがおぶって行くよ。昼間汗だくで道づくりを...
「大きな赤ん坊だなあ」
勇日がゲラゲラ笑うので、みな声を立てて笑った。
あくる朝、成哲らは槍や斧やこん棒を手にして山に登った。ゆ...
先頭で雑木林を歩いていた昌植が、あっと叫んで立ちすくんだ...
みな駆け寄って見ると、青ざめた昌植の足もとに、血まみれの...
成哲は身の毛のよだつ思いで、あたりを見まわした。林の中は...
「オオカミだ。見ろ、オオカミの頭だろう」&br;
「うん、確かにオオカミだ」
徳善の言葉に昌植があいづちをうった。
「なにがオオカミをこんなに、八つ裂きにしたんだろう」&br;
「すごく大きい猛獣だよ、きっと」&br;
「猛獣なら、どうして食わなかったのかなあ」&br;
「トラは腹がへってるとき、オオカミに出あうと取って食うけ...
「じゃ、この島にトラもいるのか」&br;
「いるかもしれないよ」
子どもたちがこんなことを言いあっているとき、俊浩が大声で...
「おい、この足跡を見ろよ」
みなそっちへ駆けて行った。そこには見おぼえのある大きな足...
「この前のと同じやつだ」
子どもたちの顔には血の気がなかった。
「やっぱり怪物がいるんだ。早く帰ろうよ」
昌植が足早に歩きだすと、ほかの子たちも小走りになった。
成哲は一番うしろに立って歩きながら、ときどきあとをふり返...
仮小屋に帰ってからも、子どもたちは不安がって、口をきこう...
「これからは、夜出歩いちゃいけないよ。才オカミだって八つ...
成哲は強く念を押した。
みな黙っていた。もちろん夜歩きする気はないが、それなら鳥...
「昼間鳥をつかまえる方法はないのか」
万洙にこう聞かれて、俊浩はいろいろ考えてみたが、名案が浮...
成哲はため息をついた。
（鳥の足に手紙をつけて送る計画も、おじゃんになったのか）
あきらめるのはつらかったが、えたいの知れない怪物がいるこ...
「今夜から、鳥をつかまえに行くのはやめよう」
成哲はさびしそうに言った。
（芸術、文芸作品―その他）
RIGHT:'''2020年の記事'''
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//（文芸作品―その他 2020.10.12）
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*長編小説「15少年物語」（21） [#o287a514]
丸太小屋ではこけら板で屋根をふき、オンドルの床石を敷くと...
ふしん中につぶれたり、茂漢に逃げられたりしたときはがっか...
（もうじき冬が来て海が凍りつけば、この島で冬を越すことに...
こう思うと目の前が暗くなった。
嵐にあって以来の2ヵ月間、成哲は肋け船のことばかり考えてい...
だが、いまはもう希望もうすれてしまった。1ヵ月海で漂流した...
（ただ船が通るのを待つのでなく、助け船を呼ぶ方法はないも...
考えれば考えるほど、気がふさいだ。
島や海の上をおおって飛びかう鳥の群れを見るたびに、成哲は...
（あの鳥たちが口がきけて、おれたちの気持を察してくれたら...
こんな空想はすぐ、ため息にかき消されてしまうのだった。
それが、きのう伝書バトの足輪を見てからは、またあわい希望...
（渡り鳥の足に手紙をつけて送ったら、どうだろうか）
成哲は胸をおどらせて考えた。
あの群がり飛ぶ無数の鳥は、大半が渡り鳥なのだ。冬が来れば...
成哲はふと、ある探険談を思いだした。北極を探険中氷山にぶ...
（そうだ。海難にあった者は国籍にかかわりなく、通過中の船...
成哲は鳥の群れをいとしそうにながめた。鳴きしきる声や羽ば...
汽船に乗りこんで、汽笛を鳴らしながらキンヨウルに向かう自...
「なにをにやにやしてるんだ」
俊浩に声をかけられて、成哲は現実に引き戻された。惜しい夢...
「きのう伝書バトを見たろう。そのことからいいことを思いつ...
「どんなことだ」&br;
「船を待ってばかりいないで、ここへ呼ぶのさ」&br;
「なんだって。いったいどうやって呼ぶんだ」&br;
「お前の部下の力を借りるんだ」&br;
「おれの部下だって？」&br;
「そんなに驚くことはないよ。もうじき渡り鳥が南の国に飛ん...
「そりゃな」&br;
「伝書バトに手紙をくくって送るように、渡り鳥に手紙の使い...
「渡り鳥に？」
俊浩の目が輝いた。
「わかった。鳥をつかまえて、そいつの足に手紙をくっつけよ...
「そうだ。何百通も送れば、何通かは誰かの手にとどくはずだ...
「うまいことを思いついたなあ。きっと成功するよ。やっぱり...
「でも、むずかしい問題があるんだ」&br;
「なんだい」&br;
「第一に、空を飛んでいる鳥をそうたくさんつかまえることは...
「それは問題ないよ。百羽でも千羽でも取ってみせるから、お...
「そうかい」
成哲は頼もしそうに、俊浩を見やった。
「それは自信があるからいいとして、またどんな問題があるん...
「この島の位置と名前がわからないから、住所を書けないんだ...
「なるほど…。住所のない手紙じゃしようがないな」&br;
「そうなんだよ」
2人は海のかなたを見ながら考えこんだが、どうにも方法が思い...
「みんなと相談してみよう。どうやって鳥をとろうかとずいぶ...
2人は仮小屋に戻って行った。
「みんな集まれよ。相談ごとがあるんだ」
俊浩が叫んだ。
子どもたちが集まると、成哲が自分の考えを話した。
助け船を呼ぼうという言葉に、みなこおどりして喜んだ。
「問題は住所だ。住所がわからなくちゃ船が来られないからな...
子どもたちの顔がいっぺんにくもった。
「どうしたら島の名前がわかるだろう」&br;
「どこかの岩に書いてないだろうか」&br;
「無人島に誰が島の名前を書くっていうんだい」&br;
「住所のない手紙なんか、送ってもしようがないや」
子どもたちは、口々に言いあった。
「島の位置は知らせることができるよ」
眉根にしわをよせて考えていた昌植が、口を開いた。
「朝鮮から帆かけ船が南西の風に乗ってひと月くらい漂流した...
子どもたちは目をぱちくりさせて、顔を見あわせた。
「どの島かはっきりわかりもしないで、船が来るってのか」
ちょっと間をおいて、成哲がたずねた。
「そうだよ」&br;
「このへんにほかの島がなければいいけど、たくさんあったら...
昌植はこれに答えられなかった。
「それは大丈夫だ」
万洙が自信たっぷりに言った。
「徳善峰のてっぺんに火を燃やせばいいんだ。木はいくらでも...
「うん、名案だ」
成哲は手をうって喜んだ。
「うまい、うまい。山のてっぺんで、煙をもくもくあげればい...
「万洙はまったく気転がきくよ」
子どもたちは喜んではしゃいだ。
「手紙を入れる足輪は、なんで作るんだ」
「あたしたちの弁当箱で作ったらいいわ」と、明玉が俊浩の質...
「そりゃ、いい思いつきだ」&br;
「善は急げだ。さっそく手紙を出すことにして、早く鳥をつか...
徳善が勢いよく立ちあがって、俊浩をうながした。
「いまはだめだよ。鳥は夜つかまえるものなんだ」
「じゃ、昼間は受け持った仕事をして、鳥を取るのは夜にしよ...
俊浩は一日中、鳥をつかまえる準備をした。
乾いた草や枯れ枝でたいまつを作り、鳥かごもいくつかこしら...
日が沈むころ、俊浩は鳥のねぐらを見ておくため山に登った。...
昼間の仕事でつかれていたが、夜が更けると、総出で鳥をつか...
「絶対に自由行動をとっちゃいけないよ。夜中だから、どんな...
成哲は出発に先立って、こう念をおした。
みな規律を守ると誓った。
子どもたちは、オットセイのあぶらがたっぷりしみこんだたい...
「どうやって鳥をつかまえるんだ」
それらしい道具を持って来なかったので、永洙が不思議がった。
「これでつかまえるんだよ」
俊浩がたいまつを振ってみせた。
「うそだ」&br;
「うそじゃないよ。鳥が落っこちたら、すぐつかまえて、鳥か...
俊浩は先頭に立って、夕方見ておいたシナの木林にしのび寄っ...
子どもたちは大きなシナの木の手前で、5本のたいまつに火をつ...
「たいまつをかざしていっぺんにあの木の下へ行くんだ。する...
俊浩の言いつけどおり、子どもたちはたいまつをかかげて、シ...
子どもたちは鳥を片っぱしからつかまえて、かごに入れた。
「うわー、面白いな」&br;
「この調子だと、ひと晚ですごく取れるぞ」&br;
「ほかの木に行こうよ」&br;
「夜が明けるまでつかまえよう」
子どもたちはほかの木に移って、そこでもたくさん取った。
5番目の木に向かおうとしたとき、林の中でけだものの悲しげな...
「オオカミの声だろう」
万洙が小声で徳善に聞いた。
「さあ、オオカミなら、あんなふうにひと声だけ吠えるはずが...
徳善はおびえて、首をかしげた。
「とにかく、息の根が止まりそうな声だったよ。怪物につかま...
昌植がこわごわ林に目をやった。
「もう帰ろうよ」
京三がすくみあがって言った。
成哲は心細くなった。けものの悲鳴を聞いては、これ以上みな...
「うん、帰ろう。たいまつをもっと明るくしな。みんないるか...
成哲はたいまつで1人ひとりの顔を照らした。永洙が見えなかっ...
「永洙はどこへ行ったんだ」
誰も答えなかった。
成哲ははっとした。さっきの悲鳴が耳によみがえって、急に胸...
（ひょっとしたら、永洙が…）
いつか昌植から聞いた怪物の姿や、例の足跡が目に浮かんだ。
みなまっさおになった。
「永洙はいついなくなったんだ」
「1番目の木のところでは、おれと一緒にいたんだけどなあ」と...
「自分勝手な行動をするなって、あんなに注意したのに、いた...
成哲は頭がくらくらっとした。小さい子たちを連れて来たこと...
「永洙を探そう。どんなことがあっても探すんだぞ。みんな固...
成哲はこう言うと、たいまつをあわせて火を大きくした。
子どもたちは声を揃えて呼んだ。
「永洙ー」&br;
「永洙ー」
声は大きく谷間にこだましたが、なんの返事もなかった。
「絶対にばらばらになるなよ」
成哲は何度もくりかえした。
かれらは山腹を登りおりしながら、名前を呼びつづけた。いつ...
成哲は、カシワの大木の下で立ち止まった。もう探すところが...
向こうの岩かげをながめていた昌植の目に、なにか白っぽいも...
「あれはなんだ」
子どもたちが駆けつけてみると、なんとそれは永洙だった。永...
みなガヤガヤ騒いだ。
「こんなところで、寝てるやつがあるか」
昌植が肩を強く揺さぶったが、起きないので、俊浩が体をかか...
「おいとけ、おれがおぶって行くよ。昼間汗だくで道づくりを...
「大きな赤ん坊だなあ」
勇日がゲラゲラ笑うので、みな声を立てて笑った。
あくる朝、成哲らは槍や斧やこん棒を手にして山に登った。ゆ...
先頭で雑木林を歩いていた昌植が、あっと叫んで立ちすくんだ...
みな駆け寄って見ると、青ざめた昌植の足もとに、血まみれの...
成哲は身の毛のよだつ思いで、あたりを見まわした。林の中は...
「オオカミだ。見ろ、オオカミの頭だろう」&br;
「うん、確かにオオカミだ」
徳善の言葉に昌植があいづちをうった。
「なにがオオカミをこんなに、八つ裂きにしたんだろう」&br;
「すごく大きい猛獣だよ、きっと」&br;
「猛獣なら、どうして食わなかったのかなあ」&br;
「トラは腹がへってるとき、オオカミに出あうと取って食うけ...
「じゃ、この島にトラもいるのか」&br;
「いるかもしれないよ」
子どもたちがこんなことを言いあっているとき、俊浩が大声で...
「おい、この足跡を見ろよ」
みなそっちへ駆けて行った。そこには見おぼえのある大きな足...
「この前のと同じやつだ」
子どもたちの顔には血の気がなかった。
「やっぱり怪物がいるんだ。早く帰ろうよ」
昌植が足早に歩きだすと、ほかの子たちも小走りになった。
成哲は一番うしろに立って歩きながら、ときどきあとをふり返...
仮小屋に帰ってからも、子どもたちは不安がって、口をきこう...
「これからは、夜出歩いちゃいけないよ。才オカミだって八つ...
成哲は強く念を押した。
みな黙っていた。もちろん夜歩きする気はないが、それなら鳥...
「昼間鳥をつかまえる方法はないのか」
万洙にこう聞かれて、俊浩はいろいろ考えてみたが、名案が浮...
成哲はため息をついた。
（鳥の足に手紙をつけて送る計画も、おじゃんになったのか）
あきらめるのはつらかったが、えたいの知れない怪物がいるこ...
「今夜から、鳥をつかまえに行くのはやめよう」
成哲はさびしそうに言った。
（芸術、文芸作品―その他）
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//（文芸作品―その他 2020.10.12）
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