長編小説「15少年物語」(19) をテンプレートにして作成
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*長編小説「15少年物語」(19) [#ce3cb1fd]
万洙らは仮小屋に戻ったが、まだ腹の虫がおさまらなかった。
「なにか気分の悪いことがあったのね。あんなにしかめっつら...
目ざとい明玉がそっと聞いた。
「けんかなんかしないよ。山で茂英にあったんで、ほら穴に行...
「そうだったの。茂英は楽しそうだった」
今度はヤムジョンが聞いた。
「あの子、すごくいい毛皮の服を着てたよ。台所もきれいにし...
3人がほら穴へ行って来たというので、仕事をしていた子らが1...
「あの子たち、どんなふうに暮らしてた」
京三がまっ先にたずねた。
勇日は見たままに話した。みなそれを面白そうに聞いた。言い...
「なかなかうまくやってるようだな」
成哲が一言口をはさんだ。
「勇日、ほら穴は気に入ったかい」&br;
「あそこは、夜寝るときも寒くないから、いいと思うよ」
京三の問いに勇日がこう答えると、子どもたちはうらやましそ...
「それじゃ、おれたちより楽しく暮らしてるんだな」&br;
「ほら穴がもうちょっと大きかったらいいのにさ」&br;
「あの子たちはトナカイまで飼っているのに、おれたちは大変...
「ほんとだ。いまからでもほら穴を探してみたらどうだろう」&...
「なに言ってるんだ。早く家を建てなくちゃだめだよ。そんな...
子どもたちはワイワイ騒ぎ立てた。
「お前たちは、ほら穴で暮らしたくなかったのか」
成哲が笑顔を作って、かまをかけるように聞くと、 勇日が答え...
「おれはあそこへ行きたくないよ」&br;
「ここより住みよいのに」&br;
「いくらよくても、みんなで一緒に暮らさなくちゃな」&br;
「そのとおりだ。おれたちも早く家を建てて、あたたかいとこ...
「またつぶれないかな」
京三が心配そうに聞いた。
「壁をもうあんなに高く積みあげたんだから、どうしたらうま...
成哲にこう言われても、口を開く子がいなかった。みな、ほら...
成哲はあせった。壁はできかけているのに、このあとどうして...
(もう1つほら穴を見つければ、どうにかやっていけるんだがな...
こんな考えが浮かんだが、かれは頭を振った。
(もしほら穴が見つからなかったら、それこそ野たれ死にじゃ...
ふと、旅ネズミの行列の先頭に立っていた道案内のことが思い...
成哲は、道案内のネズミに笑われているような気がした。
(どんなことがあっても動揺しないで、家を建てよう。おれは...
かれは決心を固めた。
その日の夕方、成哲は仮小屋で仲間たちと車座になった。みな...
「昔話をしてやろうか」
こうきりだすと、子どもたちの顔が明るくなった。
成哲は咳ばらいをして、話しはじめた。
「大昔はね、お日さまが日に2時間ほどしか照らなかったそうだ...
働く時間が少ししかないし、作物や草木も育つひまがないから...
それで人びとは、自分は食べられもしない白いごはんや、肉や...
『ふん、人間どもめ、腹がへってたまらないから、わしにすが...
神さまはこう言ってせせら笑ったんだ。だから人びとの暮らし...
そのころ、ある山里に力が強く勇敢で、頓知のきく七星という...
『情なんか爪のあかほどもないやつを拝んで、どうするんです...
そして七星はでかい鉄棒をかついで、神さまのいる蓬莱山に出...
そんなある日、急に雲がたれこめて霧がかかったかと思うと、...
『この野郎。お日さまがゆっくり沈むようにしてくれって、村...
七星がこうすごみをきかせると、神さまは両手をこすりながら...
『わたしが悪うございました。ひらにご容赦くださいまし。き...
『よし、今度は大目にみてやろう。だが耳の穴をほじくって、...
七星はこう言って、日の出と日の沈む時間を決めてやったんだ...
お百姓さんに都合よく、春と秋には昼と夜の長さが同じくらい...
それなのにおれたちは、家1つ建てられないってのかい。いま苦...
成哲の話はみなの心を揺さぶった。
あくる朝、成哲が丸木に手を加えていると、昌植と徳善がうれ...
「トナカイでもつかまえたのかい。いやににこにこしてるな」&...
「トナカイどころの騒ぎじゃないんだ。昌植、お前が話せよ」
成哲は手を休めて、2人の顔を見た。
「わかったんだ。失敗の原因がわかったんだよ」&br;
「なんだって」
成哲は鼻の奥がじいんとなった。
昌植は、木切れで作った屋根の模型を2つ、前に置いた。そして...
「今度はこれを見てみな」
昌植はもう1つの模型と取り替えて、さっきよりも大きい石を乗...
昌植は黙ってにっこり笑った。
子どもたちが1人、2人と集まって来た。成哲は梁の上につか柱...
「そうだ。これだったんだな。おれたちが建てた家は、屋根の...
成哲は手をたたいて喜んだ。
「お前たち大発見をしてくれたな。ありがとう」
成哲は腕を広げて、昌植と徳善を抱きしめた。
昌植はこんな話をした。
「正直言って、おれはこれまでどうして家がつぶれたのか、深...
徳善が昌植の言葉をひきついだ。
「おれも眠れなくてな。よく考えてみると、おれんちのつか柱...
失敗した原因がわかったという吉報は、またたくまに知れ渡っ...
「七星は神さまもやっつけたのに、家の1軒も建てられないよう...
京三が腕まくりをしながら、敷地へ向かって真っ先に歩きだし...
「ばりばりやって、引っ越し祝いをしようや」
俊浩もこう言って、あとを追った。
年かさの少年たちはもちろん、女の子や小さい子らも大張り切...
仕事は暗くなるまでつづいたが、誰1人工事場を離れなかった。
「七星は少し考えが足りなかったと思うよ」
京三が仲間を見まわして言った。
「昼と夜を分けないで、1日中お日さまが照るようにしたら、よ...
「いいや、七星はやっぱりかしこかったよ。夜がなけりゃ作男...
「京三、心配するな。七星にできなかったことを、おれがやっ...
俊浩は枯れ枝をかかえて来てたき火をたいた。
「どうだい。これならいくらでも仕事ができるだろう。きょう...
みな俊浩の提案に賛成した。こうして仕事は夜遅くまでつづい...
あくる朝、成哲は徳善や俊浩と一緒に、斧とのこぎりを持って...
成哲と徳善が驚いてふり返ると、俊浩はひじをつかんでシラカ...
俊浩は、飛び立とうとするハチを草むらにはたき落として、足...
「また、ハチに刺されたのか」
成哲はこう言って、あたりを見まわした。
「ひどい目にあったよ。あのうつろに巣があるみたいだよ。ほ...
俊浩はあわてて手で払いのけながら、逃げた。成哲と徳善も追...
カラマツ林の中で手ごろな木を探しあてた3人は、 斧をかわる...
さっきの木の前にさしかかったとき、徳善がうつろの中を見て...
「また、ハチに刺されたらどうするんだ」
俊浩は、とんでもないと言った顔つきだった。
「巣をはたけば、ハチミツが取れるじゃないか」&br;
「ハチミツか。すごくいい薬なんだがな」
俊浩は成哲をちらりと見た。素通りするのは惜しいという表情...
成哲は薬も薬だが、汗だくで働いている仲間たちに、ハチミツ...
「ヤマバチの巣をはたいたことがあるのか」&br;
「あるとも。いまごろのハチは冬支度をするから、ミツをいつ...
「うん。せっかくの宝を捨てて行くわけにはいかないや」
俊浩はハチにこりて、2人のあとから用心深く近づいた。
ハチはぶんぶん音をたてながら、うつろの中をせわしく出入り...
「そこでうろうろしてたら、また刺されるぞ。どけよ」
先頭に立っていた徳善が俊浩に注意した。そして、うつろの口...
成哲と俊浩は面白がって、せっせと枯れ枝を拾って来た。煙が...
「どんどん燃えろ。どんどん」
俊浩は得意になって枯れ枝をくべた。
「いい気味だ。さっきの仕返しだぞ」
こう言ってかれは、地ベたに落ちるハチを踏んづけた。
「一所けんめいためたミツを失敬するだけでもすまないのに、...
「これを見ろよ。こいつらに刺されたんだ」
俊浩が上着のそでをまくると、ひじがクリの実ほどはれあがっ...
徳善は腰の斧を抜き取って、手につばを吐きつけ、幹に何度か...
「ハチがみんなのびちゃったよ。ミツはもうこっちのもんだ」
たてつづけに斧を振りおろしていた徳善が、手を突っこんで大...
「これ見ろ、すごいだろう」
かれは満足そうに巣を開きはじめた。成哲と俊浩がのぞきこむ...
徳善がとんきょうな声をたてた。
「わー、本物のハチミツだ。こちこちに固まってるぞ。これほ...
徳善が有頂天になって巣をさしだした。成哲は小枝ですくいと...
「まったくだ。砂糖より甘いや。早く出そうよ」&br;
「それよりも、これでクマをつかまえようじゃないか」
徳善が目をきらきらさせて、成哲に言った。
「クマ? どうやってつかまえるんだ」&br;
「以前おれが住んでいた村の人たちは、あんなうつろの中でク...
徳善は木を見あげた。
「あの上に穴があるだろう。あそこからクマが入れるように、...
徳善は調子づいてしゃべった。
「そんなたわいのない話はやめて、早くミツを出そう。あすこ...
やがて3人はハチミツの包みをさげ、丸木を引きずって仮小屋に...
子どもたちは、きょう中に壁を積み終えて梁をあげようと、て...
徳善と俊浩が食器や水筒に水をくんで来ると、成哲が大きな声...
「おい、みんなここへ来て一休みしないか」&br;
「休んでたら、きょう中に梁があがらないよ」
昌植がこう答えると、俊浩がうきうきして騒ぎたてた。
「ただの休みじゃないんだぞ。ハチミツをごちそうしてやるっ...
「なに、ハチミツだって? 水をくんで来たのを見ると、ほん...
こう言って1人の子が駆けて来ると、みなワーッと集まって来た。
子どもたちはハチミツを見て歓声をあげた。
「こんなにハチに刺されながら、取って来たってこと、よくお...
俊浩は腕をまくって突きだした。
「また刺されたのか。お前の体はきっとミツみたいに甘いんだ...
舌を出して近寄る京三。逃げだす俊浩。あたりの空気が爆笑で...
明玉とヤムジョンがハチミツを水にといて、みなについでやっ...
「やっぱりうまいなあ」&br;
「舌がとろけそうだ」&br;
「俊浩、もういっぺんハチに刺されるんだな。そしたらまたハ...
かれらはほがらかにはしゃいだ。
「家さえうまく建てるなら、毎日でも刺されてやるよ。今度は...
俊浩が右腕をまくりあげたので、またドッと笑い声があがった。
翌日からはたる木をかけはじめた。足りない木を切りに行く者...
夕方から風が吹きだし、あくる日もやまなかった。屋根に土を...
下からこねた土があがってくると、手早くこまいの上に敷き、...
風がうずを巻きはじめ、黒い雲が垂れこめた。
屋根の上では用心深く動作し、下では軒下によりつかないよう...
いつもにぎやかに働いていた子たちが、その日は笑いもしゃべ...
雨風は夜もつづいた。
成哲をはじめ年かさの子たちは眠れないで、小屋を出たり入っ...
はね起きて外へ出ようとするところへ、万洙が駆けこんで来た。
「心配するな。雨はやんだし、家もなんともないよ」
成哲は自分の目で確かめなくては安心できず、家を一まわりし...
この日、屋根は全部ふき終わった。1日中風が吹き荒れたが、家...
日が暮れて星がまたたきはじめても、誰1人仕事場を離れようと...
(芸術、文芸作品―その他)
RIGHT:'''2020年の記事'''
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//(文芸作品―その他 2020.10.04)
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*長編小説「15少年物語」(19) [#ce3cb1fd]
万洙らは仮小屋に戻ったが、まだ腹の虫がおさまらなかった。
「なにか気分の悪いことがあったのね。あんなにしかめっつら...
目ざとい明玉がそっと聞いた。
「けんかなんかしないよ。山で茂英にあったんで、ほら穴に行...
「そうだったの。茂英は楽しそうだった」
今度はヤムジョンが聞いた。
「あの子、すごくいい毛皮の服を着てたよ。台所もきれいにし...
3人がほら穴へ行って来たというので、仕事をしていた子らが1...
「あの子たち、どんなふうに暮らしてた」
京三がまっ先にたずねた。
勇日は見たままに話した。みなそれを面白そうに聞いた。言い...
「なかなかうまくやってるようだな」
成哲が一言口をはさんだ。
「勇日、ほら穴は気に入ったかい」&br;
「あそこは、夜寝るときも寒くないから、いいと思うよ」
京三の問いに勇日がこう答えると、子どもたちはうらやましそ...
「それじゃ、おれたちより楽しく暮らしてるんだな」&br;
「ほら穴がもうちょっと大きかったらいいのにさ」&br;
「あの子たちはトナカイまで飼っているのに、おれたちは大変...
「ほんとだ。いまからでもほら穴を探してみたらどうだろう」&...
「なに言ってるんだ。早く家を建てなくちゃだめだよ。そんな...
子どもたちはワイワイ騒ぎ立てた。
「お前たちは、ほら穴で暮らしたくなかったのか」
成哲が笑顔を作って、かまをかけるように聞くと、 勇日が答え...
「おれはあそこへ行きたくないよ」&br;
「ここより住みよいのに」&br;
「いくらよくても、みんなで一緒に暮らさなくちゃな」&br;
「そのとおりだ。おれたちも早く家を建てて、あたたかいとこ...
「またつぶれないかな」
京三が心配そうに聞いた。
「壁をもうあんなに高く積みあげたんだから、どうしたらうま...
成哲にこう言われても、口を開く子がいなかった。みな、ほら...
成哲はあせった。壁はできかけているのに、このあとどうして...
(もう1つほら穴を見つければ、どうにかやっていけるんだがな...
こんな考えが浮かんだが、かれは頭を振った。
(もしほら穴が見つからなかったら、それこそ野たれ死にじゃ...
ふと、旅ネズミの行列の先頭に立っていた道案内のことが思い...
成哲は、道案内のネズミに笑われているような気がした。
(どんなことがあっても動揺しないで、家を建てよう。おれは...
かれは決心を固めた。
その日の夕方、成哲は仮小屋で仲間たちと車座になった。みな...
「昔話をしてやろうか」
こうきりだすと、子どもたちの顔が明るくなった。
成哲は咳ばらいをして、話しはじめた。
「大昔はね、お日さまが日に2時間ほどしか照らなかったそうだ...
働く時間が少ししかないし、作物や草木も育つひまがないから...
それで人びとは、自分は食べられもしない白いごはんや、肉や...
『ふん、人間どもめ、腹がへってたまらないから、わしにすが...
神さまはこう言ってせせら笑ったんだ。だから人びとの暮らし...
そのころ、ある山里に力が強く勇敢で、頓知のきく七星という...
『情なんか爪のあかほどもないやつを拝んで、どうするんです...
そして七星はでかい鉄棒をかついで、神さまのいる蓬莱山に出...
そんなある日、急に雲がたれこめて霧がかかったかと思うと、...
『この野郎。お日さまがゆっくり沈むようにしてくれって、村...
七星がこうすごみをきかせると、神さまは両手をこすりながら...
『わたしが悪うございました。ひらにご容赦くださいまし。き...
『よし、今度は大目にみてやろう。だが耳の穴をほじくって、...
七星はこう言って、日の出と日の沈む時間を決めてやったんだ...
お百姓さんに都合よく、春と秋には昼と夜の長さが同じくらい...
それなのにおれたちは、家1つ建てられないってのかい。いま苦...
成哲の話はみなの心を揺さぶった。
あくる朝、成哲が丸木に手を加えていると、昌植と徳善がうれ...
「トナカイでもつかまえたのかい。いやににこにこしてるな」&...
「トナカイどころの騒ぎじゃないんだ。昌植、お前が話せよ」
成哲は手を休めて、2人の顔を見た。
「わかったんだ。失敗の原因がわかったんだよ」&br;
「なんだって」
成哲は鼻の奥がじいんとなった。
昌植は、木切れで作った屋根の模型を2つ、前に置いた。そして...
「今度はこれを見てみな」
昌植はもう1つの模型と取り替えて、さっきよりも大きい石を乗...
昌植は黙ってにっこり笑った。
子どもたちが1人、2人と集まって来た。成哲は梁の上につか柱...
「そうだ。これだったんだな。おれたちが建てた家は、屋根の...
成哲は手をたたいて喜んだ。
「お前たち大発見をしてくれたな。ありがとう」
成哲は腕を広げて、昌植と徳善を抱きしめた。
昌植はこんな話をした。
「正直言って、おれはこれまでどうして家がつぶれたのか、深...
徳善が昌植の言葉をひきついだ。
「おれも眠れなくてな。よく考えてみると、おれんちのつか柱...
失敗した原因がわかったという吉報は、またたくまに知れ渡っ...
「七星は神さまもやっつけたのに、家の1軒も建てられないよう...
京三が腕まくりをしながら、敷地へ向かって真っ先に歩きだし...
「ばりばりやって、引っ越し祝いをしようや」
俊浩もこう言って、あとを追った。
年かさの少年たちはもちろん、女の子や小さい子らも大張り切...
仕事は暗くなるまでつづいたが、誰1人工事場を離れなかった。
「七星は少し考えが足りなかったと思うよ」
京三が仲間を見まわして言った。
「昼と夜を分けないで、1日中お日さまが照るようにしたら、よ...
「いいや、七星はやっぱりかしこかったよ。夜がなけりゃ作男...
「京三、心配するな。七星にできなかったことを、おれがやっ...
俊浩は枯れ枝をかかえて来てたき火をたいた。
「どうだい。これならいくらでも仕事ができるだろう。きょう...
みな俊浩の提案に賛成した。こうして仕事は夜遅くまでつづい...
あくる朝、成哲は徳善や俊浩と一緒に、斧とのこぎりを持って...
成哲と徳善が驚いてふり返ると、俊浩はひじをつかんでシラカ...
俊浩は、飛び立とうとするハチを草むらにはたき落として、足...
「また、ハチに刺されたのか」
成哲はこう言って、あたりを見まわした。
「ひどい目にあったよ。あのうつろに巣があるみたいだよ。ほ...
俊浩はあわてて手で払いのけながら、逃げた。成哲と徳善も追...
カラマツ林の中で手ごろな木を探しあてた3人は、 斧をかわる...
さっきの木の前にさしかかったとき、徳善がうつろの中を見て...
「また、ハチに刺されたらどうするんだ」
俊浩は、とんでもないと言った顔つきだった。
「巣をはたけば、ハチミツが取れるじゃないか」&br;
「ハチミツか。すごくいい薬なんだがな」
俊浩は成哲をちらりと見た。素通りするのは惜しいという表情...
成哲は薬も薬だが、汗だくで働いている仲間たちに、ハチミツ...
「ヤマバチの巣をはたいたことがあるのか」&br;
「あるとも。いまごろのハチは冬支度をするから、ミツをいつ...
「うん。せっかくの宝を捨てて行くわけにはいかないや」
俊浩はハチにこりて、2人のあとから用心深く近づいた。
ハチはぶんぶん音をたてながら、うつろの中をせわしく出入り...
「そこでうろうろしてたら、また刺されるぞ。どけよ」
先頭に立っていた徳善が俊浩に注意した。そして、うつろの口...
成哲と俊浩は面白がって、せっせと枯れ枝を拾って来た。煙が...
「どんどん燃えろ。どんどん」
俊浩は得意になって枯れ枝をくべた。
「いい気味だ。さっきの仕返しだぞ」
こう言ってかれは、地ベたに落ちるハチを踏んづけた。
「一所けんめいためたミツを失敬するだけでもすまないのに、...
「これを見ろよ。こいつらに刺されたんだ」
俊浩が上着のそでをまくると、ひじがクリの実ほどはれあがっ...
徳善は腰の斧を抜き取って、手につばを吐きつけ、幹に何度か...
「ハチがみんなのびちゃったよ。ミツはもうこっちのもんだ」
たてつづけに斧を振りおろしていた徳善が、手を突っこんで大...
「これ見ろ、すごいだろう」
かれは満足そうに巣を開きはじめた。成哲と俊浩がのぞきこむ...
徳善がとんきょうな声をたてた。
「わー、本物のハチミツだ。こちこちに固まってるぞ。これほ...
徳善が有頂天になって巣をさしだした。成哲は小枝ですくいと...
「まったくだ。砂糖より甘いや。早く出そうよ」&br;
「それよりも、これでクマをつかまえようじゃないか」
徳善が目をきらきらさせて、成哲に言った。
「クマ? どうやってつかまえるんだ」&br;
「以前おれが住んでいた村の人たちは、あんなうつろの中でク...
徳善は木を見あげた。
「あの上に穴があるだろう。あそこからクマが入れるように、...
徳善は調子づいてしゃべった。
「そんなたわいのない話はやめて、早くミツを出そう。あすこ...
やがて3人はハチミツの包みをさげ、丸木を引きずって仮小屋に...
子どもたちは、きょう中に壁を積み終えて梁をあげようと、て...
徳善と俊浩が食器や水筒に水をくんで来ると、成哲が大きな声...
「おい、みんなここへ来て一休みしないか」&br;
「休んでたら、きょう中に梁があがらないよ」
昌植がこう答えると、俊浩がうきうきして騒ぎたてた。
「ただの休みじゃないんだぞ。ハチミツをごちそうしてやるっ...
「なに、ハチミツだって? 水をくんで来たのを見ると、ほん...
こう言って1人の子が駆けて来ると、みなワーッと集まって来た。
子どもたちはハチミツを見て歓声をあげた。
「こんなにハチに刺されながら、取って来たってこと、よくお...
俊浩は腕をまくって突きだした。
「また刺されたのか。お前の体はきっとミツみたいに甘いんだ...
舌を出して近寄る京三。逃げだす俊浩。あたりの空気が爆笑で...
明玉とヤムジョンがハチミツを水にといて、みなについでやっ...
「やっぱりうまいなあ」&br;
「舌がとろけそうだ」&br;
「俊浩、もういっぺんハチに刺されるんだな。そしたらまたハ...
かれらはほがらかにはしゃいだ。
「家さえうまく建てるなら、毎日でも刺されてやるよ。今度は...
俊浩が右腕をまくりあげたので、またドッと笑い声があがった。
翌日からはたる木をかけはじめた。足りない木を切りに行く者...
夕方から風が吹きだし、あくる日もやまなかった。屋根に土を...
下からこねた土があがってくると、手早くこまいの上に敷き、...
風がうずを巻きはじめ、黒い雲が垂れこめた。
屋根の上では用心深く動作し、下では軒下によりつかないよう...
いつもにぎやかに働いていた子たちが、その日は笑いもしゃべ...
雨風は夜もつづいた。
成哲をはじめ年かさの子たちは眠れないで、小屋を出たり入っ...
はね起きて外へ出ようとするところへ、万洙が駆けこんで来た。
「心配するな。雨はやんだし、家もなんともないよ」
成哲は自分の目で確かめなくては安心できず、家を一まわりし...
この日、屋根は全部ふき終わった。1日中風が吹き荒れたが、家...
日が暮れて星がまたたきはじめても、誰1人仕事場を離れようと...
(芸術、文芸作品―その他)
RIGHT:'''2020年の記事'''
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//(文芸作品―その他 2020.10.04)
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