三人の猟師

名作童話の絵本「三人の猟師」

昔、ソルゲコルという村にノッポ、デブ、チビの三人の猟師が住んでいました。

ある日、三人の猟師は官庁から張り出された広告を見ました。

「虎を捕まえてくる人には高い官職と財宝を与える」

三人の猟師はサスムコルというところに住んでいる老人を訪ねて行って、虎がいるところを教えてくれとせがみました。

「虎を捕まえようとするのを見るとみな、腕に自身ありそうだな、さあ、あっちの松の実を撃ち落して見ないか」

一瞬、三発の銃声が鳴り響いたかと思うと、松の実は刀で切り取ったかのようにぱらぱらと地面に落ちました。

「ははは、なかなかの腕前じゃないか、本当に名うての猟師たちだ」

「これぐらいは腕前と言えるほどのものじゃありまえん。本当の技を見せましょうか、こらっ！」

デブは井戸の傍にあったでっかい岩をハンマーのような拳で勢いよく殴りつけて真っ二つに割りました。

「さすが、凄い力だ」

今度はノッポの出番です。

「俺の力に比べればそんなのはなんでもありません」

ノッポは家の後ろに高々とそびえている一抱えもあるオノオレカンバの木*1を両腕で抱えたかと思うと、一捻りで抜き取ってしまいました。

老人か感心しているとこへ、チビが掛け声と共にふくべの蔓に覆われた屋根に飛び上がりました。

「お爺さん、登ったついでに、ふくべでも取ってあげましょうか」
「そりゃ、ありがたいな」

「君たちが力さえ合わせれば、いくらでも虎を捕まえると思うんだがね」

サスムコルの老人は三人の猟師を頼もしげに見つめ、虎のいるポムコルに通じる道を詳しく教えました。

三人の猟師は早く虎を捕まえようと我先にとポムコルに向けて出発しました。

森を抜け、峠を越えるとやがて、大きな洞窟が現れました。

（よし、虎はあの洞窟にいるに違いない）

洞窟を注視する三人の猟師の心に虎を独り占めしたいとの欲が芽生え始めました。

（ちぇっ、洞窟にいる虎ぐらい俺一人でいくらでも捕まえるんじゃないかな）

初めから、力を合わせる気など微塵もなかった三人の猟師にはそれぞれ魂胆がありました。

ところが、どういうわけか、いくら待っていても、虎は出てこようとしません。

「ほら、俺たち空き穴を監視しているのではないか」
「そうだな、その間、ノロジカや鹿でも狩ったら一儲けできたはずなのに・・・」
「こうやっていて虎を逃がしてしまうと失敗だな」

みなが膨れ上がってぶつぶつ愚痴をこぼしました。

この時、山の下の方に角が木の枝に絡まってもがいている大きな鹿が見えました。

（いい塩梅だ）

ふて腐れていたデブとノッポは歓声を上げて、すばやく山を駆け下りました。

一人残されたチビは虎を一人でこっそり捕まえようと企みました。

「銃がなければ・・・へへへ」

チビはデブとノッポが置き忘れた銃をすぐ岩のうしろの藪の中に隠しておきました。

手ぶらで戻ってきたデブは怒り心頭に発して怒鳴りつけました。

「こいつ、銃を隠したんだろう、一人で虎を捕まえる気か？！」

デブはチビを軽々と持ち上げて、藪の方へ放り投げました。

息を切らしながら振り向いたデブは目を丸くして驚きました。

山の中腹の平たい岩の上に牝牛ほどの大きさの虎が腰を伸ばして横たわっているのでした。

（よし、やっと虎にめぐり合えたぞ）

いつの間にかノッポも虎を見つけてこっそりと近寄って来ました。

デブは慌しく銃を探してみましたが、チビの銃はすでにノッポが握っていました。

「銃をよこせ！くそっ」
「怒鳴りつけることないさ、虎の足跡をいの一番に見つけたのはこの俺だぞ」

二人は銃を奪い取ろうと取っ組み合いました。

こうしたところへ顔中、刺され傷だらけのチビまで必死になって加わりました。

「こいつらめ、俺の棍棒が許さんぞ！」

二人の猟師が身をかわしてしまったので、棍棒は空振り。

ぽきっと、銃が折れてしまいました。

お互いに絡み合っていた三人の猟師は地面にへたばってしまいました。

岩を砕き、大木を捻り、屋根と屋根を飛んで渡っていたその力と技は、どこに行ったのか。

三人の猟師が取っ組み合っているのを眺めていた虎は大声を張り上げて、真っ赤な口を開けてのそりのそりと近寄っていました。

結局、虎を捕まえようとしていた三人の猟師は、にっちもさっちも行かなくなり、虎の餌食になってしまいました。

（コンテンツ―本）

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