その日のことが忘れられません（チェ・イルスク）

その日のことが忘れられません

ピョンヤン市*1ソソン区域*2のソチョンと言う町*3の第54居住人民班*4に住むチェ・イルスクさんの手記です。

「もう古希を間近にする私です。人生の黄昏の人の常として、私もよく過ぎし日々のことを振り返っています。一番強烈な思い出は、兵士時代に偉大な金正日国防委員長に見えたことです。

厳冬の寒さが猛威を振るっていたチュチェ64（1975）年1月5日のことです。稀に見る大雪で、車の往来も別にありませんでした。なのに、金正日国防委員長が私たちの海岸砲兵中隊を訪れたのです。全く思いがけないことに中隊の軍人みなが歓呼の声を上げながら国防委員長に抱きつきました。

ところが、国防委員長の顔色は曇っていました。荒れた上に機械油で黒ずんだ私たちの手をさすり、おしゃれをする年なのに手が荒れたと胸を痛めました。まさにわが家のやさしい父に会ったようでした。私たちは国防委員長の手をぎゅっと握って、人民軍軍人みなのたっての願いは、偉大な金日成主席の健康だと言いました。そして、我先に主席の安否を尋ねました。

すると、私たちを頼もしげに見つめて主席は元気ですと答えました。私たちは喜んで万歳を叫びました。しばらく私たちを見ていた国防委員長は、主席が君たちの荒れた手を見ればどんなに胸を痛めるだろうと言いました。この日、国防委員長は予定より随分時間をかけて私たちの軍務生活にこまごまと気を配りました。実に生涯忘れられない大事な思い出の一日でした。

ところが、国防委員長の心の中にもこの日のことが深く刻まれていました。中隊を訪れた翌年の元日も、数十年が過ぎた後も、国防委員長は折に触れてこの日のことを思い出し、女性海岸砲兵の清らかな思いこもるはきはきした声が忘れられないと言ったのです。国防委員長が思い出す女性海岸砲兵、この誇りを胸に私はいつも国の繁栄のために尽力しました。

軍隊を除隊して長い歳月が経ちましたが、片時もその日のことを忘れたことがありません。今も、その日の国防委員長のやさしい姿がありありと瞼に浮かびます。特に12月ともなれば、人民のために生涯を尽くした国防委員長を偲ぶ思いは募るばかりです。私は、よく子たちに言っています。国防委員長の願いどおり、社会主義強国を建てるため母の分まで奮闘すべきだ、それがこの国の公民の当然の本分だ、とです」

（フィーチャー）